KUNIO15『グリークス』公演詳細発表!演出・杉原邦生よりコメントが到着

2019.07.09

10時間のギリシャ悲劇一挙上演!

人間と神、正義と過ち、秩序と混沌が入り乱れる一大狂宴演劇。

 

『グリークス』は、1980年にイギリスで初演された10本のギリシャ悲劇をひとつの長大な物語に再構成した長編の舞台作品。第一部「戦争」、第二部「戦争」、第三部「神々」からなる三部構成で上演時間はおよそ10時間にも及ぶ。本作品に、2011年KUNIO11『エンジェルス・イン・アメリカ 第一部「至福 千年紀が近づく」第二部「ペレストロイカ」』の連続上演以降、木ノ下歌舞伎『三人吉三』(2014年、2015年)、同『東海道四谷怪談―通し上演―』(2013年、2016年)と、長編の硬質な戯曲に取り組んできた演出家の杉原邦生が、第一部、第二部、第三部の連続上演に挑む。

また、今回の上演にあたって、翻訳を小澤英実が担当。2014年のKUNIO11『ハムレット』以降、KUNIOでは海外戯曲を上演する際に出来る限り新翻訳を行っている。“いま、この時代に上演すること”をテーマに、翻訳者とともに「言葉」の多様性を捨てずに選び、創作にあたる。

演出・杉原邦生からのコメントが到着!

 

【コメント】

演出 杉原邦生より

僕は〈大きな演劇〉が好きです。僕の言う〈大きな演劇〉とは、時間や空間、物量など物理的な〈大きさ〉の上に、物語としての〈大きさ〉をあわせ持った演劇のことです。簡単に言えば、長ったらしくて壮大なストーリーの演劇が好きということです。なぜなら、長い時間をかけることでしか表現できない物語や世界があるから。そして、そういう作品でしかつくり出せない祝祭的な時間と空間がたまらなく好きだから。それが僕の思う〈大きな演劇〉の魅力であり、『グリークス』はその魅力が詰まりまくった演劇だと言えます。

「誰のせいだったのか。」─── 約2500年前、古代ギリシャで生まれた悲劇10本によって紡がれるこの物語が、現代の僕たちに投げかけてくる問い。それは、とてもシンプルです。人は抱えきれないほどの不幸や災難、苦しみや悲しみに襲われたとき、必死にその原因をわかりやすい形で求めはじめます。やがて、ひとつの答えが導き出されると、憎しみや怒りが湧き上がり、そのものを消し去りたいと強く願います。そして、その強い願いがまた新たな悲劇を生み出していくのです。

「誰のせいだったのか。」と過去を掘り下げていくことが悲劇を生み続けていく。この連なりは一体いつになれば終わるのか。いつになれば人間は悲劇から解き放たれるのか。もしかすると、この〈大きな〉問いと戦い続けることこそ、《戦争》も《殺人》もなくなることのない世界に生きる僕たち人間に、《神々》が与えた宿命なのかもしれません。しかし、この宿命はひるがえって、〈希望〉であるとも言えます。これまで答えの出ない問いに向かい続けることができたのは、そこに僕たち人間が僅かながらも可能性を見出してきたからだと思うからです。

10時間という長大な上演時間の中、古代ギリシャの悲劇を通して、人間が見出したその〈希望〉を生き活きとエキサイティングに現代へ描き出したいと考えています。そして、この〈大きな演劇〉が持つエネルギーとその魅力を、ぜひ劇場で共に体感してほしいと願っています。

 

■翻訳:小澤英実(おざわえいみ)

翻訳家、批評家、東京学芸大学准教授。専門はアメリカ文学・文化と日米舞台芸術。主な著訳書に『幽霊学入門』、『現代批評理論のすべて』(共著・新書館)、エドワード・P・ジョーンズ『地図になかった世界』(白水社)、フランク・キング『ガソリン・アレー』(創元社)、ロクサーヌ・ゲイ『むずかしい女たち』(共訳・河出書房新社)など。イヴ・エンスラー『ヴァギナ・モノローグス』、トリスタ・ボールドウィン『雌鹿』など上演戯曲の翻訳やドラマターグも手がける。

 

■演出:杉原邦生(すぎはらくにお)
演出家、舞台美術家。KUNIO主宰。
1982年生まれ。国内外の骨太な戯曲の本質を浮き彫りにしてみせると同時に、ポップでダイナミックでありながらも繊細な演出が特長。2004年、プロデュース公演カンパニー “KUNIO” を立ち上げ、これまでに『エンジェルス・イン・アメリカ-第一部・第二部』(作:トニー・クシュナー)の連続上演、『更地』(作:太田省吾)、『ハムレット』『夏の夜の夢』、柴幸男氏による書き下ろし新作戯曲『TATAMI』などを上演。主な外部演出作品にKAAT神奈川芸術劇場プロデュース『ルーツ』(脚本:松井周)、同『オイディプスREXXX』、木ノ下歌舞伎『黒塚』『勧進帳』『三人吉三』『東海道四谷怪談―通し上演―』、歌舞伎座八月納涼歌舞伎『東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖』(構成のみ|演出:市川猿之助)など。セゾン文化財団シニアフェロー。平成29年度第36回京都府文化賞奨励賞受賞。