コンプソンズ大宮企画#4『浅草フェヌア』│コンプソンズ・大宮二郎×転転飯店・中村亮太 インタビュー

6月5日(金)より浅草九劇にてコンプソンズ大宮企画『浅草フェヌア』が開幕する。本企画はコンプソンズのメンバーであり、俳優の大宮二郎がコントの作・演出を手がける番外公演シリーズの第4段目。キャストは大宮のほか、片桐美穂、榊原美鳳、佐久間麻由、佐野剛、関彩葉、中村亮太(転転飯店)、藤家矢麻刀(ウンゲツィーファ)で、今回も8人8様それぞれ独自の個性を放つ魅惑の俳優陣が集結した。
2021年の始動より『短編集、石棺』、『映画のパロディ』、『猿のハイライト』と回を増す毎に着実にスケールアップを見せる話題のコントシリーズだが、今回は大宮企画史上最大キャパの浅草九劇での上演となる。「劇団コント公演の地位向上」を裏テーマに挑む、笑いへの敬愛と鋭い着眼点が随所に散りばめられたシリーズ最新作。その上演を前に、演劇とコントの双方で活躍を見せるコンプソンズの大宮二郎と転転飯店の中村亮太に笑いへのこだわりや本作の見どころについて話を聞いた。

大宮企画と転転飯店、そのコントの違いとは?

―まずは、お二人の接点からお聞かせ下さい。

大宮 互いに知ってはいたのですが、共演は今回が初めてなんですよ。去年の11月にコンプソンズ大宮企画でテアトロコントに参加した際に中村さんが観に来て下さって…。その時に楽屋で初めてお話をしました。

中村 テアトロコント、改めて凄まじい企画だなと思いました。お笑いと演劇が融合した舞台なので、客席もお笑いの文脈からいらしてる方と演劇の文脈からいらしてる方がいて…。牽制とまではいかないですが、そこはことなく両者で探り合うような、試されているような、何とも言えない空気が流れているんですよね(笑)。そんな特異な環境下でもコンプソンズ大宮企画はめちゃめちゃウケてて…。すごく面白かったです!

大宮 うれしいです。テアトロコントはたしかに特殊な環境ですよね。普段の公演では味わえない緊張もあり、すごく刺激的でした。テアトロコントもですが、大宮企画は基本的に僕の俳優の仕事が空いている時にやるようにしているんです。そんな中で、「今年できるとしたら、5月か6月かな」と思っていたところで、ちょうど浅草九劇さんからお声がけいただいて…。

―回を追う毎にバージョンアップを重ね、ますますの注目を集めているコンプソンズ大宮企画ですが、浅草九劇は大宮企画史上最大キャパですよね。タイトルにも意気込みを感じます!

大宮 実は元々は別の仮タイトルがあって、『浅草八劇』にしようかと思っていたんです。自分的には気に入っていてそのまま行こうかなと思っていたんですけど、大宮企画の制作もしてくれているコンプソンズメンバーの鈴木啓佑に「このままじゃダメだと思う?」と意見を聞いたら、「さすがにもうちょっとちゃんとした方がいいんじゃない?」と言われ、たしかにと思って、『浅草フェヌア』に改めました(笑)。

中村 最初に企画書をいただいた時は『浅草八劇』でしたもんね。「タイトル、ふざけてていいなあ」と、思わず字面見て笑ってしまったんですけど、そんな経緯があったとは!

大宮 そうなんですよ。80〜90年代に宮沢章夫さんたちがやっていたラジカル・ガジベリビンバから派生した若手ユニット「ナベナベ・フェヌア」から着想を得て…。浅草と合わせても響きもいいし、そこから『浅草フェヌア』と命名しました。

中村 納得です。というのも、『浅草フェヌア』の台本を読んでまず思ったのは、「大宮さんは本当にめちゃめちゃ笑いが好きなんだろうな」ということでした。なんか、ギリ演劇よりお笑いの方が好きなんじゃないかと思うくらい、笑いへの愛とこだわりが台本から滲み出ていたんですよね(笑)。「こういうことがやりたいんだ!」という笑いのビジョンがすごくクリアに伝わってきて、稽古が楽しみになりました。

―中村さんも様々な団体の作品に出演しながら、自身のユニットである転転飯店ではコント公演やショート動画配信もやられていて、近年はますますその活躍に注目が集まっています。私は2018年頃から中村さんの出演作を拝見しているのですが、会話劇でもコメディでも毎回「間合い」が絶妙で…。そのあたりはコントでも大いに活かされているのではないかと感じたのですが。

中村 そうですね。ずっと演劇をやっていたのですが、コントも好きだったので、やってみようと、俳優仲間であり大学の同級生でもある平山犬と始めたのが転転飯店でした。コントのいいところは、それこそ「間合い」みたいなものをどんどん試せるんですよね。時と場合によって、すごく溜めてみたり、逆に自分だけ走って逃げるくらいの勢いで言い放ってみたり…(笑)。そういう実践の場になっているし、リアクションとしてお客さんの反応が返ってきやすいのも面白くて。

大宮 それはありますよね。演劇を観ている時の感動って音にはなりにくかったりするんですけど、コントでは反射的な笑いがお客さんから音として返ってきますもんね。でも、もしかして、中村さんが演劇公演ではなく、コント公演で外部に出演されるのって大宮企画が初めてだったりしますか?

