これ以上ない豪華な顔合わせ、
新演出で生まれ変わる『贋作 桜の森の満開の下』
NODA・MAPの最新作として、2018年秋、これ以上ないほどに豪華かつ魅力的なキャストが結集し『贋作 桜の森の満開の下』が上演されることになった。
この『贋作 桜の森~』は、野田秀樹が自らを“安吾の生まれ変わり”と公言し敬愛していた作家・坂口安吾の『桜の森の満開の下』と『夜長姫と耳男』を基に書き下ろした壮大な戯曲。1989年に劇団夢の遊眠社により初演され、1992年に再演、その後2001年に新国立劇場の主催公演として上演され、さらに2017年には八月納涼歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下』として歌舞伎化もされて大きな話題を集めた、野田の代表作のひとつだ。
4/5、都内某所にてその製作発表会見が大々的に行われ、野田とメインキャスト11名が登壇し、その全貌がこの日初めて明らかとなった。会見中の主なコメントと、各自が演じる役名は以下の通り。
野田秀樹(作・演出)<ヒダの王>
「今回上演するきっかけとなったのは、フランス・パリで『ジャポニスム』という大きなフェスティバルがありまして、国立のシャイヨー劇場でこれまで2度作品を上演しているのですが、今回はぜひ『贋作 桜の森~』を上演してくれないかと逆指名をいただきまして。それでせっかく日本を代表して上演するならと、考えられる限りの最高のキャストとスタッフに対し当たって砕けろとオファーをしてみたところ、すべて理想通りの役者さんとスタッフさんがOKしてくださいました。これ以上ないカンパニーになったかと思います。妻夫木さんを<耳男>役にと考えたのは、彼が出ている作品を舞台袖から見ている最中に彼が<耳男>をやるといいだろうなと思いついたんです。妻夫木さんのキャラクターって弱っちぃというか(笑)、真面目に生きようとすればするほど抑圧されたりいじめられるという勝手なイメージがあって、自然と『贋作 桜の森~』のワンシーンが浮かんできたんです。また、<オオアマ>は“皇子”役になりますのでどういう人なら瞬間的にピタッと来るか、ずっと探していたんですが、天海祐希さんの名前を思いつき、これだ!と大至急連絡をしました。半分以上はやってくれないのではと思っていたのに即答していただけたおかげで、自分の作品作りへの気持ちも、よりギアアップしましたね」
妻夫木聡<耳男>
「『エッグ(2012年、2015年)』という舞台で野田さんとご一緒させていただいていた時に、やはりその時も共演していた大倉(孝二)さんと『贋作 桜の森~』の話になったことがあって。その時はもし再演があるなら観てみたいなという気持ちで話を聞いていたので、まさかその作品に自分が関わらせていただくことになるとは夢にも思っていませんでした。だから今、とても不思議な気持ちです。“4代目の”<耳男>を演じることにプレッシャーも感じてはいますが、僕自身はこの作品を拝見したことがなかった分、逆に知らない強みみたいなものが出せるのかなと。今は自分自身が持っているものをうまく出せたらと、出たとこ勝負で身を任せようかと思っています」
深津絵里<夜長姫>
「17年ぶりにこの姫の役を演じるのですが、まったく以前の記憶がないので(笑)。新しい気持ちで臨みたいと思います。夏の稽古から11月末の千秋楽まで、こんなにも素晴らしく強烈にカッコイイ共演者のみなさんと一緒に過ごせることが今からとても楽しみです。このメンバーでなければ私、今回やっていなかったかもしれません。これは嘘でもお世辞でもなく、そのくらい本当に大好きですごいなと思える共演者の方々ばかりなんです。妻夫木さんは共演回数が最も多い相手かもしれないのですが、毎回どんどん進化していて。ご自分を高めよう、前に行こうとするその姿勢はいつも変わらないのでとても安心感がありますし、なんだか親戚みたいな感覚もあります(笑)。天海さんとはこれが初共演で、この作品をやるためにこれまで共演しなかったんじゃないかと思うくらいに奇跡的な出会いのような気もしているので、その想いを存分に出していきたいです」
天海祐希<オオアマ>
「歌舞伎版の『桜の森~』を観に行った時、歌舞伎座の楽屋でちょうど深津さんとお会いし、さらにたまたま毬谷友子さんもいらしていて、歴代の<夜長姫>が3人揃った場に居合わせまして。必死に写真を撮っていたその時の自分のことを考えると、まさかこの作品に私が声をかけていただけるとはと、すごく嬉しくて幸せだったんです。それで絶対にやりたい!とお返事をした後になってよくよく考えてみたら、あれ?ちょっと待って、オオアマって男の人じゃない?と気づきまして。ということで宝塚退団後、舞台で初めて男性を演じることになりました(笑)。深津さんと門脇さんというこんなに美しいお二人に恋していただくので、ちゃんとカッコよくなってなきゃいけないなと今、反省しました。もっとがんばりたいと思います! 野田さんの作品って、観る側の立場からもワクワクしますけれども、演じる側に回るともっとワクワクする世界なんですね。あまりに素敵で客席から観るたび、なんで私はあっち側にいないんだろうと悔しくも、いいなあといつも思っていましたので、こっち側に今回は来られて本当に嬉しいです」
