AOI Pro.のコント公演『混頓vol.7』で、俳優の北村諒が初めて本格的なコントの世界に挑むことになった。『混頓』シリーズは、意外なキャストの組み合わせで新作コントに挑戦する企画。今回は北村のほか、秋元真夏、かみちぃ(ジェラードン)、北乃きいの4人のキャストで上演される。公演はオムニバス形式で、戦隊ヒーローの厳しい現実を描く「戦隊ヒーローの経理部」(脚本・演出:政池洋佑)と、何かと話題なる炎上を扱った「ようこそ、セカンドマートへ」(脚本・演出:崎山祐/ファイヤーサンダー)の2本を披露する。初の本格コントに挑む北村が、作品への思いを語った。
――出演にあたって、第一印象など率直なお気持ちをお聞かせください。
ここまでしっかりとしたコントの作品には、関わったことがほとんどないんです。まずはやってみたい、挑戦してみたいという気持ちが大きかったですね。芸人さんとのお仕事も配信番組など以外ではあまり機会がなかったので、コントの現場でご一緒できるのは貴重な経験になるはず。かなり前のめり気味で、やりたいと思いました。
――コントについてどのようなイメージをお持ちですか。
演劇に近い部分があると感じています。コントも演劇と同じように脚本がしっかり作り込まれていますし、コントをされる芸人さんはお芝居が上手い印象があります。一方で、コントは間や言い方がより大切になってくる気がしますし、狙いすぎても違う感じになってしまう。そういう難しさがありますね。コントではないですが、舞台『おそ松さんon STAGE~SIX MEN’S SHOW TIME~』でコメディ寄りのお芝居は経験させていただきました。それは、どちらかというと団体芸的に楽しませる作品だったんですが、今回は人数が絞られる分、個々の間の取り方がより大事になるんじゃないかなと考えています。
――2本のオムニバスですが、それぞれの物語印象は?
「戦隊ヒーローの経理部」はドラマに近い構成ですね。政池洋佑さんが構成作家としても活躍されているので、その技が伝わってくるような台本だと思いました。「ようこそ、セカンドマートへ」はまさにコントのテンポで書かれている印象です。読んでも稽古しても“これはコントだな”と感じる脚本で、そこは崎山祐さん得意な部分が色濃く出ている気がしています。
――政池洋佑さんと崎山祐さんの演出について、どのようなところに個性や違いを感じていらっしゃいますか。
政池さんは物語全体を踏まえて、役の立ち位置を教えてくださる感じですね。「レ ッドはもう少しこう」「ピンクはこう」と、全体を俯瞰した中で細かくディレクションしてくださいます。一方、崎山さんは“間”や“ひと言の言い方”といった細部に非常にこだわられていて、コントとしての最適な言い回しやテンポを芸人さん目線で具体的に示してくださいます。こちらは細部から全体を積み上げている感じですね。同じコントという枠組みでも、こんなに作り方が違うのかと、とても面白いです。
――現時点での、演じられる役どころの手ざわりや印象は?
「戦隊ヒーローの経理部」では、戦隊のレッドを演じますが いわゆる“王道のレッド像”ではないですね。レッドっぽくないところがたくさんあると思うので、そのギャップで笑っていただければと思っています。自分自身はどちらかと言うと、センターにいるレッドよりグリーンのようなサポートの方が向いているような気がするんですよ。今回レッドを演じるにあたり、ちょっと “あれ?”と思うようなずれやギャップを狙っていきたいですね。「ようこそ、セカンドマートへ」のほうは、やっていてすごく新鮮で楽しいです。情けない部分が滲み出ているキャラクターで、普段は見せないようにしている弱さが自然と出ている役だと思います。でも、この役が抱えている葛藤を演じるときは、実際はしょうもない内容なんですけど、侍が「斬るのか斬らないのか」「生きるのか死ぬのか」くらいの気持ちで挑んでます。だからこそ面白くなると思うので、そこに関しては真剣ですね。
――共演の秋元真夏さん、かみちぃさん、北乃きいさんの印象は?