中村 そうなんですよ、がっつりコント公演をやるのは、転転飯店以外ではほぼ初めての体験なんです。だから緊張もしています。自分たち以外のコントにお邪魔させてもらうことが経験としてないので…。

大宮 いやー、嬉しいですね。大宮企画は基本当て書きなのですが、類にもれず中村さんにもガッツリ当て書きをさせてもらいました。

―そうですよね。大宮企画はコントそのものの面白さもさることながら、毎回キャストの個性や強みをたっぷりと掬い上げられていて、人物造形に裏打ちされた笑いも反響を呼んでいます。

大宮 中村さんが客演されている舞台をいくつか拝見して感じたのは、間をとったり、全体の空気や温度感を見極めるのがお上手でいらっしゃるからか、割とツッコミというか、俯瞰的に見て全体をまとめるポジションに置かれていることが多い印象だったんです。でも、転転飯店のコント公演を観に行ったら、結構ガッツリボケ倒していらっしゃる! そのボケ方にシンパシーを感じたこともあって、今回は1本を除いては、ボケ倒していただこうと思っています。

中村 転転飯店は2人のユニットなので、複数人でやるコントっていうのがまずとても新鮮で刺激的なんですよ。稽古でも「ひ、人がいっぱいいる…」と変な感動をしています(笑)。

大宮 あははは! でも、たしかに中村さんにとっては、そこがいつもやられているコントとは大きく違うところですね。

中村 人がいっぱいいるのはシンプルに楽しいですし、みんなでおっきい荷物を持っている感じがすごくいいです!

―みんなでおっきい荷物! 中村さん、言い得て妙ですね(笑)。大宮企画って人数こそ多いですけど、みなさんがそれぞれストイックに笑いを背負われていて、総合芸術感がすごくあります。コントの順番にも哲学が宿っている感じがします。

大宮 言われてみると、たしかに順番は毎回結構こだわって決めている気がしますね。前回は割とベタに、だんだんめちゃくちゃになっていくとか、人数が増えて混沌としていく、みたいな感じだったんですけど、今回はまた違うアプローチで組み立てています。何が違うかは是非本番で体感していただけたらと思うのですが、ざっくり言うと、温冷浴で整っていくような感じを目指しています。それが効果的なのかどうかは、正直現段階ではわからないんですけど、そういう実験を思いついたまま実践できるのも大宮企画のいいところだなと!

俳優の演劇経験をフルに活かしたコントを

―今はまさに集中稽古真っ最中ですが、稽古場で感じていること、新たな気づきなどはありましたか?

中村 僕は、去年くらいから、「コントはコントの身体でやろう」という意識を持つようになったんですよ。具体的に言うと、説明とかが最初に完了しちゃっていた方が、笑う時間を長くできるから、前段を短くしようと心がけているというか…。でも、大宮企画では共演のみなさんも普段はいろんなタイプの演劇に出演されている方が多いじゃないですか。だから、演劇で戦っている人たちがそれらの経験をフルに活かしてコントをやる、という意味で個々の技が光っているんですよね。僕たちは2人だったので、そのあたりを諦めてというか、割り切ってコントに挑戦してきたんですけど、今回の稽古で「その手があったか!」とか「そういうアプローチもありかも!」とみなさんから気づきをもらっている部分がすごく多いんです。多分、稽古中も僕が一番笑っちゃっている気がします。本番までに何とかみんなのコントを見て笑うのを堪えられるようにならないと!

