
Travis Japanの川島如恵留が主演を務める舞台『すべての幸運を手にした男』が、11月14日(金)から12月2日(火)まで東京・東京グローブ座にて上演される。物語の主人公は、小さな工場を営む男。ある夜を境に幸運が次々と訪れて人生の障害が消えていくものの、自分だけに幸運が続くことが不安になり…。世界的劇作家アーサー・ミラーの傑作戯曲を演出するのは、英国の演出家リンゼイ・ポズナー。ポズナーにとって日本での演出は『十二人の怒れる男』『みんな我が子』に続き3作目となる。川島はこの物語にどのように挑むのか、話を聞いた。
――今回、舞台『すべての幸運を手にした男』で単独主演を務めますが、率直なお気持ちは?
単独主演っていうのは僕にとって本当に初めてのこと。去年は松倉海斗とのダブル主演をさせていただいたんですが、そのときは2人だったからこそ分け合えたり助け合えたりして乗り越えられた部分が大きかったです。
今年はひとりで全部、自分が作品を背負うんだという実感があります。正直、楽しみでも、プレッシャーでもあります。ただ、そのプレッシャーを稽古期間の中でしっかり跳ね返せるくらいの状態にして、本番を楽しみたいです。
それに単独主演はずっと挑戦したいと思っていたことなので、今回こうして実現できることはすごく嬉しいです。メンバーにもぜひ観てもらいたい。「最高だったよ」「いけるじゃん」って思ってもらえたら嬉しいですね。
――物語や演じる役への印象をお聞かせください
最初に資料をいただいたとき、「これは僕が演じるしかない」とすごく強く思ったんです。迷わず、出演させていただこうと決めました。もう自分のことが書かれているんじゃないかと思うくらい共通点があって、本当に没入してしまうような役でした。
僕自身、運に恵まれていただけだと思うことがすごく多くて。Travis Japanとしてのデビューも遅めでしたし、半年くらい活動休止も経験しましたが、今こうして戻ってこられたこと、活動できていることを含めて、本当に運が良かったと思っています。
この役を演じることで「積み重ねの大切さ」や「運と努力の関係」とかを、もう一度自分の中で整理できたらいいなと感じています。観終わって、作品の世界から現実に戻った時に「如恵留と似てたな、あの人」って思ってもらえたら、嬉しいですね。
――最初に「僕が演じるしかない」と思った理由は、どんな部分からでしたか?
昔は「運がないから実力で補おう」って思って生きてきたんですけど、でも留学前後から運が巡ってきているって感じるようになって、特にここ数年は運にも恵まれたと思っています。デイヴッドは運にしか頼れなくて自信が持てない人物で、そこに強く共感しました。だからこそ彼に気付かせてあげたいことがあるし、自分が演じるしかないって思ったんです。
――運と自分の力の関係は難しいですね
0か100ではないと思います。行動するから運をつかめるし、運が巡ってきたときに行動することで掛け算になり、さらに大きくできる。アメリカ留学中のダンスコンテストで3位に入ったときも、たまたまプロデューサーが見ていたんです。そういう偶然は自分ではコントロールできない。でも日々の積み重ねがなければその場に立てなかった。だから両方が必要だと思っています。
――今回の舞台のテーマにもつながるかと思いますが、幸運や幸福をどう捉えていらっしゃいますか?
待っていても来ないもの。自分から動く必要があるし、ひとりで掴める幸せには限界がありますよね。人が増えるほど大きな、ひとりだけでは掴めない幸せを得られる気がして、なるべくたくさんの人と一緒に居たいと思うようになりました。それにメンバーと一緒にいることこそが最大の幸運だと、休止期間を経て気付いたんです。幸せは一本釣りじゃなくて、網を広げて一緒にすくうようなものなんじゃないかな。だから、人が多いほど大きなものをつかめるんだと思います。
――その考え方は休止期間で強まったものでしょうか?
そうですね。ひとりでいる時間に考えられたこともあったけど、一番欲しかったのはメンバーと一緒にいられることでした。メンバーがいてくれたから休ませてもらえたし、戻ってこられた。改めて大切さに気付けました。
――舞台という場に対してはどんな思いがありますか?
