
2026年3月に世田谷パブリックシアターにて上演する音楽劇『コーカサスの白墨の輪』のメインキャストが発表!
世田谷パブリックシアターでは、ストレートプレイからミュージカルまで幅広く活動し今最も勢いのある劇作家・演出家のひとり、瀬戸山美咲を迎え、ベルトルト・ブレヒトの『コーカサスの白墨の輪』を音楽劇として上演する。
『コーカサスの白墨の輪』はブレヒトがナチスの弾圧を恐れ、アメリカでの亡命生活を送っている中で、未来への希望を込めて書かれた戯曲で、演劇界の金字塔とも呼ばれている。
本作では、30代にして読売演劇賞・演出賞を幾度も受賞し、演劇界の寵児として注目を集める劇作家・演出家の瀬戸山美咲が、遠い昔の物語として描かれた原作を大胆にも未来の世界の物語として再構成。
戦争の混乱の中、置き去りにされた1人の赤ん坊を巡って行われる生みの親と育ての親の親権を争う裁判。
周囲の人物をも巻き込み、希望と絶望が混在する中、下される判決とはー。
瀬戸山は、時代設定を未来に置き換え、私たちの生活に根を下ろし始めている人工知能などの題材も織り込み、ブレヒトの大作を現代的かつ独創的に描き上げた。また、本作のためのオリジナルの楽曲を全編にちりばめた音楽劇として上演する。
内乱のさなか、置き去りにされた太守夫妻の子を自分の子として育てる料理女・グルシェ役を2017年にミュージカル『ロミオ&ジュリエット』のジュリエット役でデビュー以降、数々のミュージカル作品で活躍し、近年ではNHK BS 時代劇「雲霧仁左衛門ファイナル」やNHK大河ドラマ「べらぼう」など映像作品にも活躍の場を広げている木下晴香が演じる。グルシェの婚約者で戦地に赴く兵士・シモン役には、ミュージカル『ヘアスプレー』、『テラヤマ・キャバレー』『無伴奏ソナタ -The Musical』などの話題作に多く出演し、今年10月にはPARCO PRODUCE 2025 音楽劇『MONDAYS』に出演予定の平間壮一。料理女・グルシェのもとに自分の子どもを連れ戻しにやってくる太守夫人・ナテラ役はミュージカル『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』、『ポルノグラフィPORNOGRAPHY/レイジ RAGE』などに出演し、現在上演中のミュージカル『Once』ではヒロインのガール役にも抜擢されるなど活躍が目覚ましいsara。そして迫りくる追っ手や餓えを耐えしのぎ、必死に子どもを守るグルシェを支えるスリカ役にはミュージカル『ダブリンの鐘つきカビ人間』や『レ・ミゼラブル 2024~25』でも好演が光り、今年12月からはミュージカル『十二国記 -月の影 影の海-』への出演も控える加藤梨里香。物語を確かな歌唱力で語り上げる“旅一座の歌手”役には宝塚歌劇団 雪組トップスターとして活躍し、退団後も『王様と私』東宝版『エリザベート』『キス・ミー,ケイト』『アンナ・カレーニナ』『細雪』など数多くの作品に出演。菊田一夫演劇賞、読売演劇大賞優秀女優賞など数々の受賞歴を持つ一路真輝。反乱によって偶然にも裁判官となり、生みの親と育ての親、どちらが真実の母親かをグルシェと太守夫人に対して判決を下すこととなるアズダク役にはドラマ「ROOM~史上最悪の一期一会」や「しょうもない僕らの恋愛論」などの映像作品に留まらず、木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』や舞台『My Boy Jack』など舞台作品でも光る眞島秀和など、本作を彩るにふさわしい豪華キャストたちが勢揃いした。
コメント
瀬戸山美咲(上演台本・演出)

人間とは何か、を考えたいと思います。人間は戦争をします。動物も縄張り争いをしますが、人間のように計画的な戦争は起こしません。人間が戦争をやめられないのは、言葉があるからだと私は思います。言葉があるから人間は生存の不安を実際以上に大きく感じてしまうし、言葉があるから他者を煽動してしまうし、兵器をつくって戦争を実行に移せてしまう。ひとたび戦争が起きれば、終わらせるのは困難であり、火を鎮めたところで燻り続ける。そんなことはわかっているはずなのに、繰り返してしまう。現在の世界は暴力的・排外的な方向に加速しているように見えますが、すべては古代からつながっていると思います。
では、未来でも人間はこのままなのでしょうか。ブレヒトの『コーカサスの白墨の輪』は、第二次世界大戦末期の時代から過去の戦争を振り返る構造になっています。過去の歴史に学ぶことを描くと同時に、人間の変わらなさを描いているようにも見えます。今回は、遥か先の未来から、今より少し先の未来を振り返る形で上演します。果たして、人間は今より「マシ」な存在になれるのか。人間の可能性を探る旅を始めます。
あらすじ
未来の戦争が終わった後、荒れ果てた大地に人々が戻ってくる。土地の所有をめぐって対立する人々に向けて、旅の一座の歌手(一路真輝)が、かつて起きた戦争の物語を歌い始める。
復活祭の日、太守が倒されるクーデターが起きる。料理女・グルシェ(木下晴香)は混乱のさなか、戦地へ赴く兵士・シモン(平間壮一)と結婚の約束をする。シモンと別れたグルシェは、城から逃げ出す太守夫人・ナテラ(sara)が赤ん坊を置き去りにするのを目撃する。グルシェは、同僚の料理女・スリカ(加藤梨里香)の静止を振り切り、赤ん坊を連れて逃亡する。そして、厳しい寒さの中、たどり着いた辺境の地で、グルシェはシモンを待ちながら赤ん坊を育てていく決意をする。一方、混乱の中、呑んだくれのアズダク(眞島秀和)は、でたらめな経緯で裁判官に選ばれる。賄賂を懐に入れイカサマまがいの判決を下すアズダクだったが、結果として富める者も貧しき者も分け隔てなく裁きを与えていく。
やがて内乱が終わり、ナテラが子供を連れ戻しにやってくる。ナテラとグルシェ、どちらが子どもの母親か。アズダクによる裁判が始まる。