“デキる”のみをものさしに、今後の舞台界を担っていくであろう、注目株の若手俳優をピックアップ。彼らが「デキメン(=デキる男優)」である理由、そして、隠れた本音をロング・インタビューで探る!
【第14回】鈴木勝吾 SHOGO SUZUKI
「サボるな」「もっと!」ということを叩き直されました
Writer’s view
生で目撃する舞台では、「この俳優さん、いま波にノッてるな」という“快進撃”を体感する機会がままあります。現在27歳の鈴木勝吾さんは、まさにその真っ只中にいる人ではないでしょうか。特に2014年の初主演舞台ぐらいからの活躍が目覚しいのですが、さかのぼってそれ以前の映像作品などを見ると、雰囲気も顔つきも大きく違うことに驚かされます。俳優としてだけでなく、人間・鈴木勝吾としても何か転機が? 本番中の多忙な中にお時間をいただき、その真相を探ってきました。
取材・文/武田吏都
――WBB「懲悪バスターズ」東京公演の初日が明けたばかりのタイミングでインタビューをさせていただいています。幕が開いての感触は?
鈴木 もともとWBB(佐野瑞樹、佐野大樹兄弟によるプロデュース公演)を応援してくださっている人たちが初日は特に多いと思うので、温かい中でいい初日が開いたなって感じがありました。コメディなので、笑いにたくさん助けてもらいながら。
――私は初日前の、客席は関係者やマスコミのみのゲネプロで観たのですが、ああいうコメディはお客さんの反応があるかないかで、演じる方の感覚も相当違うでしょうね。
鈴木 もちろん舞台ってこっち側だけが提示するものではないんですけど、特に今回は笑いや間なんかが、こっちの芝居にすごく影響するような作品だなっていうのを改めて感じました。稽古場はお客さんもいないので、こうでいいのかなと思ったこともあったんですけど、演出の(佐野)大樹さんがコメディとしての間だったりテンポだったりをずっと注意して言ってくださっていたんです。それを稽古のときから守っていて。で、実際にお客さんが入って真実味が出たというか、輪郭として見えていたものの中に、中身がちゃんと詰まったかなという感じです。
――鈴木さんが演じているのはアミットという悪霊。といってもおどろおどろしいものではなくて、落ちこぼれのポップなキャラクターですよね。まず、あの作り込んだビジュアルに驚きました。今も指先のマニキュアにアミットの名残がありますが。
鈴木 劇場行って、またちゃんと塗り直そうと思って(笑)。あのビジュアルが決まった段階で、「あ、こういう感じなんだ。じゃあ、こうしよう」っていうのはやっぱり何か自分の中で決まりましたね。「なるほど、なるほど」みたいな。アミットに対してなんとなくのイメージとしてあったものが、「この衣裳でこのメイクってことはこういうことですよね?」って作業に変わったので。要は“悪霊”って存在が最初よくわからなくて、どう人間と違う感じでいようかってことをずっと考えていたんですけど、作り手が描いているものから拾っていく作業が一番近かった。で、何も言われなかったから(笑)、作り手と僕のイメージに、あまりズレはなかったと思っています。
――客席から観ていて、アミットというよりは鈴木さんがすごく“引っ張っていってる”ような印象を受けたんですが、演じている役柄ゆえなのか、意図的なのかが知りたいなと。
鈴木 そうですね、僕が最初にホンを読んだ印象がそれだったので。「うーわ、これ回さなきゃいけない」っていうか。それは最低限の裏の役割で、そこに役としての旨み――甘いでも辛いでも苦いでも、をどう出していくか。どんな作品でも、役割と役柄は絶対あるんですけど、今回はコメディかつこういう役だったので、役割に役柄を乗っけていくことの大変さは、顕著にありました。特に僕はあんまりコメディをやる機会がなかったので、例えて言うなら自分の使っていない筋肉を使ったというか、また新しい演劇に出会ったって感じが一番強いですね。
――コメディをあまりやってこなかったというのはたまたま?
鈴木 避けてきたわけじゃないんですけど、そういう機会がたまたまなかったというか……。僕の中でコメディは、“真剣にやってるから、結果面白い”という感覚です。そういう意味では、今回の作品はド定番の、ベタなヤツですよね。僕は芝居だったり恋愛だったり、ベタっていうのは好きなんですけど、ただ笑いに関してはそうではなかったのかな。やるというチョイスを自分ではしてこなかったから自然と、そういう作品に出会うこともなくて。
――例えば、どういうタイプのコメディが好きな傾向にありますか?
