ジョビジョバライブ 『LET’S GO SIX MONKEYS』マギー インタビュー

2017年、15年ぶりに再起動を果たした演劇ユニット、ジョビジョバ。メンバー6人が勢揃いするライブを、2年ぶりに敢行することが決定した。平成が終わる今、なぜ再起動したのか。その経緯やメンバーへの想いを、リーダーのマギーに話を聞いた。


――2年前のライブでジョビジョバが再起動しましたが、どのような経緯があったんでしょうか?

マギー「再起動の大きな要因になったのは、2014年のU-1グランプリでのジョビジョバ再集結でしたね。U-1グランプリは僕と福田(雄一)さんがコントを一緒にやりたい人を毎回集めてやっていたんですけど、その中で、やっぱりジョビジョバのメンバーとのコントやりたい、という純粋な気持ちが出てきました。福田さんの中では、『マギー、ジョビジョバやればいいのに…』という企みがあってU-1を始めていたらしいんですけど。実際に再集結してみて、高揚感というか、グルーヴ感というか、こんな楽しいものがあるのに、これを同窓会で終わらせてしまうのはなぁ、という気持ちになりました。それに、お客さんもすごく待っていてくれていたことがわかったんです。そんなに待ってねーかな、と思っていたんで(笑)。あともうひとつ大きかったのは、この業界を離れた石倉(力)と木下(明水)が想像以上に面白かったんですよ。この2人の素人が居る6人組…40歳を超えているおじさんたち、面白れぇな、楽しいな、と思ったのが再起動の大きなきっかけでした」


――やっぱりこの6人だ、という実感と手ごたえがあったんですね。

マギー「ありましたね。昔からジョビジョバのネタ作りは俺がキーワードや設定だけ言って、ちょっと1回やってみよう、みたいな感じで台本ナシのエチュードをどんどんやっていくんですよ。それを見て俺が爆笑して、ちょっとずつ調整して「よし、見えたんで書いてくる」って言って、本を書いてくる。そういう順番で進めていたんです。そういう作り方のスタイルって誰とでもできることじゃないし、その稽古もすごく楽しかった。チラシの撮影の時も、お揃いの服を着て集まった時に“この感じ、この感じ!”ってなったんですよ。俺たち、この6人だったから面白かったんだ、面白いことまたやろーぜ、って」


――この6人だからこその、しっくりくる感じですね。

マギー「そう! 自分のポジションも含めてね。160㎝の俺がドラマや舞台ででポスターに載ると、小っちぇおじさんが端っこに居てカッコ悪いなーってなっちゃう。でも、この6人で小さい俺がリーダーで先頭とか真ん中とかで映ってると、このチーム、カッコいいなぁ、面白れぇな、って思える(笑)。そういう自分自身のポジションも含めて、すごくしっくり来るんですよ」


――再起動してみて、昔と変わったところは?

マギー「メンバーからすると、俺がピリピリしてなくなったことだと思うんですけどね。前は、『それはもう見たから、違うの無いの?』みたいな、技術的にも精神的にももっと上を求める俺と、それに応えようとしてくれるメンバーのピリピリ感っていうのはあったんです。今は、僕自身が彼ら5人のことを『この人たち面白いなぁ』って見ているので(笑)。別に、何か諦めたりしているわけじゃないんだけど、『キミはそれでいいんだ』みたいな感じが、それぞれにある。一回辞めて理解したことは、この人たち、こんなに面白かったんだっていうことですね。昔は、できないことにばかり目が行ってましたけど、今は俺が好きな彼らの面白い部分をどんどんフィーチャリングしていきたいんです。だから、現場はわりとあったかくて、ピリッとした空気にはあんまりならなくなりました」


――昨年、トークイベントがありましたが、ライブの形では2年ぶりとなります。今回のイメージを少しだけお聞かせください。

マギー「前回は再起動ということで、ある種『よっ、待ってました!』と言われるような、お客さんが観たかったのはコレでしょってことと、我々がやりたかったこととがうまく合致したんですね。でも今回は、ちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ、お客さんよりも先に行きたいですね。こんなおじさんたちでも、続けていく以上は新しいこともやっていきたいと思っています。お客さんのツボに嵌めていくだけじゃなくて『おっ、挑戦してきたな?』というものを見せたい。メンバーの中からも、次はもっと新しい角度のことができたらいいね、なんて声も出てますから」


――メンバーの意気込みも十分ですね。次はマギーさんから見たメンバーの今の印象を伺いたいたいと思います。まずは長谷川朝晴さんからお願いします。

マギー「バランス感覚と稽古場での瞬発力みたいなものが、すごく頼りになりますね。昔からそういう部分はあるんですけど、稽古場でアドリブから作っていく中で、毎回ちょっと違うことを試してくれたりするんですよ。やっぱり6人を見ながら…サッカーで言うなら、いい位置に入ってくれる奴なんです。そこは、前やっていた頃以上に、ポジショニングが上手くなったような印象はありますね」


――続いて坂田聡さんはいかがでしょう?

