舞台『+GOLD FISH (プラスゴールドフィッシュ)』 松田凌・神永圭佑インタビュー

演出家・西田大輔が描く本格派ミステリ作品第二弾となる舞台『+GOLD FISH (プラスゴールドフィッシュ)』が5/10(金)より東京・紀伊國屋ホールにて上演される。
イギリスの片田舎にある古い洋館に集まった12人の男女が「その本当の名前を知った時に過去を振り返ることができる」と言われる魚《オンリーシルバーフィッシュ》を巡り、関係性や人間性を浮き彫りにさせていくワンシチュエーション会話劇。
2018年1月に紀伊國屋ホールで舞台版が上演され、同年11/24(土)に映画が公開となった映画&舞台の連動プロジェクト『ONLY SILVER FISH(オンリーシルバーフィッシュ)』のもう一つのお話だ。
『ONLY SILVER FISH』でも主演を務めた松田凌と、舞台・映像問わず活躍中の神永圭佑にインタビュー。3度目の共演となる気心の知れた彼らの軽快な会話から伝わる信頼と、熱い意気込みをお届けする。


―― 脚本を読んだ感想をお聞かせください。

松田「面白かったです! まだ体現していないですけど、小説を読んでいるような感覚で読み進めていました。想像できる範囲だけでもこんなに面白いんだなと思って、期待感が高まりました」

神永「元々ミステリーモノが好きで小説もよく読むのですが、“ザ・ミステリー”の中に面白い要素やドロッとした関係性などが組み込まれていて、舞台でお客様が見たらいろいろな感情が渦巻くんだろうなという想像が生まれました」


―― “ミステリーモノ”ならではの苦労ポイント、現時点で思う役作りへの難しさなどは?

松田「“ミステリーモノ”の難しさは、自分たちの一挙一動次第で物語が変わってしまうところですね。同時にそうやって変えていける自由さもある気がするので、脚本・演出の西田大輔さんがその配分や指針を握る中、自分たちでも作っていけたらなとは思います。そうすることでミスリードや伏線も生まれていくのではないかと考えています」

神永「僕が演じるペイトンという役は、《オンリーシルバーフィッシュ》の名を求めてやってきたアーシュラ(演:高柳明音(SKE48)※友情出演)の付添人として洋館に来ている人なので、個性豊かな役者さんたちが揃う中でどうやってこの役を演じていこうかということが課題ですね。本心が見えないような人という印象も受けたので、掴みどころがない人物として演じていけたらと思います」

松田「ペイトン役、圭佑がピッタリだなと思ったよ。ミステリーは伏線が必要になってくるし、“容疑者”的な人って重要じゃない? お話の結果的に白だったという人も“この白紙の中でお客様にどう想像してもらえたのか”が大事になると思うから。これまで共演させてもらったイメージで、圭佑は影が似合うと思っているんですよ」

神永「なんで笑いながら言うの?(笑)」

松田「ちょっと恥ずかしい言い方になっちゃったかもしれないと思って(笑)。でも本当に、役の奥にある影をちゃんと背負える役者さんだと圭佑のことを思っていて、それが僕の好きなところでもあるんです。だから不気味さとか、得体の知れない感じのあるペイトン役はピッタリだと思います」

神永「僕も実は、脚本を読んでいてマーティズは凌ちゃんだな~と思っていました」

松田「自分でもマーティズは性格的に近い部分を感じる(笑)。松田凌が出過ぎないようにしたいですね。圭佑にも“それ、凌ちゃんじゃん”とツッコまれないように気をつけないと!」


―― おふたりの初共演は5年前となりますが、その頃の印象や今見るお互いについてお聞かせいただけますか?

松田「『美女と魔物のバッティングセンター』(2014年)で初共演した時、圭佑はまだ十代だったのですが、当初からものすごく頼りがいがある、大人びている……おっさん?」

神永「間違いない(笑)」

松田「悟りを開いているみたいなところがある人でした(笑)。『男水!』(2017年)の時は弾けている役でしたけど、それでも何かと頼りになる感じで。年下であることを感じない安心感があるので、今回も共演者の中に名前を見つけた時は嬉しかったです」

神永「もう、お腹いっぱいです……!(笑)」

松田「まだまだ。胃もたれするぐらいになって帰ってもらう気でいるから!」

神永「凌ちゃんとは3度目の共演となりますけど、僕の中で“一番顔がキレイな役者”といえば松田凌なんですよ」

松田「えっ! うれしい!!」

神永「実は共演前に、出演されていたミュージカル『薄桜鬼』も観劇していて。僕の前を通りかかった瞬間“めっちゃ顔キレイ……!”って思っていたんです。スタッフさんとか、周りの人たちも言いますもん。“カッコイイ・カワイイ・キレイ”を全部持ち合わせている俳優さんだって」

松田「初耳なんだけど!? 今日、僕は命を落とすのかな……」

神永「(笑)。それでいて変な表情とかも思いっきりできる人ですし、格好付けないのがすごい。過去共演した2作品とも凌ちゃんが座長だったので、僕からも頼りがいを感じていました。面倒見も良くて、座長として背中で引っ張りつつ年下のこともよく見てくださる方。僕から言うのは生意気な言葉になってしまうけど、しっかりした方という印象は変わらないです」

松田「今日、良い対談ですね!(笑)」


―― 安心の信頼関係にあるおふたりはもちろん、豪華で濃いキャストが顔を揃えています。共演を特に楽しみにしている方はいらっしゃいますか?

