2019年劇団☆新感線39興行・夏秋公演 いのうえ歌舞伎<亞>alternative 『けむりの軍団』古田新太 インタビュー

主演かつ“番頭”?若手が慕う先輩・古田新太参上


結成39周年にちなんだ“39(サンキュー)興行”を決行中の劇団☆新感線。夏秋公演は、いのうえ歌舞伎《亞alternative(オルタナティブ=もうひとつの)》と銘打った、その名も『けむりの軍団』。脚本は2016年の『乱鶯』に続き新感線に書き下ろすのは二度目となる、倉持裕が手がけることになった。演出はもちろん劇団主宰・いのうえひでのりだ。
主演の古田新太は、映画やドラマ、外部公演と切れ目なく大忙しだが、自らが看板を務める劇団☆新感線の稽古場では誰よりも、常に楽しげでイキイキとしているように見える。ムードメーカーでありリーダー格、劇団内外の後輩たちに慕われる先輩だ。

古田「劇団公演のときは、ただただ派手で面白いと思っていただきたいな、という思いでやっているだけですけどね。今回は特に“オルタナティブ”となってはいますが、それはあくまで主宰(いのうえ)が言っているだけで。オイラは劇団外でオルタナティブな公演をやっているから、劇団公演に別にオルタナティブは求めていないんです(笑)。昔から言っていますが、本当は劇団ではずっとうんことかおしっことかをネタに、ゲラゲラ笑えるミュージカルをやりたいだけなんですよ。新感線はいつもバカだね、また一緒じゃねえかって言われていたい(笑)。結局、信頼できる後輩たちと真剣にふざけたいから、劇団に帰るみたいなところもあります。共通言語がある劇団員、アンサンブル、ダンサー、アクション含めてみんなもう何十年も一緒にやっている連中ばかり。こうきたらこうでしょ、トンって床を鳴らしたら一斉ジャンプ、阿吽の呼吸でわかるメンツだから。プロデュース公演と違って、1からみんなを懐柔する作業がないですからね。そういう意味では手っ取り早いんです、劇団公演は」


今回の『けむりの軍団』には早乙女太一、清野菜名、須賀健太という新感線経験者の若手がゲスト参加し、殺陣にアクションにと大暴れする予定になっている。
20代の彼ら3人には「ぜひ卑怯な手を覚えて帰ってほしいですね!」と古田はニヤリ。

古田「たとえば、ワンブレスで客席の空気って変えられるんです。セリフ、言葉をどこの文字で区切るか。これがうまい具合にハマれば、全然面白くないセリフでも面白く聞こえたりする。若いヤツらは一生懸命セリフの持つ意味を伝えようとするけど、実はそうやって読み方を変えるだけで客が笑う場合もあるんだよ、ということをオイラは教えてあげたいんです。菜名には『髑髏城の七人』Season花で共演した時に『ここ、一拍待ってみたら?』って教えたら、その通りに笑いが来たから『どうしてなんですか?』って驚いていました。そういうコツみたいなものを、オイラは“腐れテクニック”と呼んでいます(笑)」

新感線に限らず、舞台経験が比較的少ない若手俳優と共演することも多い古田。彼ら若手を鍛え、育てようとする責任感みたいなものが古田にはありそうな気がする。

古田「新感線のゲストも、映像から出てきた人気者の人たちが多いですから。そういう人たちに『二度と舞台をやりたくない』なんて思ってほしくない。劇団の“番頭”としては、ウチの旅館のリピーターになっていただきたいし(笑)。我ながら“番頭”としてはいい仕事をするほうだと思いますよ。蜷川(幸雄)さんのところや野田(秀樹)さんのカンパニーではいつも『ホント古田がいると便利だなあ』って言われていますから(笑)」


主役をやりながらも集団をまとめる“番頭”役、それを古田が務めることで確かにチームワークは一気に良くなりそうだ。そして今度の『けむりの軍団』はというと、劇団公演とはいえ古田が望む方向のゲラゲラ笑えるミュージカルではなく、劇団員たちの実年齢相応の本格的な時代劇。倉持脚本ならではの会話の妙があり、ちょっとひねりのある群像劇としても楽しめるはず。

古田「今回の芝居は、大勢でやる落語みたいなもの。落語家さんがこれを落語として語ったら、きっとめちゃくちゃ面白くなるだろうなとも思う。その視点で考えると卑怯ですよね、ひとりで語らずに、会話の妙や間で笑いをとる部分を、大勢の人間を使って演じることができるわけだから。そんななかで、太一も菜名も健太も、当然ながら真面目にやってもらって、大真面目にやったらこんなに笑いが来ちゃった!みたいなことを経験してもらえればと思っています。そうすればお客さんも楽しいし、我々も楽しくなるはずですから」


笑いあり、歌あり、踊りあり、チャンバラありの、新感線お得意の痛快時代劇が堪能できそうだ。この夏、この秋、スカッとご陽気にエンターテインメントを味わいたければ、ぜひとも主役兼、古田番頭が待つ、劇場へ!

 

インタビュー・文/田中里津子
Photo/山口真由子

 

※構成/月刊ローチケ編集部 6月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります


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【プロフィール】
古田新太

■フルタ アラタ ’65年、兵庫県出身。’84年に劇団☆新感線に参加。以降も劇団、メディアの垣根を越えて精力的に活動。