座組の空気はとても穏やかで仲がいいですね。「こうしてみたらどうだろう?」みたいな意見も、自然と言い合える雰囲気でとてもやりやすいです。秋元さんは真面目な方ですが、たまに“斜め上”の方向に飛んでいく天然なところがあって(笑)。その天然な間違いが面白くて、そのままコントに採用されることもありました。北乃さんは現場経験が豊富で、一緒にいてかなり安心感があります。現場でブレずにいてくださるので、その姿で自分も落ち着いていられる存在です。かみちぃさんはとても自然体。ジェラードンさんのコントでもお芝居寄りの空気感がありますが、その優しいテンポの“ボケ・ツッコミ”が居心地良く、だからこそアイデアを出しやすい空気を作ってくださっています。
――日替わりゲストには、近藤春菜さん、山崎静代(しずちゃん)さんがいらっしゃいますね。
しずちゃんさんとは稽古で一度ご一緒しましたが、とても可愛らしい方ですね。独特のテンポの関西弁で怪人を演じられるのですが、あの空気感はお芝居だけで作れないものだと感じました。近藤春菜さんはまだご一緒していませんが、台本を読んだだけで「春菜さんなら、こうやるだろう」という姿が自然と浮かぶほど個性がはっきりしていますよね。実際に拝見するのがとても楽しみです。お二人はテンポや空気感がまったく違うので、ゲストによって作品全体の流れる速度も変わり、毎回“巻き込まれ方”が変わるんじゃないかな。そこも楽しみです。
――個人的な見どころやポイントを挙げるなら、どんなところでしょうか?
まず「戦隊ヒーローの経理部」では、レッドのビジュアルそのものが見どころだと思います。戦隊の恰好でいることなんてはなかなかないので、それだけでかなりシュールなんじゃないかな(笑)。「ようこそ、セカンドマートへ」も含め、どちらの役も“情けない部分”がにじむキャラクターで、今までの自分とは違う一面を見せられるのではないかと感じています。これまであまり“笑いに特化した舞台”には出演してこなかったので、純粋にコントを楽しんでいただけると思います。
――今回の役どころは、ご自身の中のどんな部分を反映させているのでしょうか?
コントというジャンルだからこそ、100%役ではなく“20%くらい北村諒がいる”ような状態でいられる感覚があります。 “そんな顔するんだ”と新鮮に感じていただけたら嬉しいです。自分としては、固定イメージに縛られず、何でもやっていきたいタイプ。舞台の上なら全裸になってもいいくらい。…それは事務所がNG出しそうですが(笑)、役者として、何も隠すことはありません。すべてをさらけ出す覚悟で、いつも役には臨んでいます。
――今回コントに挑戦したことで、今後のお仕事に変化はありそうですか?
最初は「これを機に、戦隊ヒーローになれるかも」と思いましたが、たぶん無理ですね(笑)。以前には仮面ライダーで変身させていただいたこともあるので、戦隊ヒーローへの憧れはずっとあります。どこかで、その夢を叶えたい気持ちはありますね。そういう意味では、コンビニのバイトもしたことが無かったんですよ。今回はコンビニ店員の役をやれるので、ひとつ夢が叶ってますね(笑)。
――まさに役者冥利につきますね(笑)。最後に、公演を楽しみにしている人にメッセージをお願いします。
それぞれの出演者のファンの方はもちろん、『混頓』シリーズのファンの皆さんにも、純粋に楽しんでいただける2本になっています。笑えて、ほっこりして、温かい気持ちになれる作品ですし、これからさらに詰めて仕上げていきます。ぜひ劇場で、作品の空気ごと味わっていただけたら嬉しいです。皆さまのお越しを心よりお待ちしています!


取材・文:宮崎新之