古田新太<マナコ>
「17年前の(深津)絵里ちゃんたちと一緒にやった新国立劇場版でも、この同じ役を演じさせていただきました。その時の記者会見を野田さんがすっぽかし、大事件になったことを今も覚えています(笑)。今年もがんばりますのでよろしくお願いします(なお、このコメントの直後、会見すっぽかしの顛末について、実は前夜に野田と古田が一緒に飲んでいて、「俺が何とかしますから、野田さんは会見にでなくても大丈夫」という古田の言葉を真に受けたところ、古田は実は何もしておらず、そんな事態になってしまったという野田の笑い話で会場を大いに沸かせた)。そして自分にとって海外公演は初めての経験なので、非常~に楽しみです! 日本に興味のあるフランスのお客様の前で日本の文化を紹介できるなんて、心躍りますね!!(笑)」
秋山菜津子<ハンニャ>
「17年前の『贋作 桜の森~』はのんきに客席から観ていまして。こんなに時間が経ってから、まさか自分が出演することになるとは思いませんでした。野田さんの舞台はとても体力がいるので、今回も最後までなんとか生き抜いていきたいと思います(笑)、よろしくお願いいたします」
大倉孝二<青名人>
「僕も17年前の時に出させていただいているのですが、今回はその時とは違う役を演じることになりました。もう43歳のオッサンなんですけど、驚くことにこのカンパニーの中では下から3番目になるので(笑)、ぜひともフレッシュ感を出していきたいと思っています」
藤井隆<赤名人>
「この舞台に呼んでいただき、声をかけていただけたことは本当に光栄です。なんとか食らいついて、みなさんにご迷惑をおかけしないようにがんばろうと思っております。ぜひ劇場にお越しいただけたらと思います」
村岡希美<エナコ>
「私にとっては10年ぶりのNODA・MAPへの参加となります。久しぶりですし、内面も身体もすべてひとくくりになる、この野田さんの世界を力一杯やれたらと思っています。17年前の舞台も拝見していて、とても圧倒的な作品だったイメージがありますので、今回は自分もそちら側に加われるのかと思うと少し怖いのですが、楽しみにも思いながらやっていきたいです」
門脇麦<早寝姫>
「今回、初めてNODA・MAPの舞台に参加させていただけることになり、とても緊張しています。本当にこんなに素敵な方たちに囲まれ、私は今25歳ですがこれはなかなかできない経験ではないかと思いますので、いろいろなものを精一杯吸収していけるようにがんばります。天海さんのことは以前から大好きでいつも作品を見ていましたので、恋する気持ちはもう準備完了しています(笑)。女性同士ということで一味違った、美しくてピュアなシーンになるのではないかと思います、そこもぜひ楽しみに観ていただきたいです」
池田成志<エンマ>
「昨日あんなに暑かったのに今日はこんなに寒くてみなさま、大丈夫でしょうか。よく考えたら稽古は7月ということで、おそらく今年はものすごく酷暑になるという風に勝手に思っています。とにかく今は身体のことが心配です(笑)、よろしくお願いいたします」
銀粉蝶<アナマロ>
「私も同じく身体のことが心配です(笑)。『贋作 桜の森~』は日本青年館での夢の遊眠社版と新国立劇場版、両方を拝見しています。その作品を自分がやることになるとは思ってもみませんでしたが、やる以上は楽しみたいと思っています」
このような各キャストからのコメントに続いて行われた記者たちからの質疑応答では、今回応募総数約1,000名から選ばれた精鋭のアンサンブルが18名参加すること、現在既にメインキャスト数名も参加してのワークショップが行われており、今回ガラッと変えるという新たな演出のアイデアがとてもいい手応えで稽古できていること、さらには東京公演、大阪公演、北九州公演だけでなくパリ公演について思うところなどが野田やキャスト陣から明かされ、早くもチームワークの良さが充分に伝わる、笑いに溢れた会見となっていた。
2018年後半の演劇界を語るには欠かせない舞台になることは間違いなし。チケットの一般発売日は7/28(土)を予定、出遅れないようチェックをどうかお忘れなく。
取材・文/田中里津子
写真/ローソンチケット