写真左より)清水麻璃亜、川崎愛香里、栗林藍希、山下真人、井上想良、朝田淳弥
ヒラタオフィス+TAACの第4段として、コロナ禍を描く青春群像劇2作品が上演される。フルキャストオーディションが行われ、再々演の『世界が消えないように』には山下真人、井上想良、久保田直樹、名積漣、朝田淳弥。『ワールド、終わらせない』には立浪歩佳、川嶋由莉、栗林藍希、荒川ひなた、伊藤友希、江藤萌生、川崎愛香里、清水麻璃亜の出演が決まっている。公演を前に、作・演出のタカイアキフミと、各作品のキャストにインタビューを行った。

■『ワールド、終わらせない』 /栗林藍希、川崎愛香里、清水麻璃亜
――オーディション参加を決めた理由や意気込みを教えてください
清水 映像のお仕事が続いていて、楽しいものの、時間をかけて稽古し、お客様の前でお芝居をしたいと思っていました。タカイさんの熱い思いに共感しましたし、みんなで作り上げたいという意欲があったので参加を決めました。
栗林 私はお芝居を初めてすぐ舞台を経験し、それ以降は映像のお仕事をしていて。また舞台をやりたいと思っていました。タカイさんの思いに共感し、いいものを一緒に作れると感じて参加しました。
川崎 私は、TAACさんのオーディションに参加するのは2回目。前回はグループオーディションに(『not only you but also me』に出演した)伊藤歌歩さんがいらして、芝居で圧倒されました。今回は絶対に受かりたいと意気込んでいたので、出演が決まって嬉しかったです。
――キャスティングについて、どんな部分にこだわりましたか?
タカイ ありがたいことにたくさんのご応募をいただき、皆さん熱量や「一緒に作りたい」という思いがありました。僕の熱量と釣り合っていて、求めているお芝居をしてくれる、舞台上で目を惹く存在感がある方々に集まってもらいました。
――改めてコロナ禍をテーマに書いてみていかがでしたか?
タカイ 震災やコロナ禍といった有事の際、毎回僕らは無力になり、芸術の価値が問われます。有事の中で消えてしまうものもあるけど、それが確かにあったと信じること、願いや祈りが作品に昇華されるのがエンターテインメントの存在意義という気がしています。今作は、世界が消えないように、より客観的で普遍的に。有事の際にこの作品に立ち戻り、僕らがどう生きていくのか見つめ直せる芝居になったらいいなと考えています。
――制作メモや台本から、どんな印象を受けましたか?
清水 彼女たちが作ったものによって仲間を失ってしまい、そのことに改めてみんなで向き合うシーンがあります。役としても議論の行く先がまだわかっていないし、自分自身に置き換えても何を選択するかわからない。見に来てくださるお客様にも一緒に考えていただけるんじゃないかと楽しみです。
川崎 大学生ってまだ子供で、傷付くことをすごく恐れていると感じます。それぞれ必死に傷を庇おうとするけど、自分を責めたり、本心ではないことを言って傷付け合ったりしてしまう。共感もできるし、みんなが愛おしくなります。議論の場がセラピーのようになっていくと思うので、色々なものを抱えているお客様にも「それでもやっぱり生きていこう」と思っていただけたら嬉しいです。
栗林 お稽古前にみんなで議論をした時は、これが本当に作品になるんだろうかと思いました。でも、脚本ができたらものすごく面白くて、「こんな物語が自分たちの議論から生まれたんだ」と嬉しく思いました。
――お稽古で楽しいこと、タカイさんは二作同時進行の楽しさや大変さを教えてください
タカイ 心構えはしていたけど、思っていた以上に大変です(笑)。でも、二作の共通点や違いが発見できて、楽しみも二倍だと感じます。今が一番しんどい時だと思うので、乗り越えた先の景色を楽しみにしています。
栗林 楽しいというか驚いたことですが、ぶつかり合うシーンの後にみんなが絶対ハグしたり、手を繋いで「あんなこと言ってごめんね」と謝ったりするんです。人を思いやれる人たちの集まりだと思いました。
清水 お稽古は張り詰めたシーンの連続だけど、休憩中はみんなでお菓子を食べたり風を浴びたりと、オンオフを切り替えられているので頼もしいです。今でもワクワクするから、稽古を重ねてどうなるのか期待でいっぱいです。
川崎 精神的にしんどいシーンも多いですが、共に乗り越えている感覚がすごく強い。心の内を全て曝け出しても受け止めてもらえるという圧倒的な信頼がある、愛の大きな座組です。私は割とドライな方ですが、すでに千秋楽が寂しいです(笑)。
――楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします
清水 観に来てくださったお客さんがどう感じて、何を受け取って劇場を出ていくのか楽しみです。登場人物一人ひとりに正義があるように、お客様の感想も様々。ちょっと気合を入れて劇場に来ていただきたいです。