鈴木 西村雅彦さんと近藤芳正さんの「笑の大学」(1996年初演/脚本:三谷幸喜)とか。映像で見たんですけど、あれはめちゃくちゃ面白かったな。あと、大人計画さんとか。なんか面白いことをやるんじゃなくて、面白い人間がいるっていう。面白い人が、面白い話や行動をするんじゃなくて、その人にとって自然なことをやっているのが面白いっていうのが、やっぱり好きかなぁ。
――「結果、コメディでした」ぐらいの。
鈴木 そう! その人にとってはリアルっていう。でも大樹さんが最初に「キャラクター同士がどれだけ会話ができるか」っていうことを言っていたから、今回の作品も結局そうだと思うんですけど。ただ、「マンガっぽくしたい」とも言っていて。“会話をする”っていうのと、アニメ・マンガっぽいことを両立するのが、最初はすごく難しかったですね。完全にエンタメ色の作品を、どう“芝居”に昇華するか。役として1本通っていればいいとか、その場で成立していればいいってことでもなくて。そこが今回、楽しくもあり難しくもあり。だから途中からは「コメディって考えるのやめます」っていうか、アミットとして居ることだけを考えようと思いました。いつもみたいに役のバックボーンを勝手に考えてってというよりは、あの衣裳とメイクであの台詞を言う悪霊という設定だけを忠実にやろうという感じですかね。
――ダンスシーンもふんだんに盛り込まれていますよね。
鈴木 大樹さんの中には今回、派手なエンタメにしたいっていうのがあったみたいで。僕はダンスが得意な方ではないから、ダンスがあるって聞いたときも「うわ、どうしよ。ニガテなんですよ」って反応だったんですけど、今回でダンスに対する考え方が変わりました。今までダンスの正解っていうのがわからなくて、だからただ「できない」って思っていたんですけど、振付師さんというのは役者が役を背負って踊るから面白いということをちゃんとわかって、そこに重きを置いて振りをつけてくれている。つまり、ダンサーさんのように踊る必要はないんだってことが最近わかったんですよね。作品にもよると思いますけど、俺がダンスのある作品に入るときはそういうことなんだなって、ある意味、踏ん切りがついたというか。だから振りを間違えていいとかそういうことじゃなく、与えられたものはもちろん一生懸命やりますけど、きっぱりと「俺のダンスです」っていう(笑)。
WBB「懲悪バスターズ」(2016年) ※写真右
――これから、神戸公演が控えています。関西のお客さんに何かメッセージをいただけますか。
鈴木 普段、東京で仕事をしている人間からすると、地方公演に行けるっていうのが、まずすごくうれしい。特に舞台は観に来ていただかないと観せられないものだから、持っていける、届けられる喜びというものがすごくあるんですよね。その喜びがまた作品力につながるようにと、僕だけじゃなくカンパニーみんなが改めて思っているので、作品を通じてそういう思いを感じていただけるように頑張ります。楽しみにしてください!
WBB「懲悪バスターズ」(2016年)
※5/28・29に新神戸オリエンタル劇場で上演
――鈴木さんは2009年、大学生のときに「侍戦隊シンケンジャー」のシンケングリーン/谷千明役でデビュー。いきなりスーパー戦隊の一員というのは、恵まれたデビューですね。
鈴木 恵まれてます。奇跡でしょうね(笑)。
――そもそも、俳優になろうと思ったきっかけは?
