26年の歳月を経て生まれ変わる岩松了の名作
岩松了がかつて“竹中直人の会”で発表した『市ヶ尾の坂』を、26年ぶりに上演。横浜・市ヶ尾の坂の上に建つ一軒家を舞台に、そこに住む三兄弟と若き美貌の人妻との奇妙な日々を描き出す。
岩松「当時あの近くに住んでいたんですが、ちょうど都市計画の中で古いものが壊されて、新しいものと混在していく感じが面白いなと思っていたんです。さらにあの辺の様子も今はまるっきり変わっていますからね。改めてやるのもいいかなと思ったんです」
三兄弟の長男・司役には大森南朋、謎の若妻役には麻生久美子をキャスティング。共に岩松の舞台には複数回出演しており、岩松からの信頼も厚い2人だ。
大森「不安もありますがやはり楽しみです。岩松さんの舞台はすごく居心地がよくて。また何度も何度も同じところを稽古させてもらえるので、そこから見えてくるものがたくさんあるんです」
麻生「私はすごく嬉しかったです。岩松さんのセリフを言葉にするのって、なんか幸せで。いつも少し変わった女性をやらせていただけるのも(笑)、自分の中でいろいろな発見があって楽しいです」
初演時について「稽古場の雰囲気が一番ハードだったかも」と振り返る岩松。10日もの間、台本の最初の5ページをひたすら繰り返すこともあったそうで……。
大森「今回その10日間を思い出してほしくはないです(笑)」
麻生「ちょっと怖くなってきました。でも今回は南朋さんがいてくれるのですごく心強いです!」
岩松「前回はある役者がひと言言うたびに『違う!』って…(笑)」
麻生「やっぱり怖い!」
そんなやり取りも笑い話になるほど、今は岩松の演出方法も変わり、何よりキャストの違いが作品の手触りを大きく変えるだろう。
岩松「大森くんには以前にも再演ものに出てもらったことがあるんですが、僕の中では違う作品ができた印象があって。今回もそういった意味でまた新しい世界が生まれそうで、すごく楽しみです」
インタビュー・文/野上瑠美子
Photo/会田忠行
※構成/月刊ローチケ編集部 2月15日号より転載
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