夭折の作家・一葉と明治を生きた女性たちの盆の16日とは…。生と死が仲良く重なり奏でるのは、可笑しくも儚い物語。
こまつ座旗揚げ公演で初演されて以来、700回以上上演を続け、今もなお人気を集める『頭痛肩こり樋口一葉』を、2026年、再び上演することが決まった。女性6人の人生模様の切実さが観客の共感を呼ぶ作品だ。
「にごりえ」「たけくらべ」など樋口一葉の作品が全編に散りばめられる中で描かれるのは、樋口夏子(一葉)と幽霊・花螢のユーモラスな交友、そしてたくましく生きる明治の女性たちの姿。それらはまさに井上ひさし版・樋口一葉像といえるだろう。
近代化を推し進めたしわ寄せがのしかかり、女性が「個」として生きるのが難しい時代に、「われは女成けるものを」と日記に記し、貧困の中、一家を支えた一葉の信念が、現代のヤングケアラーという言葉とも重なり、女性として生きる意味を今の時代に訴えかけてくる。筆の力をもって社会に挑んだ一葉から、すべての人へお届け!
あらすじ
夭折の天才女流作家、樋口一葉の十九歳(明治二十三年)から一葉の死の二年後の明治三十一年までを、一場をのぞいて、それぞれの年の盆の七月十六日の夕刻に展開する、樋口一葉の評伝劇。
父や兄に先立たれ、若くして樋口家の戸主となった夏子(樋口一葉)の肩には、母・多喜と妹・邦子との貧しい生活が重くのしかかっていました。母の期待や妹の優しさに応えようと孤軍奮闘の日々を送ります。
恋をする自由も将来を夢みる余地もない夏子は閉塞感に押しつぶされそうになり、ついには、ただ墨を擦り、筆を動かすためだけに身体をこの世に置いてある、そう心を決めます。
そして、明治二十四年の盆の夕刻。
「ぼんぼん盆の十六日に 地獄の亡者が出てござる……」
少女たちの歌う盆歌に導かれて、一人の幽霊が夏子のもとを訪れてきます。「花螢」と名乗り、歌い踊る幽霊。
夏子と幽霊は、互いに心を通わせ合いますが……。
こまつ座とは
1983年、作家・劇作家の井上ひさしが座付作家として立ち上げ、翌年『頭痛肩こり樋口一葉』で旗揚げ。以降、井上ひさしに関わる舞台を専門に作り続けています。近年の受賞作に2003年読売演劇大賞最優秀作品賞(『太鼓たたいて笛ふいて』)、2010年読売演劇大賞芸術栄誉賞(井上ひさし)、2012年紀伊國屋演劇賞団体賞 (「井上ひさし生誕77フェスティバル2012」の舞台成果)、2012年第37回菊田一夫演劇賞特別賞(井上ひさしの優れた演劇世界を、演劇人の良心を注いで作り上げた永年の舞台製作における功績に対して)、2016年読売演劇大賞優秀作品賞(『マンザナ、わが町』)、2017年文化庁芸術祭賞の演劇部門において関東参加公演の部で大賞を受賞。2020年第5回『澄和Futurist賞』(顕彰事業)受賞。その他にも受賞歴多数。
「むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく
ふかいことをゆかいに ゆかいなことをまじめに 書くこと」
―井上ひさし