鈴木 単純に、憧れがあったんです。ドラマとか、楽しいじゃないですか。カッコいいじゃないですか(笑)。「ウォーターボーイズ」みたいな青春やりたいし、キムタクみたいにアイスホッケーやって「maybe」とか言いたいし(笑)。
――なかなかのテレビっ子と見ました(笑)。
鈴木 ドラマとか映画とか、映像作品が大好きで。でも最初に言っておくと、芝居が好きってことではないんです。今思うとちょっと異常だなと思うのは、中二病的なところがあったっていうんですかね。「ハリー・ポッター」のふくろう便が実際に届くと思っていたし、「ドラゴンボール」のかめはめ波や気功砲もホントに出せるんじゃないか、みたいな。さすがにこの世界に入ったぐらいのときは、「ハリー・ポッター」は架空の世界で魔法使いはいないってわかってましたけど(笑)、「サンタさんはいる」みたいな感覚はずっとあって。つまり、芝居でその役をやりたいとかじゃなくて、“なりたかった”んですよね。例えば、中学の体育祭では俺がプールサイドでのダンスの振り起こしを全部して、「ウォーターボーイズ」をやったんです。さっきダンスは苦手だとか言いましたけど、あの青春がやりたかったから(笑)。っていうのと、俺が芝居する動機って変わらなくて。絵本の中やテレビの中に飛び込むっていう感覚っていうんですかね。すんごいシンプルです。子供の頃、ごっこ遊びもすごく好きでした。男の子のごっこ遊びなんてあれ、芝居とは思ってないんで。自分のこと、ほんとにヒーローだと思ってますから(笑)。
――「演じる」という言葉が鈴木さんの辞書にはなかったという感じでしょうか。
鈴木 わかりやすいことで言うと、この業界に入ってすぐ、好きでずっと見てたドラマのオーディションを受けに行ったとき、「うわ、そうか。あのドラマって役者がやってるんだ」って思ったんです。いや、さすがに18歳だったから、頭ではわかってるんですよ(笑)。でもやっぱり俺の中のどこかが素直に驚いたんですよね。
――面白いですねえ……。では今うかがった感じだと、どのジャンルをやりたいとか、そういう意志はデビュー当時はなかった?
鈴木 全然。今みたいに舞台をやるようになるとは思ってなかったですし。
――初舞台は、「源氏物語songs大黒摩季~ボクは十二単に恋をする~」(2010年)。そこからコンスタントに舞台に立っていますが、個人的に非常に印象に残ったのが、「ロボ・ロボ」(2014年)のコック900(料理ロボット)役でした。その1本前には初主演舞台となったミュージカル 『薄桜鬼』 風間千景篇(2014年)がありましたし、その付近で何らかの種が蒔かれ、それが芽吹いて、昨年今年の快進撃につながっているのではないか、と勝手に感じていたんです。ズバリ、2014年あたりに何かありましたか?
鈴木 確かに「ロボ・ロボ」での芝居も好評をいただけて、周りからはやっぱり「風間篇」から変わったと言われます。その「風間篇」の前に、去年公開の映画「野良犬はダンスを踊る」を撮っているんですよね。その、窪田将治監督との出会いが大きくて。愛のある方で、「もっと!」「サボるな!」ってことを、僕ら若手に対してすごく教えてくださった。役作りの熱量、角度、深さ……いろんな言い方がありますけど、“人間を作る”ためにそういうことをもっと惜しみなくっていうのを叩き直されたんです。頭ではわかっていたしやっていたけど、“やってたつもり”だったってことに気づいたというか。その後の「風間篇」で目に見えて変わったっていうのは、窪田組で培ったものを存分に使わせてもらって、「『もっと!』ってなんだろう?」というのを探すようになった結果かなと思います。風間はずっとやってきた役で、それまでも別になんとなくやってたわけじゃないけど、原作があってこういう役だという風に作っていて。でも「風間篇」では、「彼の過去に何があって今こうなっているんだろう?」という考え方で、人間を1から作り直していった。でもそうした方が、原作ファンの方に「(原作の)風間に似ましたね」って言われたり。似せたわけではなかったんですけど、風間のことをより理解すればするほど、説得力がある人間がそこにひとつできるという楽しみを感じることができました。
――その「風間篇」は、鈴木さんにとって初の主演舞台。シリーズ1本目から出演しているミュージカル『薄桜鬼』という作品への思い入れも強いと思いますが、主演ということに気負いのようなものはありましたか?
