三島由紀夫生誕百周年記念二作品同時公演「わが友ヒットラー」×「朗読劇 近代能楽集」上演決定

2025.10.03


三島由紀夫生誕百周年を記念して三島が描く人間の本質を突き詰めた二作品の同時上演決定!

この度、三島由紀夫生誕百周年を記念して、三島由紀夫の名作『わが友ヒットラー』をストレートプレイで、『近代能楽集』を朗読劇にて同時上演いたします。

『わが友ヒットラー』は、2022年に読売演劇大賞・上半期作品賞ベスト5に選出され、三島作品の持つ硬質なテーマを現代的な視点で再解釈した松森望宏の演出は、観客に深い印象を与え、三島文学の持つ力強さと普遍性を鮮烈に打ち出しました。今回は新たな出演者を迎え、更に深い人間洞察を加えて、どのように演出をするか注目が集まります。

出演は、アドルフ・ヒットラー役に前回から続投の谷佳樹、ヒットラーの盟友エルンスト・レーム役に今回初参加の小松準弥、ヒットラーと対立するグレゴール・シュトラッサー役に同じく初参加の小西成弥、 そしてドイツを代表する資本家のグスタフ・クルップ役に前回も出演の森田順平と個性豊かな俳優が集結しました。

そして更に、三島の描く独自の美学と痛烈な人間の情熱を伝えるべく、『わが友ヒットラー』に加え、『近代能楽集』より、戦後の日本で心の再生を求める青年を描いた「弱法師」、老いと愛、孤独と虚無の間で揺れる女性を見事に浮き彫りにした「卒塔婆小町」、そして狂気と愛、欲望と理性の葛藤を抱える女性像を強烈に表現した「班女」の三作品を、声のみで想像力をかきたてる朗読劇という形でお届けします。

『近代能楽集』は、木村来士、高橋ひとみ、小宮有紗、長谷川初範、円地晶子、塚本幸男、梶原岳人、蒼井翔太、神尾晋一郎、市川蒼、中村繪里子、薮島朱音、小泉萌香、月音こな等、豪華俳優、声優陣が回替わりで出演します。

三島由紀夫の魅力は、その作品に込められた鋭い洞察と人間への深い愛情です。彼はただ人物を描くのではなく、その人物が抱える痛み、喜び、葛藤を極限まで表現し、観客に深い感動を与えます。生誕百周年という記念すべき年の最後に、その世界に触れることで、お客様は人間の本質について再考し、深い感銘を受けることができるでしょう。ご期待ください。

 

【作品概要】
『わが友ヒットラー』
『わが友ヒットラー』は、1934年にナチス党内で発生した「長いナイフの夜」を題材に、権力闘争と友情の崩壊を描いています。主人公アドルフ・ヒットラーは、突撃隊(SA)の指導者エルンスト・レームと旧友でありながら、党内での権力維持のために彼を粛清しなければならない立場に追い込まれます。レームの革命的な改革姿勢がヒットラーの政治的立場を脅かし、最終的に彼は裏切られ、命を落とします。三島は、独裁者の孤独、政治における友情の脆さ、そして革命の必然的な崩壊を鋭く描き出しています。

『近代能楽集』より「弱法師(よろぼし)」
「弱法師」は、戦後の荒廃した日本を背景に、盲目の青年・俊徳の物語を描いています。俊徳は、実の親と養父母の愛情を試すかのように、様々な人々と心の対話を繰り広げます。心の中で深い憎しみと渇望を抱きつつも、自らの運命を受け入れようとする姿を描き、戦後の精神的な再生への願望が表現されています。

『近代能楽集』より「卒塔婆小町(そとばこまち)」
「卒塔婆小町』は、夜の公園で出会った老婆と青年詩人の物語です。詩人は、老婆の導きで明治時代の鹿鳴館に遡り、小野小町の伝説的な美しさに魅了されていきます。時空を超えた幻想的な愛の物語を通じて、三島は美と孤独、そして人間の内面に潜む虚無を描き出します。

『近代能楽集』より「班女(はんじょ)」
「班女」は、愛した男性を待ち続け理性を失った花子と、狂った美しい花子に倒錯した愛情を注ぐ実子の狂気と欲望を描いた作品です。狂気が精錬され宝石にまで結晶していく様を通し、三島は、人間の欲望と理性の対立を深く掘り下げ、精神的な崩壊と愛の過剰を炙り出します。

 

