堤真一&橋本良亮 主演舞台『良い子はみんなご褒美がもらえる』稽古場レポート!

2019.04.11

堤真一と橋本良亮(A.B.C-Z)が主演を務める舞台『良い子はみんなご褒美がもらえる』が4/20(土)から5/7(火)までTBS赤坂ACTシアターにて、5/11(土)から5/12(日)まで大阪フェスティバルホールにて上演となる。

本作は、舞台『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』や『アルカディア』、映画『恋に落ちたシェイクスピア』など、日本でも人気なイギリスの劇作家トム・ストッパードが、俳優とオーケストラのために書き上げた異色作。
ソビエトと思われる独裁国家で、政治犯として誹謗(ひぼう)罪でつかまったアレクサンドル・イワノフ(堤真一)と、自分はオーケストラを連れているという妄想に囚われたアレクサンドル・イワノフ(橋本良亮)、それぞれの理由で精神病院に送り込まれた同姓同名のふたりが、権利と自由について正面から向き合う。

 

出演には堤と橋本をはじめ、三谷幸喜作・演出の舞台『子供の事情』やテレビドラマ『コンフィデンスマンJP』の演技で注目を集める小手伸也や本作が日本初舞台となる韓国を代表する女優シム・ウンギョン、文学座の実力派俳優外山誠二、ストッパード作品に初挑戦となる斉藤由貴が名を連ねている。

また、演出はイギリス・ウエストエンド最大の演劇賞「オリヴィエ賞」で2014年にベスト・エンターテインメント賞に輝いた、バレエ、オペラ、ミュージカル、演劇といった舞台芸術のジャンルの垣根を越え活躍する演出家のウィル・タケットが務める。

戯曲×出演者×演出家と豪華な顔ぶれが並ぶ、舞台『良い子はみんなご褒美がもらえる』の稽古が4月某日、都内のスタジオにて報道向けに公開となったので、今回はその様子をレポートしたい。

 

舞台の中央には、数段のゆるやかな階段と広いスペースがあり、舞台に向かって右手には建物の非常階段のような構造体があり、舞台左手上部には学校机、下部には病院の診察室を連想させる机がある。また、舞台中央奥には楽器名が指定された椅子が並べられて、オーケストラの楽団が座れるようになっていた。

公開稽古開始前、記者が席に着き準備をしていると、堤が舞台上に現れストレッチをしながら自然な様子で時間を過ごす姿を確認することができた。また、橋本も舞台に現れると、堤は橋本に話しかけ、これから行われるシーンの段取りを共有しながら、なにやら談笑しているようだった。

演出のウィル・タケットが「さあみなさん始めましょう」と声をかけると公開稽古が始まった。この日まず公開となったのは、堤と橋本ふたりのアレクサンドル・イワノフが過ごす病室で、堤がなぜ精神病院に送り込まれたか経緯を語るところからはじまった(なお、堤と橋本が演じる人物は同姓同名のため、便宜上、堤が演じる人物をアレクサンドル、橋本が演じる人物をイワノフとする)。

オーケストラがいつも自分について回る妄想に苦しめられるイワノフが錯乱して、アレクサンドルに自身のオーケストラの演奏について感想を求め迫る場面では、橋本は堤の胸ぐらを掴みかかるなど、精神状態が不安定なイワノフの狂気を熱演。また、堤もイワノフに振り回されながら、不遇な環境に翻弄されるアレクサンドルを憔悴した様子で体現していく。また、この場面でアレクサンドルの非常に長い台詞があるのだが、堤は流暢に、時に身に詰まる様子で語り、高い臨場感で組み立てていく。堤の巧みな姿が光る場面であった。

演出のウィル・タケットはふたりの演技に「すばらしい」と賞賛の声をかけると、舞台にさっと現れ、細かな立ち位置を修正していく。ウィル・タケットは演出の指示を入れるたびに舞台上に現れ、出演者と話しながら決定していく民主的な演出方法で、彼の朗らかな雰囲気に堤や平山も自然と笑みをこぼしながら、意見を出し合い、非常にクリエイティブな時間が流れていた。

続いて、アレクサンドルの息子役を演じるシム・ウンギョンとその学校の先生役を演じる斉藤由貴が、父親が精神病院にいる理由について口論する場面が公開された。斉藤はただ厳しい先生といった姿ではなく、時に母親のようなヒステリックな調子でシム・ウンギョンに、社会の不条理さや哀しみを説く。また、そんな斉藤の様子に対してシム・ウンギョンの子どもらしい純粋無垢な演技のコントラストが際立っていた。良い子にしている正義と、偽らない正義の間で揺れるふたりの姿は、とてもパワフルでドラマチックであった。

その後、小手伸也が演じる精神病院の医師とアレクサンドルの診察場面が行われた。バイオリンを優雅に構え、回りくどい言い回しをする鼻持ちならないスノッブであり、どこかチャーミングな小手の姿にはウィル・タケットもニヤニヤが隠せない。不条理な診察が続き怒り心頭の堤に対して、ひらりとかわすような小気味いいユーモアを交える小手の演技を見たウィル・タケットは、「その演技にあわせた特別な照明を仕込むことにしよう」と発案。稽古場には驚きと笑いが溢れた。

舞台はふたりのアレクサンドル・イワノフの場面を軸に、シームレスに登場人物や場面が変わっていく。ウィル・タケットは、そのような展開をオーディションによって選ばれたアンサンブルのさりげないダンサブルな振る舞いで、イマジネーション豊かに膨らませる。

 

今回の稽古場取材では、まだオーケストラが入っていなかったが、本番では、魅力的な音楽の旋律やリズムが入り、今以上に力強く物哀しい場面がいくつも立ち上がるのだろう。演出家と出演者の風通しの良いやりとりを見ていて、より一層本番が楽しみになった。演者とオーケストラによって織りなされる、「自由」を巡る物語を、ぜひ劇場で体験してほしい。

 

文/大宮ガスト