鈴木 気負いはハンパなかったですね。でもだからといって何かしたわけではなかったし、先輩や後輩、スタッフさん、お客さんとかたくさんの人の力があって、ほんとにいろんなもののバランスで1個の作品が成り立っている。そこに、自分がいさせてもらえるんだなって改めて思いました。今かわいがっている後輩って松田凌とか宮崎秋人とか柏木佑介とか「薄桜鬼」のときのメンバーが多いんですけど、「風間篇」のときは松田が「薄桜鬼」を卒業するかどうかというタイミングだったんですよね。でも俺の座長公演だから絶対に出たいとマネージャーさんにも言ってくれて、「出られるんです!」っていうときの喜びとか……。「勝吾くんは勝吾くんらしくやってください。僕らは背中を見て着いていきますから」って、クッサい台詞をちゃんと言ってくれた彼らの青さや思いもすごくうれしかったし。そして本番では、この公演のために、つまりは座長である俺のためにみんながグンッと上がった瞬間を見ました。自分で言うようなことじゃないかもしれないけど……あのとき「風間篇」を応援してくれたファンのために話します。それまで風間という、無冠というかちょっと独特のポジションを全員とマッチアップしながら、自分ではやるべきことを淡々とやってきたと思っていたんですけど、「やってきたことはやっぱり間違ってなかった」って。だから、周りのみんなに座長にしてもらった座長でした。座長だから自分が一番オイシイとかじゃなく、作品のためにちゃんと全うするということを忘れずに人一倍やっていれば周りは見ていてくれて、それが作品力になり、自分の人間力や芝居力にもなるっていうのを如実に感じたのが「風間篇」でした。
ミュージカル 『薄桜鬼』 風間千景 篇(2014年)
©アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会
――そんな「風間篇」を経ての「ロボ・ロボ」。鈴木さんが演じたコック役の何が印象的だったかというと、“明るさ”でした。血の通わないロボットの役なので、明るいといってもそんな単純な話ではないのですが、人間的にもあのままの明るい方なのか、そうではないから演じることができたのかなど、いろいろ想像させられたほどでした。
鈴木 ありがとうございます。演出の(西田)シャトナーさんにも言われましたね。「コックで勝吾くんに出会ったから、『小林少年』をやれた。やれる役者を探してたんだ」って。
――補足しますと、鈴木さんは「ロボ・ロボ」の後に、同じ西田シャトナーさん演出の「小林少年とピストル」(2015年)で主演。明智小五郎の弟子の、小学5年生の少年探偵役でした。言われてみれば、ロボットと少年には根本的に共通する部分がある気がします。
鈴木 小林少年はやっぱり子供だから、心が老いたり渇いたりしわくちゃになった人間よりもピュアというか、シンプルじゃないですか。コックの役作りも、俺の中では本当にシンプルだったんです。台詞を読んでいるとちょっと能天気でずっと笑っているイメージがあったから、ああいう風になりました。悲しくてもなんでもずっと笑っているのがフォーマットであるというか。人間の場合は何重にも複雑なんですけど、コックはロボットだからひとつの目的のためだけに存在していて、一色だった。だからロボットを演じるって、役作りの基礎みたいなところがありましたね。それにどれだけなれるかっていう。また“サボらない”という話になるんですけど(笑)。
「ロボ・ロボ」(2014年)
――「サボるな」という言葉で覚醒をして、ロボットを演じるという基礎に触れ。2014年はある意味、鈴木さんが俳優としての再生をしたタイミングだったのかなと、うかがっていて感じました。
鈴木 そうかもしれないです、うん。
――あと、特筆すべきは“声”ですね。やはりあのスコーンと通る高い声は、特に舞台をやるにあたっては素晴らしい武器だと思います。
鈴木 今でこそわかるのは、楽器としてすごく恵まれているということ。声帯も丈夫だし、高音を出すという意味においては、頭の骨格にも恵まれているんです。歌の先生に「あなたは(頭の骨に)当てれば(高音が)出るんだから」って言われたんですけど、普通はトレーニングしなきゃ出ないし、日本人にはあまりいないって聞きました。
――歌うことは昔からやってきていたんですか?
鈴木 歌うことは大好きでした。音楽の授業でも、楽器は大嫌いだったけど、合唱とかは好き。でもトレーニングは全然してこなかったし、ただ好きなだけで。
――歌う仕事としてはこれまでの集大成、かつこれからの始まりかなと感じたのが、3月のミュージカル「Color of Life」。日本人クリエイターの作った男女2人ミュージカルで、オフ・オフ・ブロードウェイの国際演劇祭で最優秀ミュージカル作品賞などを受賞。それが初めて日本で上演されるという逆輸入的なミュージカルでした。鈴木さんの中には、どんな作品として残っていますか?
