
写真左から)堀越涼、松島庄汰、木崎ゆりあ、渡部豪太
古典と現代がクロスオーバーする“現代の心中劇”
堀越 これまで『白蟻』や『沈丁花』を上演させていただいて、また何かやりましょうとお話している中で、ご縁があって秋本松代先生の作品を読む機会があったんです。拝見したのは初めてでしたが、ものすごく面白くて。いくつか読んだのですが、その中でもビジョンが浮かんできたこの作品をやりたいと思いました。
『近松心中物語』は、1979年に初演され、以後そうそうたる面々で再演を繰り返してきた傑作。飛脚問屋の養子と遊女、傘屋の婿養子とその妻の2組の男女の逃れようのない運命を描いた物語で、キャスト陣もそのタイトルの大きさに、並々ならぬ決意をもって挑む。
渡部 歴史ある戯曲のなかで、亀屋忠兵衛という大役を務めることがすごく嬉しいです。新しいアプローチの公演で、いろいろな方々、いろんな才能の方々とこの作品を作っていけることに、すごくワクワクしています。
松島 作品について調べてみるとすごい方の名前がどんどん出てきて…とんでもない作品だと思いました。でも役者としてやるしかない、これは逃げずにやろうと。堀越さんなら絶対に面白くなるという確信もありました。
木崎 恥ずかしながらお話をいただくまで作品を知らなかったんです。本当に歴史がある作品で、着物を着てやるのかな?と想像していたんですが…今回はどうやら違うようで。たくさんの学びがあるんじゃないかと、稽古場が楽しみ。
今回の公演では、古典的表現の台本はそのままに、現代として演出していくという。
松島 台詞は古典的、でも演出は現代的ということで、僕も正直まだ画が頭に浮かんでないんですよ。でも、いろんな想像をふくらませるような世界が広がっているのは、きっと劇場にいらっしゃる皆さんも同じじゃないかな。
渡部 人生を悲観したり、苦しんだりする社会の現実って、今もある。きっと、この作品が作られた50年前とも、近松門左衛門が生きていた300年前とも、多分変わっていません。現代の演出に変えても、きっと耐えられるだけの強さがある話だと思っています。
木崎 私が演じるお亀は作中でも一番、今どきの子に近い考えじゃないかな。でも現代だと…地雷系とかメンヘラとかになっちゃいそう。それって共感できるのかな?むしろ逆に共感できる?といろいろ考えているところです。
堀越 そのメンヘラ、地雷系ってめちゃくちゃ面白い!地雷メイクとかあり?そのあたり、相談しましょう(笑)。でもきっと昔からそういうマインドはあって、当時も別の言い方で言われてたんじゃないかと思います。まずは古典として稽古場で共有して、でも動きの部分は立ち稽古の中でみんなで見つけていきたいです。
音楽監督はあやめ十八番の吉田能、振付はTHE CONVOY SHOWの舘形比呂一が手掛け、この挑戦的な取り組みをさらに加速させる。
堀越 生演奏で効果音も含めて生音で上演しますので、そこも楽しみの一つにしていただきたいところです。また、振付も舘形さんがなるべく稽古を見たいと言ってくださっているので、作られる身体表現が作品を盛り上げる力になるはず。
古典と現代をクロスオーバーさせる独自の美的感覚で上演される“現代の心中劇”に、大いに期待が募る。
渡部 現代を生きている我々が、この古典作品に現代の眼差しとエネルギーを持って臨むということは、今の日本を映し出す鏡にもなりうるはず。演劇を大好きな方も、まだお芝居を観たことがない方も、こんな世界があるんだなという時間を体験しに、劇場まで来ていただきたいです。
※木崎ゆりあの「崎」の字は、(タツサキ)が正式表記
インタビュー&文/宮崎新之
Photo/明田川志保
※構成/月刊ローチケ編集部 9月15日号より転載
※写真は誌面と異なります

掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
堀越涼
■ホリコシ リョウ
あやめ十八番主宰。作家、演出家、俳優と幅広く活躍。
渡部豪太
■ワタベ ゴウタ
ドラマ、映画、舞台に数多く出演。代表作はNHK大河ドラマ「西郷どん」、Eテレ「ふるカフェ系 ハルさんの休日」など。
松島庄汰
■マツシマ ショウタ
日本の舞台、ドラマ、映画への出演のほか、中国やタイのドラマにも出演する。
木崎ゆりあ
■キザキ ユリア
元SKE48及びAKB48のメンバー。2018年にグループ卒業後、女優として舞台、ドラマ、映画に数多く出演。