「BACKBEAT 2026 FINAL」取材会・ゲネプロレポート

2026.05.13

世界的ロックバンド・ビートルズの創成期を描いた1994年公開の伝記映画『BACKBEAT』を、イアン・ソフトリー監督自ら舞台化した本作。結成当初は5人編成だったビートルズに、メジャーデビューを待たず袂を分かつことになるバンドメンバーが存在した――という史実が基になっており、日本では2019年に初演、2023年に再演が行われた。

翻訳・演出は石丸さち子、音楽監督は森 大輔が務め、スチュアート・サトクリフ役に戸塚祥太(A.B.C-Z)、ジョン・レノン役に加藤和樹l、ジョージ・ハリスン役に辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)。ポール・マッカートニー役にJUON(THE& ex FUZZY CONTROL)、ピート・ベスト役に上口耕平と、初演からのメンバーが再集結した。さらに、愛加あゆ、林 翔太、鍛治直人、東山光明、田川景一、安楽信顕、60年前のビートルズ来日公演で前座を務めた尾藤イサオと、個性豊かな実力派が顔を揃えている。
プレビュー公演、愛知、大阪公演を経ていよいよ開幕する東京公演を前に、取材会とゲネプロが行われた。

――尾藤さんのその衣装は……

尾藤 ビートルズが来日した時、武道館で前座をやらせていただき、このハッピをいただきました。ビートルズが飛行機から降りてきて、タラップで手を振っていた時のものです。武道館は当時からキャパ1万人なので、そこで歌が歌えたのは幸せでした。あっという間の60年でしたね。

――本作にずっと関わってきた石丸さんは、近くで見ていていかがでしょう

石丸 本当に感慨深いです。手探りでビートルズを演じていいのか、苦悩しながら作ってきました。当時のビートルズに関する証言はアストリッドの写真やクラウスの絵しかなくて。彼らの熱とあの頃のビートルズの熱がこのファイナルで一緒になった実感があります。先のわからない未来に向かって疾走する、本質的に人間が持っている力を見られる舞台になりました。東京に来て劇場の空間も変わり、すごく生々しくライブ、洗練されていて荒々しいストレートプレイをお見せできると思います。

――3回目の上演ですが、苦労した点や楽しかったことなど、いかがでしょう

戸塚 たくさんのお客様、スタッフさんに愛していただけている作品だと感じています。自分としては、たくさんの方々の気持ちを自分なりの意図に変換して、ステージの上に優しく叩きつけていきたいと思っています。厳しい瞬間もありましたが、みんなで一緒にそれを乗り越えた素敵な経験があり、喜びも共有できている気がします。ツアーを重ねてきての今ですが、この後の人生でも時折思い出すんだろうなという作品になりました。

加藤 一回一回がファイナルにふさわしく、熱量を持ったものになっています。それだけ我々は体を張って、『ザ・ビートルズ』というとてつもなく大きい存在に向き合い、彼らと共に進んできました。最初は怖かったですが、メンバーやスタッフの皆さんに支えていただき、ジョン・レノンとして日々を生きているので、このまま最後まで突き進みたいなと。ただ自由でいればみんながジョンにしてくれるので、信頼しかないです。

辰巳 この舞台の初演に出たくて「ギターが弾ける」と嘘をつきました。そのおかげでリードギターというポジションを築いたジョージ・ハリスンと出会い、初演から7年でギターを弾けるようになりましたし、色々な文献やさち子さんとのお話の中で自分なりのジョージを見つけられた自信があります。舞台はファイナルですが、バンドとしては一生続けたいなという本当に強い気持ちでいます!