大宮 前回インタビューしていただいた時にもお話したんですけど、大宮企画は、「劇団のコント公演の地位向上」を裏テーマに活動しているんですよ(笑)。ちょっと大きく出た気もしますけど、そこが強みなんですよね。厚い信頼を寄せている俳優さんばかりなので、脚本にその要素を盛り込むというよりは、個々がそれぞれの視点で解釈してやっていただくことによって、多彩な色やうまみが出ているのだと思います。

中村 そう、そうなんですよね! なんか、芝居が上手だったりする長所が一周回ってボケになっていたりするじゃないですか。「そんなに上手い必要がない局面でも上手すぎて笑っちゃう」とか「ディティールもすごく凝っているけど、そこに全然意味はない」とか、そういう“芝居の技ありきで生む笑い”が魅力的なんですよね。この人たちだからやれる笑いが詰まっている。この体験はなかなか他ではできないと思います。

―演劇とコントを横断した、興味深いお話です。お二人はご自身の所属団体以外でも俳優として多くの演劇作品に客演していらっしゃいますよね。それこそ、コメディだけでなく、シリアスな物語や現代口語演劇などでも魅力を発揮されていますが、コントの時と、演劇の時、俳優としてのスタンスは何か違いがあったりするのでしょうか?

大宮 僕は、スタンス自体はあんまり変えていないかもしれないです。コンプソンズの本公演でも笑いを取る場面は結構あるし、もちろんそうじゃないシーンもあるんですけど、舞台での居方としては割とフラットにやっている気がしますね。笑いのシーンでどういう間で言えばウケやすいかと、シリアスなシーンでどういう間で言えばその濃度が伝わりやすいかは、割と同じアプローチだったりするというか…。目指す先が笑いかそうでないかだけであって、感情をどう表現できるか、どう出力できるか、については共通して同じ回路で考えているかもしれないです。中村さんはどうですか?

中村 僕は、コントの時は基本的にベタをやって、そのベタベタなコースを歩きながらたまにちょっと外す、みたいな感じなんですけど、演劇の時は逆のアプローチでやっているかもしれないですね。基本的にちょっとズレたところを進みながら、たまにベタにボケる、みたいな…。そうした切り替えの部分に変化が出ているのかもしれません。僕はとにかく、コントでは説明を早く終わらせたいんですよ。とにかく長く笑っててほしいので。

―なるほど…。転転飯店のショート動画は短いタームの中に爆笑が仕掛けられているので、中村さんの言葉には説得力があります。

中村 ショート動画はとくにそうですね。もはや、滑る前に逃げる!くらいの気持ちというか、滑ったことに気づかれないうちに終わっとこう!みたいな…。

大宮 あははは! でも、あの短い時間でしっかり笑いをとっているのはやっぱりすごいですよね。

浅草九劇を大宮企画カラーに染めて

―『浅草フェヌア』の上演に寄せては、過去公演を観られた多くの方から推薦コメントも寄せられていていますが、それらを受けて感じたことなどはありましたか?

大宮 コメントもなのですが、松尾スズキさんがご自身のメルマガの中で前回公演の感想を書いて下さって、「テレビでは見られない笑いの構造の複雑さがあって、それがウケていたのが良かった」という旨のコメントを寄せて下さったんです。すごく嬉しかったのですが、嬉しさ余って「今回はもっと複雑な構造にした方がいいのかも」みたいな思考回路になりそうなところをぐっと抑えて、一旦フラットに取り組みました(笑)。

中村 なるほど!

大宮 でも、僕自身も所属劇団のコンプソンズや劇団地蔵中毒などで活動をしてきたので、その笑いを系譜として遡るとやっぱり松尾さんに辿り着く部分は大きくて…。ベタな笑いだけじゃなく、ナンセンスな笑いも織り交ぜる。そうしたバランスについてはすごく考えさせられますね。とくに今回は浅草九劇とキャパも大きいので、初めて大宮企画を観て下さる方も増えるだろうし、そこも踏まえて、大宮企画ならではのカラーと普遍的に笑える要素みたいなものの双方をうまく自分たちのものにできたらな、という思いがあります。

中村 僕は、浅草九劇に立つのは今回で2回目なんですけど、今年は結構立つ機会が増えそうなので、それも含めて劇場との反響をどう楽しめるかを考えています。

大宮 これまでやってきた会場は浅草九劇の4分の1くらいのスペースだったので、僕もどんな風に使おうか楽しみ半分、戸惑い半分といった感じです! 浅草九劇という空間の良さを活かしつつ、舞台は少し絞ってなるべくライブハウスっぽく、いつもの良さも感じられるようにできたらいいなと思っています。あと、今回も類にもれず大っきい声を出すんですけど、会場がでっかいので、いつもよりさらに大っっきい声を出せたらと思っています!

中村 大っっきい声、張り切って出していきます! あと、僕たちは大宮企画の後も共演が続くんですよ。

大宮 そうなんです。7月のMrs.fictions presents『15 Minutes Made 東京/福岡』と12月に同じく浅草急激で上演される劇団スポーツ『九蓮宝燈の夜』と続きます。だから、絶対喧嘩しないように!

中村 喧嘩せず、仲良く大声を出していきましょう!

大宮 あとは、僕は転転飯店に出れば、補完となります!

中村 あははは! 

インタビュー・文/丘田ミイ子