マギー「爆発力と演技力に関しては、若い頃よりも格段に上がりました。最も見た目のおじさん感が高いので(笑)、僕らが40代、50代と向かっていく中で、やろうとしているコントの表現の“おっさんが頑張ってる”とか、“おっさんが張り切ってる”みたいな部分を実に体現してくれていますね。ポイントゲッターというか、デカい笑いを取る突破力がありますね」


――続いて六角慎司さんは?

マギー「あえて、いい意味でというのを頭につけますけど(笑)、彼だけは何も変わってないんですよ。六角だけは、タイムマシンに乗って2002年のアイツが来ているんじゃないかっていうくらい(笑)、何も変わってない。きっと昔だったら『なんで何も変わってねーんだ』って怒っただろうけど、今はそれも含めて笑うようにしてます(笑)」


――そのままで居てくれることで、20代の自分たちとつないでくれるような感じでしょうか?

マギー「そんな良いもんじゃないです(笑)。まぁ変わらない良さってものもあるので、俺の見たい昔のままの六角と、今回は新しい六角にも少しだけ期待してます」


――木下明水さんは現在、お坊さんをされているんですよね。

マギー「西日本で3番目に面白いお坊さんだと思います(笑)。この人、お坊さんなんだよなぁ、と思うと、すごく面白いんですよ(笑)。これは石倉もそうなんだけど“自分は素人なんだ”という開き直りと責任感のなさが、いい方向にプレイに出てる。それが嬉しいんですね。ネタ出しとかで相変わらず量を出すところは変わってなくて、グループLINEとかで「こういうのどう?」っていうのはしょっちゅう送ってくる。そういう前向きさは、俺らも刺激になります。実は、昔から明水って俺らのキーマン、ムードメーカーみたいなところがあったので、今もそれは変わらないですね」


――なるほど、最後に最年少の石倉力さんは?

マギー「今の石倉が20代で完成していたら、俺たちは解散しなかったんじゃないかと思うくらい、今の石倉は面白いですね。まったく責任がないし、いい意味で向上心がない(笑)。だけど、舞台上の仕事はカッチリやる。舞台に立って、このコントをやる以上は、笑いを取りたい。でも、無茶してできないことをやってまで笑いを取る必要は、ワシには無いやろ?っていう、そのふてぶてしさみたいなところが、コイツ面白くなったなぁ、って思うんですよ。昔から、石倉が「何もしない」っていうオチになることが多かったんですけど、昔は石倉自身に「俺もなんかやりたい」って意思があった。今はもう「なにもしないなら楽だ」って喜んでそのポジションをやってる」


――年齢を経て、ちょっと達観して、“何もしない”が自分の芸になってるのかも知れないですね。

マギー「そう。それってすごく強いじゃないですか。明水と石倉が素人なのに、今こうやって仲間に入ってくれるっていうのが昔と新生ジョビジョバの一番の違いだと思うし、そこが一番の楽しみどころだと思うんですよね」


――再起動から2年、マギーさんの意識に変化はありましたか?

マギー「やっぱり、日々「おっ、これライブで使えるな」みたいなことは考えてますね。ライブは2年ぶりではあるんですけど、頭のどこかには常にジョビジョバがありました。それがすごく嬉しいんですよね。再起動までは、過去のものとして自分の中にあったジョビジョバが、進行形のものとして考えられる。ネタを作ろうと思ってなくても、急に思い浮かんでメモしたり。自分がそういうアンテナ張った状態でいられるのが嬉しいですよね」


――常にジョビジョバアンテナが張られている状態なんですね。それがどんな形でライブに活かされるか、楽しみです。最後に、ライブを期待しているファンにメッセージをお願いします!

マギー「ファンに関しては、やっぱりちょっと先を行ってる俺らに期待してほしいですね。でも、続けていくからには、これからファンになってくれる人にも呼び掛けたいんですよ。門は常に開いておりますので(笑)、最初は「なんぼのもんじゃい!」って気持ちでいいんです。ちょっと行ってみようかな?っていう、その“ちょっと”が大事! なんかふと、コレ行ってみようかな?っていう瞬間ってあるじゃないですか。その気持ちをぜひ大事にしていただいて…ちょっとでもジョビジョバに引っかかっているとしたら、あなたのそのセンスは正しかったと思わせますので!」


――このインタビューを読んでいる方は、その“ちょっと”の入り口にいますからね(笑)。ライブ、楽しみにしています。本日はありがとうございました!

 

インタビュー・文/宮崎新之