M&Oplays プロデュース『二度目の夏』岩松了・東出昌大インタビュー

岩松了の作・演出による舞台『二度目の夏』が7/20(土)から東京・下北沢の本多劇場で上演される。
本公演はM&Oplaysと岩松了が定期的に行なっているプロデュース公演の最新作で、岩松による書き下ろしの新作となり、湖畔の別荘を舞台に、ある夫婦と夫の親友、彼らの周りの男女が繰り広げる「嫉妬」を巡る物語が描かれる。
主演を務めるのは、昨年、舞台『豊饒の海』でも俳優として高い評価を得た東出昌大。裕福な家庭で何不自由なく育ち、美しい妻と暮らす反面、やがて嫉妬という自らの感情に押しつぶされ、追い詰められ壊れゆく主人公を演じる。上演にあたり、岩松了と東出昌大に作品にかける意気込みを語ってもらった。


■三度目の正直、地に足が着いた芝居を

――東出さんは、2015年に『夜想曲集』で初舞台、昨年は2018 PARCO PRODUCE“三島 × MISHIMA”『豊饒の海』に出演。今回は前作から一年経たずの舞台への出演となります。

東出「『夜想曲集』では小川絵梨子さんという素敵な演出家の方とご一緒させていただいて、『豊饒の海』は僕自身、三島(由紀夫)に対する想い入れが強くありました。今回、三度目の正直というか、岩松さんの作品で、本多劇場での上演ということで、しっかり地に足が着いたお芝居ができればと思っています。人が観て、「全身のしびれが止まらない」というような芝居が高みにある目標ではあるんですが、俳優という職業を一生の仕事として選んだからには、いつかその高みに近づきたいと思うので、今回は本多劇場で気合いを入れて頑張りたいと思います」


――岩松さんから見た東出さんの印象を教えてください。

岩松「僕が初めて東出くんを知ったのは『桐島、部活やめるってよ』(2012年)という映画だったんですが、表情からは窺いしれない、“何を考えているんだろう?”という雰囲気がすごく印象に残っていて。他の作品でも、簡単に方向付けしない芝居をする人だな、とスケールが大きく感じましたね。そういった表情や姿から中身が窺えないところに僕がトライしていく、という感じになりそうですね」


――東出さんは岩松さんの作品について、どういう印象をお持ちですか?

東出「俳優の間では、岩松さんのお芝居は“稽古の段階でも何回もお芝居を繰り返す”と言われていて、そういうことも含めて単純に体力が必要なことなので、“気合いと体力”以外の何物でもないですね。先日岩松さんとお話をしたときに、『舞台上で“1”表現しようとすると“1”にしかならないけど、“こう見てほしい”というのを排して、“0”で存在すると観客は“100”も“200”も想像できる』とおっしゃっていて。以前、別の映像の演出家の方に、「怒っているからといって、怒っている顔をしないでください」と言われたことがあるんですが、そこに(感情が)存在していることに間違いはないんだけれど、それを表現するとなると“丁寧すぎる”というか……。そういう表現をしない舞台上でのお芝居ってどうなるんだろう?と、自分がその世界に没入できるのが今からたのしみですね」


■“戦友”との7年ぶりの共演

――太賀さんとは映画『桐島、部活やめるってよ』以来、7年ぶりの共演ですね。

東出「太賀とは年に一回飲むか飲まないかという間柄ですが、彼の出ている舞台や映画、ドラマはいつも拝見していて、素敵な役者だなと思っています。不真面目なところがあるのも好きですね(笑)。でも、基本的に熱い人で、僕のデビューから知っている気心の知れた仲でもあるので、今回も腹を割って話し合いながら全力で作っていける―、そういう“戦友”であることは確約されているので、彼との共演は非常にたのしみですね」

岩松「太賀と友達だっていうことは僕にとってもうれしいことですね。二人が先輩後輩の間柄で、太賀の方が可愛がってる弟分という役どころなので。彼は体の大きさも弟っぽい体つきなんですよね」


■「嫉妬」という言葉を利用して、違う一面を描きたい

――今回、「嫉妬」という言葉がキーワードになっていますが……。

岩松「嫉妬というと、憎しみ、愛憎の“憎”の方のイメージがありますが、実は“愛情の方に近いもの”なんじゃないか―、嫉妬という言葉を利用して、違う一面を見せられるんじゃないかと思ったんです。東出さんは黙って立っているときに、“何を考えているんだろう?”と感じさせる佇まいの人。最初から、余計な芝居が恥ずかしい、と思っている人だと思うので、嫉妬というものを東出さんに当てはめたときに、ただ単に嫉妬ということにはならないだろうな、と感じています」


――東出さんにとって「嫉妬」のイメージは?

