FUKAIPRODUCE羽衣の新作は、主宰・深井順子の40歳を祝し、作・演出・音楽の糸井幸之介が極上の二人芝居を書き下ろす。
糸井「人間、深い愛を感じれば感じるほど、自分の心が華奢な弱いもののように思え、闇の中で浮いてるような不安な気分になることがあります。この作品のキーワードは『母』。ただの愛でも、ただの闇でもない、愛と一緒に訪れる闇、闇と一緒に訪れる愛を描きたいと思っています」
タイトルは『春母夏母秋母冬母』。深井と共に、クロムモリブデンの森下亮が出演する。
深井「森下さんは最初お会いしたときと今ではイメージが違うんです。もっとスパーンとされてる方だと思っていたら、そこにいろんな色があって。私の森下さんのイメージはオレンジの入ったグレー。笑顔の中に闇がある。そこに惹かれています。笑顔と真顔と体つきが好きです」
FUKAIPRODUCE羽衣は、毎回、糸井の紡ぐ音楽に高い評価が集まっている。
糸井「前回の『瞬間光年』では、いつもの羽衣の作品より歌の数を減らし、『歌と言葉』というより、『音と身体』という感じでつくりました。今回は、そのチャレンジも継続しながら、美しい旋律や言葉も増やし、『歌と音』『言葉と身体』のコントラストでより双方をくっきりさせたいと思っています」
『瞬間光年』で岸田國士戯曲賞最終候補にノミネート。惜しくも受賞は逃したが、糸井の作家性にますます注目が集まることは間違いない。
深井「糸井くんの戯曲は、糸井くんにしか書けない。窓を開けたかと思ったら宇宙に行って、プールで泳いで火星で呟き、ロボットが出てきて徳川家康まで!なんて自由な発想の人なんだろう。心はいつまでも少年なんです、きっと。だから作品がいつも古びなくて新鮮。自分の体を通して糸井くんの言葉を紡げるなんてとても幸せなことです」
糸井「羽衣の魅力は、人生の喜びや悲しみ、そんなものが感じられるところでしょうか。一時でもいいから、みなさんの人生のお供になる、そんな劇団になったらいいなと思っています。ライバルはお酒です(笑)」
インタビュー・文/横川良明
撮影/杉田協士
※構成/月刊ローチケ編集部 3月15日号より転載
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
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【プロフィール】
糸井幸之介
■イトイ ユキノスケ(写真左) ’77年生まれ。東京都出身。FUKAIPRODUCE全作品で作・演出・音楽を手がける。
深井順子
■フカイ ジュンコ(写真右) ’77年生まれ。東京都出身。FUKAIPRODUCE羽衣主宰。設立以降、全公演に出演。