2012年よりキャストを入れ替えながら上演され、アクションエンターテインメントの傑作との呼び声も高いスペクタクル時代劇『里見八犬伝』。同作がキャストを一新し、約2年ぶりに復活!
注目の若手俳優が名を連ねる中で主人公・犬塚信乃を演じるのは、ドラマ『砂の塔~知りすぎた隣人』(2016年)高野和樹役でブレイクし、『青夏 きみに恋した30日』(2018年)、『凜-りん-』、『小さな恋のうた』(2019年)など主演映画も続々と公開されている佐野勇斗だ。自然体かつ人間味あふれる演技が魅力の注目株が挑む初主演舞台は、一体どのようなものになるのだろうか。
――舞台出演はこれが2度目になるそうですね。今回は初主演ということで、現在の心境は……?
佐野「上京したての18歳の頃に、初めて舞台(2016年の『ポセイドンの牙』)に出させていただいたときは、右も左もわからないような状態で。あれから時を経て、ドラマや映画では何度かやらせていただいていますが、まだ未熟すぎる僕が舞台で主演を任せていただくということで……正直、“ちゃんと演じきれるのかな?”という不安はあります。」
――今日は衣裳でのビジュアル撮影もあったそうですが、実際に袖を通してみたら信乃を演じるスイッチが入りませんでしたか?
佐野「たしかに信乃の衣裳を着てメイクもしてもらったら、“いよいよやるんだ!”みたいな感じで、ようやくこの役と向き合う実感が湧いてきました。舞台に立っているのに近い暗めの照明での撮影もあったので、身が引き締まる思いでしたね。」
――まだ稽古前ですが、現段階での佐野さんの中の犬塚信乃はどんな人物でしょうか。
佐野「賢人くんが出た回の映像を見させてもらいましたが、いろんな感情が複雑に入り混じってくる役なんだな、という印象があります。身近な人を殺してしまったりする業の深さを感じさせる部分もありながら、人として熱い部分もあるのでそういう幅のあるところも含めて演じられたらと。」
――今回出演を決められたのは、前回信乃を演じたのがその山﨑賢人さんだったことも大きいそうですね。佐野さんから見た山﨑さんはどんな役者さんですか?
佐野「賢人くんとは映画『羊と鋼の森』(2018年)や、ドラマ『トドメの接吻』(2018年)でも一緒にお仕事をさせてもらいました。主演といえば、スポーツならチームのキャプテンみたいな立ち位置でみんなを引っ張っていくイメージが強かったのですが、賢人くんはキャストはもちろんスタッフの方々ともすごくフランクに接していて、人としてしっかりコミュニケーションをとりながら作品を作り上げていく感じがありました。役者としてのかっこよさがあるのはもちろんですが、人としてもすごく尊敬している役者さんです。」
――舞台版は今回で4度目の上演になります。リピーターも多い人気作品ですが、その魅力はどういうところだと感じますか?
佐野「映像を観させていただいて引き込まれたんです。ストーリー構成やキャストのみなさんの熱いお芝居、何よりも戦国の時代に自分がタイムスリップしたような気分になれる、そういったところに魅力があるのかなと感じました。」
――殺陣稽古をすでに始められているとうかがいました。
佐野「まだ剣の正しい持ち方を教わっているような段階ですが、映像でみたときにはみなさん軽々と振り回しているように見えたのに、実際に持って動くと下半身をものすごく使う動きが多くて驚きました。僕はグループ(M!LK)でも活動していてダンスもやっているので、人の動きを真似るというのは普段からよくやっていますが、芝居をしながらとなるとまた話が別だと思うので。戦国の時代には人を殺すために剣術を学んでいたと聞いて、そういった時代背景も理解しながら、信乃の持つ力強さやどっしりとした感じを殺陣でも表現できたらと思います。」
――演出の深作さんとはどんな話をされていますか?
佐野「先輩たちとは違った新しい『里見八犬伝』を作れたらいいね、という言葉をいただきました。今回初めてご一緒しますが、演じる側に寄り添ってくださるようなイメージが強かったので、わからないことは聞きながら全力でこの作品を作り上げられたらと……。あと、人を“斬る”という感覚は現代ではまず体験することのできないものなので、「日頃の生活の中で料理をして、鶏肉とか毎日切ってみるといいよ」とアドバイスをいただいたんです。“斬る”ってこういう感じなんだ!という感覚を叩き込みたいので、本番の頃には肉料理の腕が格段に上がっているかもしれないです(笑)」
――(笑)。グループの活動でステージに立ってパフォーマンスはされていると思いますが、生で芝居を届けるということについてはどういうイメージを持っていますか?
佐野「まだまだ未知の部分が大きいです。ただ普段メインにやらせてもらっている映像と比べると、生で見せるぶん伝わりやすさもあると思うので。そこは楽しみでもあります。」
――ちなみに、普段役作りにはどのように取り組んでいるんでしょうか?
佐野「普段は台本の裏にその人物の性格や、これまでの人生はこんな感じだったんじゃないかな?というバックボーンの部分、親とか身近な人とはこういう口調で話すんじゃないか?とか推測できる部分を書き出していきます。佐野勇斗と似ているところはあまり難しく考えず、自分とは違うと思った部分についてどうやってアプローチしていくか時間をかけて考えるようにしていますね。今回は初めての時代劇でもあるので、さっき言ったように未知の部分が大きいですが、自分なりのアプローチで信乃に近づけていけたらいいなと思います。」
――佐野さんは演じる役に対して自分を寄せていくタイプですか、それとも自分のキャラに役を引き寄せるタイプですか?
佐野「どちらかというと、演じる役に対して自分を寄せていくタイプかもしれないですね。普段の生活から役になりきる役者さんもいるといいますけど、僕はカメラが回っていないところでは佐野勇斗なので(笑)」
――ほかの八犬士の方々にはすでに共演されている方もいるそうですね。
佐野「松田(凌)さん、岐洲(匠)くんは共演させていただいたことがあって、結木(滉星)くんは同じ事務所なので面識があったりします。とくに岐洲くんとは映画『青夏 きみに恋した30日』の撮影でずっと一緒だったので、「今度一緒にやれるね」みたいな話はしましたね。学生時代に部活をやっていたりしたので、こういう男ばっかりの現場って好きなんです。年齢もキャリアもそれぞれ違いますけど、みなさんと仲良くできたらと思って楽しみにしています。」
――今回はそんなキャストのみなさんを束ねる座長になるわけですが。
佐野「座長としてのあり方というのも未知の世界で、みなさんから学んだり助けられることも多いと思います。わからないことも多いんですが、そこがなんとなくデビュー当時の感覚とも似ていて、初ライブの空気を思い出したりもしていますね。でも作品作りに最後まで全力で取り組むという熱い姿勢は忘れず、絶やさず、頑張っていきたいなと思っています。」
――これまでの『里見八犬伝』もそうでしたが、2019年版で初めて舞台を体験する方も多いと思います。そんな方々にメッセージをいただけるとうれしいです。
佐野「僕は学生時代、歴史があまり得意じゃなかったんです。でもこの世界に入ったことで面白い作品もたくさんあると知って、興味を持ちました。僕自身にとっても初めての時代劇になるので、これをきっかけにより好きになれればと思っていますし、若いお客さんたちにも少しでも興味を持っていただけたらうれしいなと思います。“時代劇ってどうなんだろう?”と思っている方にこそ、先入観を捨てて観に来ていただきたいです。」
取材・文=古知屋ジュン
ヘアメイク=望月光(Reno Beauty)
スタイリスト=本田博仁(HIROHITO_HONDA STYLING OFFICE)