僕は舞台が大好きで、いつかまた絶対にミュージカルやストレートプレイで舞台に立ちたいとずっと思っていました。去年は音楽劇をさせてもらいましたけど、やっぱりコンサートとは違う、劇場という空間に立てるのは夢でした。子役をしていたときから舞台に立たせてもらっていたので、アイドルになった今もまた舞台に立てるのは本当に嬉しい。ひとりのプロの演者として作品を届けられることを、すごく幸せに思っています。
――今回はまさに願っていたストレートプレイの舞台です。これまで歌やダンスを含む舞台が多かったかと思いますが、違いや難しさなどは感じていらっしゃいますか?
歌やダンスがないから難しい、とは思いません。去年の舞台では歌やダンスもお芝居の一環でしたが、今回は芝居だけで表現するだけ。そこは構えずに楽しんでいきたいと思います。
――今回の経験をTravis Japanにどう還元できると思いますか?
いつか7人で主演舞台を持ちたいと思っています。そのときに、この舞台で得た経験は必ず生きてくるはず。映画やドラマでのお芝居とはまた違った武器としてグループに持ち帰れるし、舞台を経験して熱くなった自分がグループに帰ってくるのはすごく大きいことだと思います。メンバーもそれぞれバラエティや音楽番組などで輝いているので、僕は舞台俳優としての経験を、しっかり持ち帰りたいです。
――本格的な稽古に向けてどんな準備をしていますか?
まず、英語の原作を全部読みました。翻訳がなく原語しかなかったので、自分で訳しながら理解しました。ストーリーを頭に入れることが、まず大きな準備でしたね。演出家のリンゼイ・ポズナーさんは英語で指示されるので、僕も英語脳にチューニングしていこうと思っています。Travis Japanのワールドツアーをしてきて、ちょうど英語脳になっているので、その流れでよりダイレクトに意図を共有できるようにしたいです。
――リンゼイさんとは、事前にワークショップなどをされているそうですが、実際にやり取りしてみていかがでしたか?
独特な時間の流れを持っている方だなと思いました。普段はすごくゆったりしているのに、お芝居のやり取りになると英語ですごいスピード感で「もっとこうだよ」って指摘してくださる。その切り替えが印象的でした。まだ全部はつかみきれてないですけど、すごく魅力的な方です。セリフを日本語で話していても間合いを感じ取って的確にフィードバックしてくださるので、本当に頭の回転が速い方なんだと思いますし、とても頼りにしています。
――舞台中の11月に誕生日を迎えられますね
去年の誕生日は本の出版イベントだったんですけど、今年は舞台の真っ最中。お客様からの拍手の中で誕生日を迎えられるなんてすごく特別で、幸せです。カーテンコールのときに「そういえば今日誕生日だった」と、ふと思える時間が来るのが楽しみですし、キャストの皆さんとも仲良くなって、「おめでとう」とか言っていただけたら、本当に嬉しいです。
――31歳をどんな年にしたいですか?
まずはこの舞台を成功させたいです。それから12月にTravis Japanの3rdアルバムが出ます。そのアルバムや、その先の活動を大成功させて、もっとたくさんの方に幸せになっていただきたい。そして新しいファンの方も迎えられるような一年にしたいです。あとは、年齢にとらわれずに、ライブや舞台で若々しい心を持ちながら楽しめる一年にしたいですね。
――舞台のどんなところが好きですか?
ダイレクトに観客とつながれるところです。コンサートも声援でつながれるけど、舞台は役を通じてお客様と気持ちが重なる。その瞬間が嬉しいです。舞台って流し見できないじゃないですか。観客は時間を割いて劇場に足を運んでくださるし、僕たちも何か月もかけて作品を作る。その真剣勝負の場が好きです。
尊敬する俳優さんもたくさんいます。劇団四季の俳優さんや大貫勇輔さん、中川晃教さん…そのほか、歌もダンスも芝居も全部できる方々は本当に憧れです。生で観たときに「こんなにすごいんだ!」って驚かされた経験が、原動力にもなっています。
――“舞台に映える存在”とはどんな人だと思いますか?
立っているだけで存在感を放つ人ですね。照明や衣裳がなくても引き込まれる人。アイドルとしてはキラキラした演出が魅力を引き立てるけど、舞台はその真逆。素の存在感で勝負する場です。そこに挑戦していきたいです。
――最後に、観劇を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします!
最高の作品をお届けします。僕ひとりではなく、素晴らしい共演者の皆さんと作り上げる舞台です。グローブ座で、人生が変わった、と思える瞬間をお届けしたい。ぜひ劇場にいらしてください!
取材&文/宮崎新之