シス・カンパニー公演『LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン~』 開幕レポート

2019.04.09

シス・カンパニー公演『LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン~』が、いよいよ4/6(土)に開幕しました!
演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ、出演:大竹しのぶ・稲垣吾郎・ともさかりえ・段田安則のメンバーが、2006年上演『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?』以来13年ぶりに顔を合わせ、前作で強烈なバトルを見せたあのエネルギーを新たな作品にぶつけます。

本作は、全世界で大ヒット作を数多く放ち、日本でも高い人気を誇るフランス人劇作家ヤスミナ・レザの代表作のひとつ。
その作風は軽やかなコメディでありながら、構造は巧妙かつ緻密。そして、ビターな後味が絶妙です。
ある夜、同じシチュエーションからスタートする2組のカップルの会話が、その話題の角度やトーンを少し違えるだけで、こんなにも熱量が異なる<LIFE>になるのか?という、そのタイトルの通り、“3つのLIFE”を存分にご堪能いただける構造で、笑いながら、ときにはグサリと鋭い刃にたじろぎながら、人生もお芝居も、3倍面白くなる作品です。

【Introduction】
ある夜、宇宙物理学者アンリ(稲垣吾郎)とキャリアウーマンのソニア(ともさかりえ)夫婦は、自宅の居間で、なかなか寝付いてくれない子供に手を焼いていた。 そこに、来客の呼び鈴が・・・。
なんと、扉の外には、翌日に招待していたはずのアンリの上司 ユベール(段田安則)とイネス(大竹しのぶ)夫妻がいるではないか!! 突然の来訪に慌てふためく二人。 最近、研究が停滞気味だったアンリにしてみれば、上司を夕食に接待して、本当は大切な夜にするはずだったのに、出せる物といったら、食べ残しのスナックくらいしかないし・・・。
さて、こんな悲惨なシチュエーションから始まる3つのヴァージョンの物語は、果たして、どう展開していくのだろうか?


【コメント】

≪上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ≫
ヤスミナ・レザは以前から好きな作家で、日本での上演も多く見てきました。でも、この作品ほど、不思議な流れの戯曲はなかったんじゃないかなあ(笑)。知的シットコムという体裁で前半を終えると、後半から少しずつ少しずつ不条理劇のようなエッセンスが増してきて、一筋縄では紐解けなくなっていく難しさがある。お客様にも細部に渡って生まれるハテナに頭を使って観ていただきたい(笑)。そこが演劇の面白いところであり、豊かさではないかと思うんです。こういう芝居は、他にはなかなかないですね。役者4人と僕を含めた5人で、どの国で上演されてきたものよりも面白い作品に仕上げたい!と稽古に集中してきました。いろんな意味で、計算だけでは創り出せない上演になると思います。


≪大竹しのぶ≫

KERAさんと役者4人で毎日毎日あーでもない、こーでもない、と笑いながら、悩みながら、苦しみながら稽古期間を過ごしてきました。以前出演した『大人は、かく戦えり』もそうでしたが、レザ作品は、これと言って大きな出来事が起きるわけではないんですね。自分たちの日常に近いやり取りの中で、“表の顔”のそのまた裏にある本心が見え隠れして笑ってしまうようなコメディです。そんなちょっとくすぐったい笑いがうまく出せたらいいなと思っています。今回、舞台を360度取り囲んだ客席で、全ての角度からお客様に見られているのも難しい点です。でも、楽しい笑いで劇場全体が包み込まれるよう、皆で頑張ります!


≪稲垣吾郎≫

『ヴァージニア・ウルフ~』から13年も経ったという感じがしないですね。出演者の皆さんやKERAさんとの関係性ができていたところからのスタートだったので、いいチームワークで稽古に臨むことができました。この脚本は、微妙な言葉や反応の違いで笑いを誘うところがとても洒落ています。シニカルなブラックユーモアや人間の醜さ、美しさなどの様々な側面が凝縮されていて、リアルな可笑しみがある作品です。人生には、「あのときこうすれば…」「あれでよかったのか?」と考える瞬間がありますが、それを巧妙に芝居にしているところが面白いですし、お客様も、ご自分の物語として楽しんでいただけると思います。


≪ともさかりえ≫

KERAさんの上演台本は、翻訳劇の違和感がなくて、グッと身近に感じられるセリフです。でも、作者が3幕の構造に込めた意図はずっと謎だらけで、日々の稽古を通して、カンパニー全員で謎解きをしていくような濃密な時間を過ごしてきました。四苦八苦する私をよそに、大先輩の大竹さんと段田さんはいつも自然体。日常と演技の境目のなさは、もはや“人間離れ”の領域です(笑)。稲垣さんもご自身のペースをもっていらっしゃるし、頼もしい共演者の皆さんと信頼している演出家KERAさんと再びご一緒できて、稽古中も、つくづく“恵まれているなあ”と噛みしめていました。


≪段田安則≫

ヤスミナ・レザ作品は、『大人は、かく戦えり』に続き2作目です。「少人数で激しいバトルの会話劇」という外枠は共通していますが、今回は、1~3幕それぞれ角度が違う不思議な構造。セリフはシンプルですが、作者が意図することがなかなか掴めず、その手強さに稽古中も頭を抱えながら格闘の毎日でした。むしろ13年前の「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?」との相似性がある作品だったので、時を経て、再び同じメンバーでこの作品に向き合えたことに感慨を感じています。
それにしてもレザさん、どうしてこんな奇妙な構造の戯曲を考え出したんでしょうね(笑)。

 

撮影/宮川舞子