JUON 普段の音楽活動は右で弾いていますが、ポールは左なので、初演の時は半年くらいずっと訓練しました。ご飯を食べるときは左なのを右にして、スイッチの切り替えをして。今では変な話、右で引くより左で引く方が快感です。歌い方などに関しては、僕も昔からずっとビートルズを聴いてきたし映像も見てきたので、それを純粋にやっているだけですね。考えすぎない方が自然とホールになって行く感覚なので、それを信じてやっています。

上口 みんな舞台人だから、普段の公演ではちょっと調整すると思うんです。でも、この作品ではそれが不可能なようで、例えば「今日はリハーサルだからセーブしよう」と言ったのに始まった途端ギアが上がる。後ろから見ている僕も結局上がっちゃうので、東京公演も何が起こるか本当にわかりません。ぜひ目撃しにきていただきたいですし、僕はドラムを演奏しながらゾクゾクする毎日を過ごすことになると思います。20曲以上あるので「みんな飛んで大丈夫?」と心配になりますが、同時に楽しみも強いです。お客さんがどんなふうに盛り上がってくれるかも楽しみですね。

――初参加の林さんはいかがでしょう

 最初はすごくドキドキしましたが、今では毎日楽しんでいます。あと、ドラムも今回初めてやらせてもらって、最初のレッスンで先生にすごく褒められました。

――愛加さんは2回目の出演です

愛加 皆さん大変なライブを重ねているのに、袖ではずっと笑い合ってふざけています。男の子って面白いなと思って見ています。前回はすごい作品を前にしてプレッシャーもありました。今回さち子さんに言われて印象的だったのが、「お客さんに嫌われてもいいから」ということ。誰かに好かれようと思わず、芸術やスチュへの思いに一本筋の通った役にしてほしいと言われました。前回の反省を踏まえて皆さんと本当に心を通わせられている実感があるので、すごく楽しいです。

――最後に、お客様へのメッセージをお願いします

加藤 再演を重ね、今回はファイナルです。思いのこもったストレートプレイで、演劇好きはもちろん、ビートルズや音楽好きの方も確実に楽しめる作品になっておりますので、ぜひ足を運んでいただけると嬉しいです。

戸塚 ファイナルにして最高傑作が出来上がりました。俳優が芝居も生演奏もするという、なかなか味わえない作品になっていると思います。気軽に劇場に遊びにきてください。パーティーに来た感覚で楽しんでいただけたらと思うので、一緒に楽しみましょう。

<ゲネプロレポート>

この日披露されたのは一幕。画家としての将来を期待されているスチュアート・サトクリフ(戸塚祥太)がジョン・レノン(加藤和樹)に誘われてバンドに入り、ポール・マッカートニー(JUON)、ジョージ・ハリスン(辰巳雄大)、ピート・ベスト(上口耕平)とともに『ザ・ビートルズ』を結成。スターダムへの道を駆け上っていく過程を中心に描いた場面だ。

バンドメンバーの5人は初演から続投ということもあり、演奏も芝居も息ぴったり。ライブシーンでは客席が揺れるような迫力あるサウンドを響かせた。それぞれの楽器の聴かせどころを押さえつつ、華やかな動きでも魅せ、夢を抱く若者たちの情熱や勢いを表現していた。
劇中では、20を超える楽曲をキャスト陣による生演奏で披露。本人たちが使用していたモデルの楽器で演奏する楽曲もあるという。ビートルズの音に近づけるために研究を重ねたサウンドも見どころだ。

スチュアートに対するジョンの思い、バンド内の人間関係、アストリッド(愛加あゆ)と出会ったスチュアートの変化など、芝居部分も骨太に作られている。ビートルズというバンドを知っていても、彼らがこの先どうなるのかハラハラドキドキしながら見守ってしまう。
お馴染みの名曲たちを生演奏で楽しみながら、ビートルズが世界的に愛されるバンドに成長していく過程と、その裏にあった様々な物語を味わい、新たなビートルズに出会える本作。本格的なバンドサウンドと若者たちのエネルギーにあふれた物語を、ぜひ劇場で体感してほしい。

東京公演は東京・EX THEATER ROPPONGIで2026年5月3日(日・祝)から5月17日(日)まで上演。5月21日(木)~5月24日(日)には兵庫・兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホールでも公演が行われる。

インタビュー・文・撮影/吉田沙奈