松田「粟根まことさんは、自分が役者になる前から劇団☆新感線でずっと見てきた方なので、やっぱり胸が熱くなりますね。年上の方が多いので、成熟された役者さんがどういった掛け合いをされるのかドキドキしますし、すごく良いものを与えてくださるだろうな、という期待感はすごく強いです。緊張しますけど(笑)」

神永「僕はほとんど始めましての方ばかりなので……。男性キャストの中で言うと最年少キャスト。最近、別現場で初めて上から数えた方が早くなって、“うわー嫌だ!”と思っていたところなので、そういう意味では今回、初心に帰れる気分です。ガムシャラにやっていきます!」

松田「前回の時、(西田)大輔さんの脳裏を読んでいくような探り合いが、作品にすごく良い作用を生んでいた気がするんだよね。大輔さんといえば、プロデューサーさん曰く“人柄のカリスマ”で、さらにいえば“詐欺師”だから(笑)。役者同士でも演技の手札の切り合いをしていたようなところが緊迫感につながって、リアル感を持たせてくれていたと思う」

神永「なるほど……。そうなると、あんまり自分の内をさらけ出さない方が本番に活きそうですね。役柄も含めて隠す部分というか、自分も“詐欺師”になった方がいいのかな(笑)」

松田「これはいやらしい現場になりそうですねー!」


―― (笑)。ちなみに神永さんは、第一弾作品の『ONLY SILVER FISH』はご覧になりましたか?

神永「映画はこれから見ようと思っています。でも何も知らない状態でこの作品に飛び込みたいという気持ちもありますし、迷っています」

松田「見ても見なくてもいいと思うし、どちらにしても良い影響しかないと思うよ。《オンリーシルバーフィッシュ》が出てくるところや《洋館》という場所は共通しているけど、物語として重なる部分はないから。それはお客様も同じで、第一弾の舞台や映画を知ってから本作を観劇しても、今回の舞台から入っても面白いと思います。時系列としては本作の方が先なので、『+ GOLD FISH』を見ると、より『ONLY SILVER FISH』も面白く感じられるかもしれないですね」


―― 本作のキーとなる《オンリーシルバーフィッシュ》にちなんで「過去に戻れるとしたら、いつがいい?」という質問をさせていただこうと思っていたのですが、もしかして松田さんは……。

松田「はい。前作の取材時に30回くらい振り返りました(笑)。でも、もしかしたら今日もご質問いただくかもと思って、用意してきました!」

神永「おお!」

松田「僕……実は今日ものすごくお腹の調子が悪いので、3日前くらいに戻って自分自身に“お腹に気をつけろよ”と言いたい」

神永「(爆笑)」

松田「こんな程度ですみません! 圭佑、僕の分まで深い話をお願い(笑)」

神永「ええ~! でも戻りたい過去……あんまりないんですよね。失敗したことは仕事もプライベートも含め山のようにありますけど、そこで失敗していなかったら学ぶことも出来ていないでしょうし。ご迷惑お掛けした方もたくさんいらっしゃいますけど、その時に学ぶことは絶対に必要だったと思うので、僕は振り返らないです!」

松田「今日、お前が一緒で良かったよ! 僕は30回くらい振り絞って答えたけど、そんな完璧な答え出てこなかった。ああ、最初に質問された時に戻りたい…振り返りたい……」

神永「(笑)」


―― 良いオチがつくご回答をありがとうございました!(笑) 最後にお客様にメッセージをお願い致します。

神永「ミステリー作品への舞台出演自体が初めてになりますので、自分の中で楽しみな気持ちがたくさんあります。大先輩がたくさんいらっしゃる中、自分がどう仕事ができるのか現段階から考えて、初日には先輩方に負けないようなお芝居をしていけるように頑張っていきます。お楽しみに!」

松田「今まで感じたことのないような気持ちをお持ち帰りいただけるのではないかと思える作品ですので、“飽きない”ということは確約できるのではないかと思います。先程まで“振り返る”という言葉を便利語のように使ってしまいましたが(笑)、上演期間中は生のお芝居を“振り返る”ようにもう一度観ていただくこともできますので、ぜひ何度も観に来ていただけたらうれしく思います。劇場でお待ちしております」


―― ありがとうございました! 公演を楽しみにしています。

 

インタビュー・文/片桐ユウ