「レイモンド・カーヴァーの世界」 矢崎広さんインタビュー

村上春樹氏が翻訳して日本に紹介してきた、アメリカの小説家・詩人である、レイモンド・カーヴァー。
演出の谷 賢一が選りすぐったレイモンド・カーヴァーの短編小説を、実力派として定評のある俳優が朗読する「リーディング・シアター レイモンド・カーヴァーの世界」が、兵庫と東京で上演される。

今回の出演者の中では最年少の30代で「収集」「菓子袋」をリーディングする矢崎広が大阪で取材会を行った。


――台本を読まれた感想は?

「不思議な世界のお話です。「レイモンド・カーヴァーの世界」というタイトルの通り、レイモンド・カーヴァーの頭の中にもぐりこんだような気になりました。読み進めるときは重たい扉を開けるようだったんですけど、入ってしまったら抜け出せないというか、出るころには虜になっているようなそういった感じです。内容は劇場で体感していただきたいのですが、「菓子袋」と「収集」の2つの作品は、どちらも違う世界観で、でもレイモンド・カーヴァーの世界という感じがすごくあって。今回初めてレイモンド・カーヴァーという小説家を知ったのですが、今は虜です。なので、とても楽しみだなという印象を受けました」


――どんなところに惹かれたのでしょうか?

「想像を膨らませる言葉がたくさんあります。セリフにも「このセリフは裏があるのか」と、読み手の想像をどんどん膨らませていって、その想像をいったいどうするつもりなんだろう?というくらい、本当に読み手に委ねられているような文章でした。この話ってこうかな?ああかな?と自分でもできるし、周りの人とも話したくなるようなところですかね」


――声に出すにあたってどんなところを意識していきたいですか?

「朗読劇が最近好きで。やる前は一体どういう感じなんだろう、舞台でもない読むだけでもない、どういうパフォーマンスになるんだろうなと思っていました。実際には、お客様との共有の時間がすごくあり、役者が読んでお客様と一緒に想像を膨らましながら物語を作るという魅力にとてもハマっています。今回のレイモンド・カーヴァーの世界では、どこか生っぽく、不思議な所はちょっと誇張していったら、なにかレイモンド・カーヴァーが伝えたいところに近付けるのではないかというのが、稽古に入る前の僕の構想です」


――「収集」と「菓子袋」は、矢崎さんのために選ばれた作品とのことですが

「僕の年齢の人物が読んでも、とても面白いなと思いました。こんなに大先輩に囲まれて、光栄というか緊張の面持ちではあるんですけど、若い世代の方々が僕を通してレイモンド・カーヴァーの世界に入っていってほしいです。「菓子袋」は父と息子の話ですし、僕の年齢設定の方がありなんではないかと思います」


――村上春樹さんの訳詞については

「「レイモンド・カーヴァーの世界」も、レイモンド・カーヴァーの言葉ですけど、訳をしているのは村上春樹さんなので、すごい人とすごい人が二重に複雑になって面白くはいってくるというイメージですね。小説もですが、訳をしている村上春樹さんも素敵だなと思います。村上春樹さんの作った言葉で、演じるとか、パフォーマンスをするというのは、光栄なことなので楽しみですね。想像の先を行くような言葉がたくさんあるのが魅力だなと思います」


――朗読劇には過去にも出られていますが、今回は一人で読まれるのはいかがですか?

「今までは相手がいたので、相手の反応を受けて、また自分が投げて反応を楽しんでいたのですが、今回は一人で読むということで僕にとっての挑戦にもなりますし、作りこまないといけないなと、背筋を伸ばしました。演出の谷さんは、役者に合わせて演出をしてくださると思うので、谷さんとお話ししながら作り込むことになると思います」


――出演する作品を選ぶときのポイントは?

「自分の中で血が騒いだらという感じでしょうか。演じたい、おもしろい、と自分で信じられるものがあれば、ぜひやってみたいと思います。プラス今の自分はもうどんな役を頂いても「やってやるぞ!」と。こうやってたくさん色んな役、責任が強い役も増えてきていますので、自分よりも大きい役がきたら、そこに合わせて自分も大きくなっていかないといけないと思っています。自分を磨くということを一生懸命しながら、役に追い付け追い越せではないですけど、そんなつもりでやっています」


――今回の作品でいうと

「レイモンド・カーヴァーのファンて実はめちゃくちゃいるっていうのを最近知って。普段連絡がこない人からも「頑張ってね!」と連絡がきて、「社交辞令じゃなく、本当に頑張ってね!!」と。思い入れの強い方もたくさんいらっしゃるので、そこの方たちにも応えていきたいなと。朗読劇というパフォーマンス、エンタテインメントを通して説得力を増していけたらと思います」


――演出の谷さんの印象は?

「「ETERNAL CHIKAMATSU」という作品の脚本が谷さんで、それ以来です。やっと谷さんの演出作に出演できるので、谷さんとおもしろいものを作れたらと思います。演出家としての谷さんは初めてなので、他の方への演出も見れるし、自分も演出を受けれるし、楽しみだなと思います」


――今後どのようなことを糧にして、どんな俳優になっていきたいですか?

「全ての作品が糧です。この作品は黒歴史だなというのは一切なくて、一つずつやってきたことが自分の積み上げになっていますし、それはこれからもきっとそうだなと思います。僕の想いでしかないですけど、2.5次元、ミュージカル、音楽劇、ストレートプレイ、映画、ドラマ、色んなものがありますが、分け隔てなく、境界線がないものになっていければな、という想いもあるので、僕自身も臨み方としては、どの作品に入っても全部一緒です。2.5次元でもミュージカルでも準備の仕方も一緒なので、興味があればなんでもやりますし、血が騒ぐという話をしましたが、どんなことにも挑戦していきたいと思います」