Litera Theater vol.2ミュージカル『シルヴィア、生きる』開幕!ゲネプロレポート到着!

2026.04.03

Litera Theater vol.2 ミュージカル『シルヴィア、生きる』が、4月2日、中野のザ・ポケットにて開幕した。韓国ミュージカル界の大注目コンビ、クリエイター集団Jakjakのチョ・ユンジとキム・スンミンによるデビュー作の日本初演。1963年に30歳で人生に自ら終止符を打った、アメリカの女性作家シルヴィア・プラス。生前は作家として評価されなかったが、死後ようやくその芸術性が認められ、唯一死後にピューリッツァー賞を受賞した作家となったプラスの人生を描いたミュージカル。初日本番の直前に行われたゲネプロの模様をレポートする。

ゲネプロ前に会見が行われ、主演シルヴィア役の平野綾は「大きなプレッシャーが毎日押し寄せています。毎日の稽古での目まぐるしい程の情報量の多さは、常にシルヴィア・プラスという実在の人物を演じる上での責任と、たくさんの方に与えた影響を感じさせ、彼女の葛藤を感じる度に、まだまだ自分には足りていない、こんなものじゃない!と思う試練の日々でした。キャストはチームワーク抜群の少数精鋭のこのメンバー(富田麻帆、鈴木勝吾、伊藤裕一、原田真絢)で本当に良かったと心から感謝しています。新たな形で幕を開ける日本版『シルヴィア、生きる』が、どうか皆様の心に届きますように。演じれば演じるほど研ぎ澄まされていく作品になると思います」と初日を迎えた心境を語った。

女性として生きる苦悩や社会問題を描く作風から、日本でも特に女性を中心に支持を得ているシルヴィア・プラス。

日本版演出の藤岡正明は、「傷つき、悲しみ、苦しみ、痛みを抱えて、それでも必死でそこにいる。掠れそうな声で助けを求めている、そんな現代のシルヴィアへ、この作品が届いてほしい」と意気込みを明かした。

客席数約180席の劇場で、キャスト5人で作り出す濃密な舞台がいよいよ開演。

冒頭、汽車の汽笛が鳴り響く暗闇の舞台中央に女性の姿が浮かび上がる。続いて、両親に汽車に乗せられる少女シルヴィアが登場する。向かいの席に座る女性に行き先を聞かれ「終着駅まで」と答える。乗った汽車は人生だ。

そこから時が流れ、1956年。ロンドンの大学に留学したシルヴィアは、友人となるヴィクトリア(富田麻帆)や未来の夫となる詩人のテッド(鈴木勝吾)らと出会い、詩人としても人間としても充実した日々をおくる。

 8歳で詩集を発表し、幼い頃から詩人・作家としての才能を発揮していたシルヴィアの姿を、過去を回想する形で挟み込み、観客が自然に理解できる演出もいい。

 それから、売れっ子詩人・テッドと結婚したシルヴィアは、自分の創作活動がままならず、周りにも理解されずに、次第に追い込まれていく。そうしたシルヴィアの心象風景を、マルチとして様々な役で登場する原田真絢と伊藤裕一が歌やダンスのパフォーマンスで可視化した表現も印象的だった。

 鈴木演じるテッドとシルヴィアの甘いシーンも激しい喧嘩も、リアリティがあって引き込まれる。友人ヴィクトリアがシルヴィアにとってどういう存在なのかも、後半になるにつれてわかってきてハッとした。

本編約130分、シルヴィア役の平野はほぼ出ずっぱり。少女から希望に満ちた若々しい女性へ、作家として女性として苦悩し激しい感情をむき出しにする…、目まぐるしく変化するシルヴィアの姿を、観る者の心に突き刺さる圧倒的な歌声とともに演じてみせた。

生ピアノ伴奏で披露されるナンバーの数々も素晴らしい。スウィング、ワルツ。ポップス、アフリカンビートなど様々なスタイルの音楽が波乱万丈だった彼女の人生の奥行を表現している。特に印象的なのは、平野が歌う今作のテーマソングである『詩は私そのもの』。鈴木が開幕コメントで話していたとおり、「注目してほしいのは、この劇場で、平野綾さんの歌声を浴びられること」と言ってもいい。

シルヴィアはその生涯で三度自殺を試みたという。十年ごとに試みられたその行為は、死へ向かうものではなく新たな生に対するトライ、“生き直し”だったという発想のもと、“死”ではなく“生”を探し求め“生”にたどりつく物語として描く意欲作。 是非、劇場で体感していただきたい。

