KOKAMI@network vol.22『トランス』|鴻上尚史 インタビュー

初演から33年、まったく色褪せない
伝説の三人芝居が
現代に寄り添いつつ蘇る

1993年の初演後、1996年に再演、2005年には2バージョンで同時上演し、2007年にロンドン公演も実現させてきた、鴻上尚史作・演出の三人芝居『トランス』。この伝説的な傑作戯曲が、国内では21年ぶり、ロンドン公演から数えても19年ぶりに蘇る。鴻上によると、初演から33年が経った今でも月に2~3本、上演の許可願いが全国から届いているそう。

「ありがたいことにトータルで1000~2000の団体、企画で上演していただいているんです。とはいえ、昔の台本ですから今の時勢に適切ではない言葉も使われていたので2年ほど前に、手直しをしながら読み直ししたらとても面白かった(笑)。これは確かに今、上演する意味があるなと我ながら思ったわけです」

鴻上の言う通り、戯曲の背景にあるものは驚くほどに今の時代とも重なってきて、現代が抱える問題とのリンク点も多い。

「現実と幻想が絡み合っている作品なんですが、まさに今はリアルとフェイクが話題ですし、いわゆる新興宗教絡みの話も出てきたりするし。それで、じゃあ6回目の『トランス』をやってみるか!という話になったんです」

そこで今回のキャストとして集められたのがいずれも鴻上作品に出演経験がある風間俊介、岡本玲、伊礼彼方の3名で「この作品は芝居が巧い俳優が3人揃えば、もうOKみたいなものなので。演出としてはその巧い俳優たちをサポートするだけかなと思っています」と鴻上も語るほど信頼の厚い、盤石な顔合わせとなった。
「かざぽん(風間)には絶対の安心感があるし、彼の人となりも充分にわかっているつもりですし。演じてもらう立原雅人というのはフリーライターなので作家に見えるような、つまり知的な部分がある人で、しかも普通の人でありながらも狂気を感じさせてもらいたい。その点でも、かざぽんはピッタリだなと思いました。岡本玲ちゃんはすごく真面目な子でね。彼女は自分で劇場を借り、演出家を頼んで、チラシとかポスター作りもすべてセルフプロデュースして公演を打ったりしているんですよ。それで『どうしてそこまで?』と聞くと『お芝居が巧くなりたいんです』と。それほどストイックで努力家なところは、実にこの紅谷礼子という役に合う気がします。そして伊礼彼方は、あの通りいつも元気で明るいキャラクターで(笑)。本人は『営業ラテンなんです』なんて言ってましたけど、その割にはラテンじゃない面を見たことがない(笑)。とにかく伊礼に演じてもらう後藤参三というのは、初演は松重豊、再演は古田新太が演じていた難役。でもきっと伊礼ならできるはずだと、期待しております」

今回の上演では全国10都市13箇所を巡ることもあって、各劇場に『トランス』経験者が大勢、観に来る可能性も高い。

「それぞれの都市でお客さんがどんな反応になるかも、すごく楽しみなんです。『トランス』経験者はもちろんですけど、初めて観てくれる若い人たちはどんな感想を持つんだろう。初演当時に僕がやっていた劇団、第三舞台の芝居はよく『わけがわからん!』と言われていたんですよ。それで『じゃあ、わけがわかる芝居を書くよ!』と宣言して書いたのが、この『トランス』だったりもする。だから僕にしてはとてもウェルメイドな作品を書いたつもりだったんです。それを今のお客さんたちがどう受け止めるか、そしてその芝居を今回の3人のキャストがいかにうまいこと演じてくれるか。その様子を僕は客席の一番後ろから、じっくり観察してみたいと思っています(笑)」

インタビュー・文/田中里津子
Photo/篠塚ようこ

※構成/月刊ローチケ編集部 3月15日号より転載
※写真は誌面と異なります

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【プロフィール】

鴻上尚史
■コウカミ ショウジ
作家、演出家1981年に劇団「第三舞台」を結成。1994年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は「KOKAMI@network」を中心に脚本、演出を手掛ける。