コメント

演出:松森望宏
三島由紀夫の戯曲は、人の心の奥に潜む欲望や孤独を、鋭くも美しい言葉で描き出します。『わが友ヒットラー』には権力の陰に潜む友情や裏切りや孤独が、『近代能楽集』の三作には、存在を求める声や老いと美への執着、愛が狂気へ変わる瞬間が刻まれています。四作に通底するのは、人が生きる限り抗えない「欲望」と「幻想」の力です。それは人を傷つけもしますが、なお生きようとする原動力にもなります。価値観が揺らぎ、未来のかたちが定まらない今だからこそ、三島の言葉は「私たちはどう生きるのか」という問いを突きつけます。その問いを皆さまとともに受けとめ、未来を見つめる時間になればと願っています。

 
◆わが友ヒットラー
アドルフ・ヒットラー役:谷佳樹
『わが友ヒットラー』に再び挑みます。前回同様ヒットラー役として舞台に立てることは、俳優としての覚悟を試される大きな機会であり、恐怖でもあります。ヒットラーという実在した人物に全身全霊を懸けてぶつかりヒットラーの危うさ弱さを自分の身体を通して、命を削って伝えられたらと思います。クルップ役の森田順平さんも続投で心強く。小西成弥さん、小松凖弥さんの力で作品が濃密で熱を帯びたものになるだろうなと確信しています。全員で命を削って臨みます。

エルンスト・レーム役:小松準弥
『わが友ヒットラー』、エルンスト・レーム役を演じさせていただきます、小松準弥です。三島由紀夫生誕100周年記念という大きな節目で、エルンスト・レームという大切な役を演じさせていただけること、大変光栄です。大きなプレッシャーや挑戦になると思いますが、今この作品をやらせていただく意味をしっかりと考えながら、演出の松森さんが織りなす、『わが友ヒットラー』を誠心誠意、魂込めて務めさせていただきます。劇場でお待ちしております。

グレゴール・シュトラッサー役:小西成弥
このたび『わが友ヒットラー』にてシュトラッサーを演じさせていただきます。長く上演されてきた作品に携われることを大変光栄に思います。権力や信念、友情や裏切りといった人間の根源に迫る重厚な戯曲に挑むことは、自分自身大きな挑戦となります。俳優としても人間としても深く向き合える機会をいただけたことに感謝し、全力で挑みます。ぜひ楽しみにしていてください!

グスタフ・クルップ役:森田順平
2022年、読売演劇大賞の上半期ベスト5に選んで頂いてから3年。待ちに待った「わが友ヒットラー」の再演が叶うことをとても嬉しく思っています。新しいメンバー2人を迎え、演出の松森君と共にまた新たな気持ちで、この難解な三島戯曲に真っ向から挑戦出来ると思うと、今からワクワクしてきます。出演者4人だけで繰り拡げられる、まさに究極の対話劇。三島由紀夫が編み出した言葉を更に自分のものにして行けるかどうか、頑張って稽古に励みたいと思います。

 
◆近代能楽集
「弱法師」俊徳役:木村来士
たくさんの先輩俳優さんたちが演じてこられた「弱法師」の主演・俊徳役を、今回務めさせていただけることを心から光栄に思います。三島由紀夫先生が描かれた「弱法師」は、喪失と再生をテーマに、見えるものと見えないもののあいだにある真実を静かに問いかける作品です。俊徳は、視力も記憶も失いながら、それでもなお心の奥に光を見出そうとする青年。彼の抱える痛みや祈りを、今の自分にしか出せない感情で、丁寧に表現していけたらと思っています。戦後80年という節目の年、そして三島由紀夫先生の生誕100周年という特別なタイミングで、この作品に携われることを本当に嬉しく思います。そして、18歳という年齢だからこそ感じられるまっすぐな想いや繊細さ、少年から大人へと歩き出すこの瞬間の自分だからこそ見える景色を、俊徳を通して届けたいです。共演の高橋ひとみさんをはじめ、素晴らしいキャスト・スタッフの皆さまと力を合わせて、この物語がもつ静かな熱を大切に、心を込めて全身全霊で挑みます。新国立劇場 小劇場でお会いできることを楽しみにしています!

「弱法師」桜間級子役、「卒塔婆小町」老婆役、「班女」実子役:高橋ひとみ
三島由紀夫作品は今回が初めてで緊張しています。読んでいるととても美しい映像が浮かび上がり、と同時にゾクゾクする怖さもあります。でも無性に覗いてみたくなる衝動に駆られる作品です。10代の頃寺山修司さんがよく三島由紀夫さんのお話しをされていました。寺山さんが さん 付けをする数少ないお方で(三人)それだけでも私は三島由紀夫という方がどれだけ凄いのかを感じていました。