舞台『黒百合』2026年2月世田谷パブリックシアターにて上演!メインビジュアル&コメント動画解禁!

2025.12.03

脚本 藤本有紀・演出 杉原邦生・音楽 宮川彬良
初の舞台化となる、泉鏡花の初期意欲作・小説「黒百合」
“黒百合”の渦の中にキャストが佇む、夢幻的なビジュアルが初公開!

明治32年(1899年)、泉鏡花が読売新聞に連載した長編小説「黒百合」。
富山・神通川流域で繰り返される洪水被害と、立山に伝わる黒百合伝説を背景に、当時文壇で新たに脚光を浴びはじめていた冒険小説の潮流にも呼応する、鏡花初期の意欲作だ。
これまで映像化も舞台化もされてこなかった本作が、ついに2026年、世田谷パブリックシアターにて初めて舞台の姿を獲得する。
鏡花の古典的情緒に満ちた原作に、これまで数々の物語を繊細に紡いできた脚本家・藤本有紀が生命力あふれる言葉を吹き込み、新たな物語として芽吹かせた。
その作品を、世田谷パブリックシアター芸術監督・白井晃の期待を受け、鏡花作品の新たな地平を拓くべく演出家・杉原邦生が、確かな構成力と独創的な演出で立ち上げる。
さらに、数々の舞台音楽を手がけてきた宮川彬良のオリジナル音楽が加わることで、叙情豊かな世界は、明治のピカレスクロマンがもつ余韻をそのままに、令和の時代にふさわしい新たな舞台芸術として花開く。

今回初めて公開となるメインビジュアルでは、キャストたちが“幻の花・黒百合”の巨大な渦に呑み込まれるかのように佇み、夢と現実の狭間で翻弄される姿が夢幻的に描き出されている。

併せて、演出家・杉原邦生、出演の木村達成、土居志央梨によるコメント動画も公開された。

ものがたり

明治後期、越中・立山の地。
県知事の令嬢・勇美子(土居志央梨)は、屋敷に出入りする花売り娘・雪(岡本夏美)に、仙人か神しか見たことがないと語られる幻の花「黒百合」を採ってくるよう命じる。黒百合は、足を踏み入れるだけで暴風雨が起こると恐れられる「魔所」の滝のそばに咲くといわれていた。
雪は盲目の恋人・拓(白石隼也)の目を治す金のため、その危険な依頼を受ける。
一方、幼くして母を亡くし浅草で孤児として育った滝太郎(木村達成)は、突然現れた男に華族の血を引くことを告げられ、富山の子爵家・千破矢家に連れられる。若様として育てられ侠気ある青年となるが、生まれつきの手癖の悪さは消えず、盗賊稼業から足を洗えない裏の顔も抱えていた。
ある日、県知事邸で雪を目にした滝太郎は一瞬で心を奪われる。雪に迫る男たちを懲らしめるなか、自らも黒百合採りに挑む決意を固める。その背景には、幼少期から滝太郎を知る盗人・お兼(村岡希美)から「お前の盗みはゴミを漁る犬のよう」と言われ、真の盗賊なら人知を超えたものを盗みたいという思いが募るようになっていたことがあった。
雪は拓に献身的に尽くすが、拓は甘えることを恐れ、敢えて彼女を突き放してしまう。彼もまた、胸の内に秘めた事情を抱えている。隣家の荒物屋の婆さん(白石加代子)は、そんな二人を優しく見守り続けていた。
滝太郎が“大盗賊”へと成長してゆく軌跡を縦軸に、滝太郎・雪・拓の奇妙な三角関係、さらに勇美子が手元で愛でるモウセンゴケ(食虫植物)の内に広がる、夢とも現実ともつかない異界が重なり合う。冒険譚、恋愛譚、怪異譚――数多の物語が交錯しながら、鏡花文学ならではの幻想的な人間模様が浮かび上がる。