鈴木 舞台に立つ人間として、あらゆるものが試された作品だったなっていうのがまずあります。そして、このミュージカルの脚本を書いて演出した石丸さち子さんと出会ったこと、石丸さんのこのホンに出会ったこと、伊藤靖浩さんの音楽に出会ったこと、はねゆりという女優と一緒にできたこと。この4つがすごく思い出深い。まず、ホンと出会ったとき、「すごいホンだ!」と思ったんです。さっき“絵本に飛び込む”と言いましたけど、飛び込みたいなと思う絵本じゃないと、飛び込み方が心のどこかで中途半端になる。でも「Color of Life」のホンからは、本当に飛び込みたくなるきれいな画が見えて。森の中に、淡いブルーから深いブルーまで全部が含まれているような流れの美しい泉があって、その風景の中に、風で水面が波打っていたりたまに鳥が飛んできたりっていう、生の血が流れているようなイメージ。だから読んだとき、「うわ、これやれるんだ! 俺、幸せな人だな」と思いました。
そして稽古に入ってみると、それを書いた石丸さんという人との出会いがあった。“厳しい”とかチンケな言葉では、表現できません。あんなに心血を注いで作品を作る人が今いてくれることがありがたいし、あの作品を生んでくれたことや、とにかく出会えたことに感謝です。
――石丸さんは、蜷川幸雄さんのもとで長く演出助手をされていた方。最近また蜷川さんの演出法がクローズアップされる機会が多いですが、石丸さんの中にもやはり“厳しくも温かい”そのイズムはありますよね。
鈴木 ありますね、きっと。実際、蜷川さんが書かれた「千のナイフ、千の目」という本を石丸さんからいただきました。石丸さんとはまた一緒に仕事がしたいし、あの人に響くような役者になっていきたいっていう、ひとつ目標ができました。そして、パートナーのはねゆりさん。彼女はミュージカル自体初めてだったんですよね。彼女もやっぱり、自分が「もっと!」を感じるかなんだなって話をしてて。「Color of Life」のときは俺も常にそうでしたけど、彼女が変化していくのを一緒に体感していく中で、「やっぱサボれないんだな」ってことを再び思うことができました(苦笑)。もし相手がはねゆりさんじゃなかったら、「俺これぐらいでいいかな」と思ってたかもしれない。……いや、わかんないです。血と肉と涙から生まれてきたような石丸さち子という人が生み出したホンを、あの稽古場であの密度で2人でやってたら、誰でもそうならざるを得ないのかもしれないですけど。でも俺にとっては、それがはねゆりだったっていう。
ミュージカル「Color of Life」(2016年)
――「Color of Life」を機に、本格的なミュージカルも今後の活動の視野に入ってきそうですか?
鈴木 歌うことは大好きなんですよ。でもミュージカルで歌うっていうのは、楽しく気持ちよく歌うってだけじゃなく、ピッチやテンポや息の量……要するに楽器になるようなことだと思うんです。で、楽器を演奏するのは僕、嫌いじゃないですか(笑)。音楽は何かしらの形でやっていきたいんですけど、それがミュージカルなのかは正直わからなくて。ただ、試したい気持ちもある。僕は、“上手い人”より“すごい人”になりたいんです。でもミュージカルはより技術が問われるイメージが、僕の中にあるんですかね。で、練習すれば誰でも上手くなるとは思います。だからこそ、歌好き、芝居好きな俺がミュージカルで試して、上手い下手とはまた違うところで“すごく”なってみたい。そういうシンプルな気持ちはあります。例えばシャトナーさんが「小林少年ができる人を見つけた」と言ってくれたのは、芝居の上手さではない、理由のない何かだったわけですよね。どんな作品でもほんとはそうありたくて、ミュージカルにおいてもそうなれる可能性があるなら、試してみたいです。
――正直な方という印象なので、鈴木さんにとって本当に心が動く、ワクワク、イキイキとできることを続けていってほしいなとも感じます。
鈴木 たぶんそれがないと“すごい”にはならないと思う。イキイキできる裏づけには技術も上手さもあるんですけど、まずそのマインドがないと。ただ、さっき話した蜷川さんの本の中に、「役に立たないのにどうして学校の勉強をしなくちゃいけないの?」って娘さんから聞かれて、「大人だって全部やりたいことをやってるわけじゃない。父さんだって好きな仕事だけしてるわけじゃないぞ」みたいなくだりがあるんです。だからもっと言うと、自分自身がワクワクする作品だけをやるのではなくて、どんな作品でも自分が前のめりになってどんどん面白くして、観に来る人をワクワクさせてあげられるような人になりたいですね。作品でもなんでも、結局は出会いですから。
Q.「イケメン」というフレーズに感じることは?