東出「往々にして、人を愛すること、友人への愛、見得など、“自己愛”という言葉に帰結する部分が非常に多いな、と思っていますね。自己愛でした、チャンチャン。で終わる壮大なストーリーもあるし、自己愛の中にも、本人が気が狂った先に本当に人を愛していた、ということもあると思うので……。そういうことを悶々と考える日々が好きなんです(笑)」


――今の東出さんのお言葉を聞いていかがですか?

岩松「深夜に東出さんが落語の話をやっている番組(「落語ディーパー!」NHK Eテレ)を見て、三島が好きなのは以前から聞いていたんですが、けっこう振り幅があるな、と思って。一つのことに対してわりと深く入っていく人なのかなと思いましたね。役者の質として、こだわりの強さが感じられて。落語と三島でしょ?「落語の人」と「三島の人」って別人っぽいじゃないですか(笑)」


―― 一同(笑) 。

岩松「別人が二人いる、みたいな感じが、表情がよくわからない部分と僕の中では連動するんですよね」

東出「僕は元々ねじ曲がった人間性なので(笑)、だから三島が好きという部分もあると思いますね」


――具体的に、どんなところがねじ曲がっているんでしょうか(笑)。

東出「具体的にですか?(笑)そうですね……この仕事をする以前から、超壮大なアクションエンターテイメントというものよりも、わりとどんよりとして、見終わったあとに「なんじゃこりゃ」ってなるけれど、心に残る作品が好き、というところがあって。読む本もそういう作品が多いですね。岩松さんの好きなものと僕の好きなものは近いところがあると思っているので、この感覚をもっと一緒に、ぐるぐるにして一本になれば、岩松さんの舞台にしっかり立てると思うので、その作業がたのしみですね」


――今作でも、東出さんはねじ曲がった役どころなのでしょうか。

岩松「ねじ曲がっているけれど、表立ってねじ曲がってはいないでしょうね。僕は女の子は表立ってねじ曲がっている子が好きなんですけど(笑)、男はわりと構えている人が多いんじゃないですかね」

 

■「男同士の中に漂うものの中で泳ぐ女」

――“ある夫婦と夫の親友”の関係性が描かれるとのことですが、岩松さんにとって「夫婦」を描く面白さはどんなところに感じますか?

岩松「いろんなことが表立たないところに面白みがあるんじゃないですかね。普段「お茶」とか「お風呂」とか、そういう会話しかしないのに、10年後にいきなり殺し合いするとか(笑)。水面下でいろんなものが蓄積していく面白さがありますね。あと、知恵をはたらかせ始めますよね。“視線を交わさない”とか。家の中で、今日何があった?ってまともに話し合ってたら疲れるでしょ。そういうことを人は学んでいくんですよね、夫婦をやっていると」


――敢えて向き合わないことで、夫婦という関係性が継続していく、ということでしょうか。

岩松「そうですね。だいたい、一緒にいる必然性がない二人が一緒にいるわけですから。本人の中に“ある”と思っているだけで、全く必然性ないでしょ?他人に決められないことで、本人たちが決めているだけだから」


――では、「男と男」の関係についてはどうですか?

岩松「わりと簡単になりがちなのは、“上下関係”ですよね。先輩と後輩、上司と部下、という。部下であることが愛情に近い感じがあったりするというか。従う、ということは男の節操だったり、ややもすれば色気だったり……」


――今回描かれるのはそういった関係性のお話ですか?

岩松「そうですね。軍隊みたいな上下関係ではないですけど、男同士の中に漂うものの中で泳ぐ女ー、みたいな感じになればと思っています」


――東出さんは前作の『豊饒の海』で高い評価を得られましたが、今、東出さんにとって“舞台”のお仕事はどんな位置付けですか?

東出「(舞台を)やりたいとは思います。ただ、『豊饒の海』の時も、毎公演始まる前に手の汗がすごくて、毎日“行きたくないな~”って思っていました(笑)。今回の舞台出演のお話をいただいたときも“うわ~俺、また夏にやるのか~~!”って思っていたのを覚えています(笑)。でも、舞台の仕事は続けていきたいですし、『豊饒の海』も好きでしたが、せっかくやるからにはもっといいものにしたいと思っているので、頑張りたいと思います」


――それでは最後に、お客様へメッセージをお願いします。

岩松「おもしろくなるので、観に来てください!」

東出「よかったね、で単純に終わるような作品にはならないと思います。怖気や震えを感じる作品になればいいですね。ちょうど上演が真夏なので、涼みながら怖いものを観に来ていただければ、いい夏の夜をお過ごしいただけるんじゃないかと思います」

 

インタビュー・文/古内かほ
写真/ローソンチケット