栗林 生きている7人の心がどう変わり、物語がどうなるのか楽しんでほしいです。誰に共感するか、自分が同じ立場だったらどうするかなど、皆さんの感想を知りたいです。
川崎 同世代の女の子たちで議論するお芝居に挑戦するのは初めて。それを劇場でできる意義を感じています。お客様との距離も近いので、私たちの心の機微を肌で感じてもらえるでしょうし、最後には温かい何かが伝わると思います。

■『世界が消えないように』 /山下真人、井上想良、朝田淳弥
――タカイさんは再々演に対する思い、キャストの皆さんは意気込みを教えてください
タカイ 僕の戯曲で再演を行なった唯一の作品で、ある程度やり切ったと思っていました。でも、オーディションをして、若手と何が作れるか挑戦しようという話になって。一度完成したものを新しい役者たちと改めて作ることで、より普遍性を持った作品にできるのではないかと思っています。
山下 一度再演した素晴らしいものがあるので、いいところは受け継いで、かつ違うものを見せられたらいいのかなと試行錯誤しています。
井上 キャストを総入れ替えしたからこその新たな化学反応を大事にしたいと思っています。今は自分たちがどこを目指して何を見せていくか考える段階にきているので、このまま頑張りたいです。
朝田 再々演ということで、過去に上演されてきた世界観にリスペクトも持ちつつ、今回ならではの空気感をお届けしたいです。
――台本を読んだ印象、演じる役に共感した部分などはいかがでしょう
山下 大学生特有のノリというか、思いもよらない瞬発力がある。でも、そういう気持ちのぶつけ方だから、この5人としていられるんだと思うし、かっこよく感じます。僕自身と違うからこその羨ましさを感じました。
井上 台本をしっかり読み込んで、セリフの意味や思いを深掘りしなきゃいけないと実感しました。大学生は子供と大人の中間なので、繊細な感情の起伏などを大事にしたい。僕が演じる航太郎は顔から首にかけてあざがありますが、目に見えなくてもみんな何かしら抱えていると思うので、そこに嘘がないよう演じたいです。
朝田 忘れていた感情や時間を思い出させてくれる作品だと感じました。普段生きていて、物事はどんどん過去になっていく。でもその時の感情や選択は自分の中に残り続けるし、それが今の自分に繋がっているんだなと。僕が演じる和田世界は自分と重なるところが多く、正直怖いという第一印象でした。でも演じる上で自分そのものにはしたくなくて、似ている部分も違う部分もちゃんと向き合いながら、作品の中で生きて行けたらいいなと思っています。
――お稽古の手応え、今後の楽しみについても教えてください
朝田 本読みの時間を多くとっていただきましたし、レクリエーションやディスカッションもたくさんしています。コミュニケーションをとる時間が多くて、自然に生まれる空気感があるのがすごく楽しいです。
山下 仲良くなるのが本当に早かったので、それをうまいこと反映させて、作品としていいものに昇華できたらと思っています。
井上 この先、掛け合いなどを試していけそうなので、化学反応がすごく楽しみです。
タカイ いかに今までを超えるかが課題だと思っています。演出や本はある程度固まっているので、その上で役者や空間をどう見せるか。最後まで諦めず、役者と同じ方向を向いて一歩ずつ登って行きたいです。
――楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします
山下 そこまで関りはないものの、女性陣からも刺激を受けています。相乗効果で良いものを作っていくので、気になった方はぜひ二作とも見てほしいです。
井上 懐かしさ、向き合いたくないものに向き合う勇気や希望を感じていただける作品だと思います。過去を振り返るのは未来に向き合うためだと思うので、そのきっかけになる作品にしたいです。あと、個人的には初めての舞台。その時にしか見られないものを、ぜひ見に来てほしいです。
朝田 観ていただいた方にも、改めて自分を見つめ直す時間になるんじゃないかと思っています。僕だけのことでいうと、世界という役は唯一背景の描かれていないキャラクターなので、観てくださったお客様にどう感じていただけるかも楽しみです。
タカイ 僕はずっと、喪失とどう向き合っていくかを描き続けています。生きていると何かが消えていったり失ったりして、それでも生きていかなきゃ行けない現実がある。少しでも前向きになれたら、その後の人生が豊かになると思う。そんな祈りを込めてこの二作品を書いていますし、僕の芝居の中では見やすいと思います。あまり気構えず、劇場にお越しください。
取材・文・撮影/吉田沙奈