言われたら、「あざーっす」ってカンジです(笑)。このご時勢、この言葉には皮肉が入っていることもあって難しいんですけど、だからといって「いや、俺は役者です」とかそういうのメンドくさいから、その場合も「あざーっす」だし、本当にいい意味で言ってくれている場合も「あざーっす」。どう来ても、「はい、ありがとうございます」ですね。
Q.「デキメン」が思う「デキメン」
1度ドラマ(「ST 赤と白の捜査ファイル」)でちょっとご一緒させていただいた藤原竜也さん。台詞がめちゃくちゃ長くて専門用語もいっぱいあったんですけど、ドライ(リハーサル)から一切噛まない。一切! すっげーなと思っちゃいました。「サボらない」なんてさんざん言ってるけど、俺はどれだけできてるのかな、なんて。
同世代は考え出すとキリがないんですけど、やっぱり松坂桃李、相葉裕樹、相馬圭祐っていう、シンケンジャーのメンバーになるのかな。“デキメン”だから男子を挙げたけど、女子もそう。それぞれの人たちが僕は大好きすぎて、それぞれに尊敬できるし、憧れてます。同じ俳優としてのライバル心とか悔しさもあった方がいいのかなとも思うけど、負け惜しみでも何でもなくて、彼らにはないんです。今も疲れたときとかに、ファイナルライブツアーのDVDや楽屋裏でプライベートで撮ったビデオを観たり。今振り返るとぬるかったなとも思うけど、ほんとに幸せな時間だったから。僕にとってはやっぱり、帰ってくる場所みたいな感じなんですよね。
Q.「いい俳優」とは?
サボらないことを実践し続けられる人。
俳優に限ったことじゃなく、仕事をする人全部に言えることだと思います。
自分の気持ちにとにかく正直で真っ直ぐ! そしてお芝居が大好き!!
19歳のとき「侍戦隊シンケンジャー」でデビューさせていただき、その後もありがたいことにたくさんの方々との出会い、そして作品との出会いがあり、感謝をいつも忘れずにいられる俳優だと思います。とにかく真っ直ぐなので、物事に対してだけではなく役に対しても、納得できるところまで向き合う一生懸命な俳優です。たくさんの経験を経て、気持ちの面でもいろいろ変わってきたような気がします。
この先も初心を忘れずにいろいろな経験をして、様々な作品に声を掛けていただけるような俳優に育っていってほしいと思っています。
(株式会社ヒラタオフィス 担当マネージャー)
Profile
鈴木勝吾 すずき・しょうご
1989年2月4日生まれ、神奈川県出身。A型。2009年、「侍戦隊シンケンジャー」シンケングリーン/谷千明役でデビュー。10年に初舞台を踏み、以降、舞台でも活躍。若手男優(他のメンバーは鎌苅健太、細貝圭、米原幸佑、井出卓也)たちで結成したバンド「ココア男。」(2012年解散)ではギターを担当していた。映画「任侠野郎」が6月4日公開。
【代表作】【代表作】舞台/ミュージカル「Color of Life」(2016年)、少年社中×東映 舞台プロジェクト「パラノイア★サーカス」(2016年)、ミュージカル『薄桜鬼』シリーズ(2012~16年)、「ベイビーさん~あるいは笑う曲馬団について」(2015年)、「小林少年とピストル」(2015年)、「東京喰種トーキョーグール」(2015年)、「ロボ・ロボ」(2014年)、「おれの舞台」(2013年)、「ダブルブッキング」(2013年)、「コーサ・ノストラの掟」(2012年)、「源氏物語songs大黒摩季~ボクは十二単に恋をする~」(2010年) TV/「ソイカレ~わたしがイケメンと添い寝する30の方法~」4・6・11話(2015年)、「青空の卵」(2012年)、「同窓会」(2010年)、「侍戦隊シンケンジャー」(2009~10年) 映画/「野良犬はダンスを踊る」(2015年)、「カバディーン!!!!!!!~嗚呼・花吹雪高校篇~」(2014年)、「忍たま乱太郎 夏休み宿題大作戦!の段」(2013年)、「Miss Boys!」シリーズ(2011年・12年)、「BAD BOYS」(2011年)
【HP】 http://www.hirata-office.jp/talent_profile/men/shogo_suzuki.html
【ブログ】 「SMILING DAYS」