『お気に召すまま』坂口健太郎 インタビュー

7/30(火)~8/18(日)に、東京芸術劇場 プレイハウスにてウィリアム・シェイクスピアの恋愛喜劇『お気に召すまま』が熊林弘高の演出で上演される。出演者は満島ひかり、坂口健太郎、満島真之介、温水洋一、中村蒼、中嶋朋子ほか。

‘16年に熊林演出の舞台『かもめ』で初舞台を踏み、今作が3年ぶり2度目の舞台出演となるオーランド役・坂口健太郎に話を聞いた。

 

――3年前に『かもめ』を経験し、なぜ今回2度目の舞台出演を決めたのか教えてください。

坂口「実は『かもめ』で初めて舞台に出させてもらったときも、『自分は舞台に立っている』『舞台を一本やった』という感覚ではあまりなくて。“舞台”というよりは、“熊林作品”という感じでした。今回も熊林さんが演出をされる舞台だからやってみたいと思いました」
 

――では、舞台2作目だからどう、という感じではない?

坂口「でも1作目って『何も知らないから飛び込もう』みたいな感覚でいけるから負荷もなかったんですけど。2作目はもっともっと悩むだろうし、もっともっと深くなるだろうなっていうことは、なんとなく思っています。だから初めてのときより今回のほうが『どうなるんだろう』という感覚がありますね。今はまだ作品としても、自分自身としても、どうなるのかが予知ができない。
僕は普段から舞台をやっていないので、“舞台は自分の年齢やキャリアや精神状態のタイミングがすごくいい瞬間にやるもの”というイメージがどこかにあって。だからきっと『お気に召すまま』という作品を、このタイミングで僕がやることにはすごく意味があると思っています。そういう意味でも『どうなるんだろう』と思いますね」
 

――坂口さんならではの感覚な気がします。

坂口「なんか僕も不思議な感じなんですけどね。“今の僕ができるオーランド”は探していきたいなと思っています」
 

――オーランドはどんな役だと思われますか?

坂口「どうだろう。でも、作品用の写真撮影をしているときに熊林さんから『両性(男性・女性)を持っていてほしい』と言われて、これはヒントになるなと思いました。あとは『オーランドはナルシズムの塊みたいな子だよね~』とも言っていて。ナルシズムって内面的な話ですし、『お気に召すまま』はもしかしたら人間の内側の話なのかなって。ネガティブという意味ではなく、人が表面に出さずに隠すような感情がうずまいていくような話なのかなって。そういうことはなんとなく思いました。人間には汚い部分もあるし、整っているものが必ずしも美しいわけじゃないですしね。そういう内側の感覚を出していけたら、というふうには考えています」
 

――撮影のやりとりからもそうやって膨らんでいくんですね。

坂口「そうですね。今は、こうやって話していることが全てオーランドの材料になってくると思います。この取材で僕が話している言葉だって、オーランドという役のエサになっているのだと思いますよ」

――坂口さんは普段はどういうふうに役作りされるのですか?

坂口「台本を読んでみた瞬間から、私生活に役が存在し始めるというか。そこからの一挙手一投足がすべて役につながっていくような感じです」
 

――役が存在する。

坂口「はい。もちろん台詞の内容を理解することも大事だと思うのですが、その役の存在をずっと頭の中に留めておく作業っていうのがもしかしたら一番大事なのかなって。自分の役作りにつながっていると思いますね。風呂に入ってても、ご飯を食べてても、お酒飲んでても、どこかに(役が)いる。感覚的な話かもしれないですけど、なんとなく頭の中に置いておくことは役作りで一番大事にしてるかもしれないです。僕はものごとに対して結論を出したくないというか。決めつけたくない人で。曖昧なままが好きだったりするんですよ」
 

――役をクリアに際立たせるというよりは、役とだんだん溶け合っていくみたいな感覚なのでしょうか?

坂口「溶け合いたいなと思います。でも僕は、お芝居は嘘だとも思っていて。リアルに極限まで近づけるんだったらドキュメントで撮ればいいと思うんですよ。100%嘘でも役に近づいていくことはできて、その近づいていく作業が一番美しいんじゃないかなって。だから今回も、自分がオーランドに近づいていく作業を大事にしたいなと思います」
 

――役をつくるうえで演出の熊林さんはどういった存在になるのですか?

坂口「例えばオーランドにも、台本に書かれていない時間があるわけじゃないですか。本を読んだり人と話したり。そういう時間でオーランドが会うすべての人物を担ってくれるような存在だと思います。台本に書かれていない時間を考えることが実はすごく大事なんだなということは、熊林さんの演出を受けて思ったことなんです。それがあるから、台本に書かれていることがわかるんですよね」

――今回、オーランドと恋をするロザリンドを演じる満島ひかりさんは、『かもめ』に続いての共演ですね。

坂口「はい、『かもめ』のときも楽しかったです。嘘がないというか、役と満島さんが重なるというか。満島さんなんだけどニーナ(『かもめ』での役名)だし、ニーナなんだけどやっぱり満島さんで。それも舞台上でお芝居をしているときだけじゃなくて、そうなっていっているような感じがあって。なんかそういう女優さんだなということはすごく思いました」
 

――共演で楽しみなことはなんですか?

坂口「物語のなかで、ロザリンドに恋をしたオーランドは、男装したロザリンドだと知らず、森で出会った男にアプローチの練習相手をしてもらったりするんですけど。きっとオーランドは、男装のロザリンドにも恋をしていたんだろうなと、僕は思っているんですよ。そういうことを満島さんと話すのが楽しみです。楽しいだろうなって」
 

――本番、楽しみにしています。

坂口「僕も楽しみです。怖さもありますけどね。だけど、うすーくでも怖さがあるからこそ知りたくなるんだと思うから。“いい怖さ”を持ち続けながらやっていきたいです」

 

インタビュー・文/中川實穗