開幕コメント

■平野綾
こうして無事開幕し、ホッとするどころか、より大きなプレッシャーが毎日押し寄せています。
毎日の稽古での目まぐるしい程の情報量の多さは、常にシルヴィア・プラスという実在の人物を演じる上での責任と、たくさんの方に与えた影響を感じさせ、
彼女の葛藤を感じる度にまだまだ自分には足りていない、こんなものじゃない!と思う試練の日々でした。
カンパニーの皆さんには何も座長らしさを示せていないくらい助けていただいてばかりで、
キャストはチームワーク抜群の少数精鋭のこのメンバーで本当に良かったと心から感謝していますし、
ここまで導いてくださった演出の藤岡さんをはじめとするクリエイティブチームの皆様にも感謝しております。
新たな形で幕を開けた日本版『シルヴィア、生きる』が、どうか皆様の心に届きますように。
演じれば演じるほど研ぎ澄まされていく作品になるかと思います。
ご来場を心からお待ちしております。

■富田麻帆
初日を迎えることができました。
出演者5人で作り出す「シルヴィア、生きる」の世界。
繊細で美しく、楽しくもあり切なく1ヶ月間大切にお届けしていけたらと思っております。
手拍子で参加出来る(?)かもしれないシーンもあるとかないとか。
劇場でお待ちしております。

■鈴木勝吾
無事に開幕できて。ホッとしています。稽古で色んな道を通って今の道に辿り着けたようなそんな感覚があります。これからも、本番の中で様々成熟していくことを思うと、とても楽しみです。
主演の平野さんと心強い俳優陣に囲まれて1か月を過ごしたいと思います。
注目してほしいのは、この劇場で、平野綾さんの歌声を浴びれること、是非劇場で体感して頂きたいです。
1か月間劇場でお待ちしておりますので、是非劇場で、シルヴィアの人生を観て頂けたら幸いです。

■伊藤裕一
ミュージカルの世界に飛び込んで5年。
今回、私が向き合う「マルチ」という存在は、決して名もなき背景ではありません。
それはシルヴィアを形作った世界そのものであり、彼女自身であり、彼女の詩に救われた者たちの魂の代弁者でもあると私は考えます。
複数の人生を渡り歩く上で、ただ冷静に「作業」としてこなせば、安全に舞台は進むでしょう。
けれど、それではこの汽車を、本当の終着駅へ送り届けることはできません。
自らの感情の境界線が溶け出すことを恐れず、彼女の熱狂と痛みに身を投じる日々は、ひどく過酷で、同時にとても魅惑的な時間でした。
かつて彼女が「否定」や「死」の暗喩として描いた『第九王国』。しかし、本作が目指すその場所は、決して悲劇の行き止まりではなく、生き直そうとする凄まじいエネルギーに満ちています。
いよいよ初日の幕が上がります。どうか非常停車の紐は引かず、僕たちと共に、旅の果てを見届けに行きましょう。

■原田真絢
一人の人生が、誰かの人生を抱きしめ、明日を生きる希望となる——それは、なんと素晴らしいことでしょうか。
顔合わせの日に作者・チョ・ユンジさんの想いを伺い、改めてこの作品に触れたとき、私達の日本公演でも、この作品が誰かを抱きしめ、明日を生きる希望となってほしいと、私自身も強く励まされたのを、今でも覚えています。
その優しさや祈りのような想いが、観てくださる方の心にそっと寄り添い、小さな光となって届きますように。どうかこの作品が、ご来場くださる皆さまの明日に、少しでも希望をもたらす時間となりますように。

■藤岡正明
無事に初日を”明ける”ことができ、まずはただただホッとしています。
去年、プロデューサーからこの作品の演出を打診された日がまるで昨日のことのようにも、果てしなく長い道のりを経てきたようにも思えます。
傷つき、悲しみ、苦しみ、痛みを抱えて、それでも必死でそこにいる。
掠れそうな声で助けを求めている、そんな現代のシルヴィアへ、この作品が届いてほしい。
「あなたは間違いなんかじゃない」
どうかどうか、劇場にて『シルヴィア、生きる』の世界を体感していただけたら、本当に嬉しいのです。

取材・文/井ノ口裕子
カメラ/岩田えり ©conSept All Rights Reserved.