安西慎太郎インタビュー&特別イベントミニレポート 舞台「絢爛とか爛漫とか」

2019年8月から9月にかけ、舞台「絢爛とか爛漫とか」で新人小説家・古賀を演じることになった安西慎太郎。本作は2作目の執筆に悩む古賀と、彼を取り巻く3人の男たちが、各々に思い悩み、それぞれの道を見出していく四季の物語だ。初演も演出を務めたという鈴木裕美が今回も演出を手掛け、安西をはじめ鈴木勝大、川原一馬、加治将樹と、彼女が“役者”だと思う4人を揃えて本作に挑む。まもなく始まる稽古を前に、安西は何を思うのだろうか。

 

――今回の舞台が決まったときのお気持ちはいかがでしたか?

安西「嬉しかったですね。演出の鈴木裕美さんとは、一度ご一緒してみたかったんです。本当に演劇を熟知された方といろいろな方からお聞きしていて、とにかく本に対しての解釈が非常に深い。当たり前ですが、役者にとって、読解力、本を読み解けることは大切だと思っています。そこからいろいろなことを考えられることが大事。そういう意味で、役者として一番大事なことを今回の現場で学べるんじゃないかと感じています。共演の3人も初めての方、以前にご一緒した方と居ますが、魅力的だと思っていた人たちなので、一緒に手をつなぎながら、でも戦いながら、頑張っていきたいなと思っています」

――今回は4人の舞台ということで、より密度の濃い作品になりそうですね。物語としての印象はいかがですか?

安西「『絢爛とか爛漫とか』というタイトルから受けたインスピレーション、昭和初期という自分の知らない時代ということで、最初はちょっと構えちゃうような作品かな?と思っていたんです。でも、読み始めたら全然そんなことなくて。共感できる部分、逆に共感できない部分がしっかりと見えてきました。僕が演じる古賀の台詞なんかに「これ、僕も言ってるな」と思ってしまうようなものもあって。今までやってきた役の中でも近いというか…役の持っているパーソナリティを僕自身も一番持っている役かも知れません」

 

――そういう役どころって珍しい?

安西「珍しいと思います。いつも、こんな気持ちは持っていないからなかなか拾えなくて…っていうのが殆どですけど、古賀はあまりそれが無いです(笑)。台本上では、難しいことは何も行われていないんです。割とシンプル。男性4人の話ですが、女性も何も構えずに来ていただいて大丈夫です!“面白い”って感じてもらえるお話だと思います」

 

――稽古はこれからですが、古賀は今の時点でどんなキャラクターだと考えていますか?

安西「グダグダしてます、とにかく。人間なんで、人間味があるという言い方もどうかと思うんですけど…、僕は登場人物4人の中で一番共感できます。小説への想い、執着は素敵です。そして、情けないなーと、読み手やお客さんがパンって気合い入れたくなるような。でも嫌いになれないし、そうやってあげたくなるような人物なんですよね」

――今のご自身の世代的にも夢に対してもがいたりしている感じは共感できるんじゃないですか?

安西「夢とかってちょうど僕らくらいの年齢が、これからどうしようかなって考える時期だと思うんです。本当に古賀が言っていることが、僕が昨日友達に言ったようなことだったりするんです(笑)」

 

――夢に対してのお気持ちやアプローチは安西さん自身はどういう感じ?

安西「難しいですね、夢へのアプローチって。ダサい言葉になっちゃうんですけど…不可能なことは無いと思うし、不可能だって思いたくないから。そう思っているけど、いろいろと葛藤というか、戦わなくちゃいけない。色々なことに柔軟に対応もしていかなきゃならないし、でも自分の信念もあるしでバランスもとらなきゃいけない。でも自分の人生だし、自分がやりたくないことはやりたくないし、自分の信じていることだけをして生きたい、という想いは常に持っていることが大事だと思うんです。それを忘れないことですよね」

 

――20代の夢ならではの葛藤かもしれないですね。10代の頃ほど無鉄砲に夢を描けない。ちょっと現実が見えてきて、夢にリアリティが出てきてしまう。

安西「言葉にするのが難しくなるんですよね。僕の仕事、役者って特別な職業に見られがちじゃないですか。人前に出る仕事ですし。でも、やっていることってある意味他の職業と全然変わらないと僕は思うんですよ。飲食店で、お金を払って美味しいものを食べて帰るのと、劇場にお金を払っていい作品を観て帰るのって行われていることは同じようなことじゃないですか? お客さんに対して、感謝の気持ちをもって自分の信念を曲げずに仕事をしていられたらなと思います」

――昨年、フリーになられて、そういうことも改めて考えるようになられたんではないですか?

安西「やっぱり自分のことも考えるし、お客さんのことも考えますよね。僕は、人生において何よりも大事なものは時間だと思うんです。もちろん、お金も大事なんだけど、お客さんの時間を貰っているって、相当な重さだと思うんですね。1回の舞台を観るにしても、チケット代や交通費のお金だけじゃなくて、公演の時間や劇場に来るまでの時間を、作品に、自分に投資してくれていることになる。その重さって、すごく重い」

 

――その重さはいつごろから感じるようになりましたか?

安西「それ自体は、以前の事務所に入ったころからですね。当時のマネージャーさんが、そう感じさせてくれたんだと思います。言葉で具体的に何かを言われたわけじゃないけど、いろいろなことを通して僕に気付かせてくれました」

 

――みなさんの貴重な時間を頂戴する作品を一緒に作り上げることになる、キャストの3人の印象についてもお聞きしたいと思います。

安西「唯一共演したことがあるのは、川原一馬さん。久しぶりの共演なんですけど、とにかく優しくて面倒見がいいお兄さんみたいな人。すごく理性的で、頭がよくてかっこいい印象なのが、鈴木勝大さん。加治将樹さんは、もう第一印象から絶対に面白そうだと思っていました。 絶対に魅力的な人だと確信していました。ただ、考え方はすごくロジカルな気がします」

――稽古場で期待していることは?

安西「大所帯の舞台だと、なかなか話せないこともあるじゃないですか。4人だからこそ、プライベートから作品の役についても、裕美さんも含めてとことん話し込みたいですね。ありきたりですけど、お芝居するときに何を一番意識しているか、裕美さんには演出するときに一番大事にしていることは何かって聞きたいですね」

 

――ちなみに、安西さんが大事にしていることは?

安西「あー、なんだろう(笑)。役者という仕事は物語を届ける仕事だと思っているので、役もそうですが、物語をちゃんと届ける、ということは一番意識しているかも知れないです。あくまでも、物語があっての役で、役があっての自分なので。脚本って本当に大事ですよね。言葉がひとつ違うだけ、届き方もリアクションも全然変わるので、本当に脚本ってスゴイ。それは演技をしているうえでとても感じるので、繊細な作業なんだろうなと思いますね」

 

――最後に、公演を楽しみにしているみなさんにメッセージをお願いします。

安西「観に来てくださるお客様の想像以上のものをお届けしたいと思っていますし、それができるスタッフ、キャストが揃っていると思っています。心を開放して、劇場に来てくださったら届くものがあるはずです。作品の客層として女性のお客さんが多くなるとは思いますが、男性も共感してもらえると思うんですよ。性別、世代関係なく沢山の方にお越しいただきたいです!」

 

■公演に先駆け特別イベントを開催、日比谷にファン集結! 

連日続いた雨がつかの間途切れた7月13日、東京・日比谷のローチケHIBIYA TICKET BOXにて舞台「絢爛とか爛漫とか」の特別イベントが開催された。今回のイベントは、チケットを購入していただいた方に主演の安西慎太郎が直接握手で感謝の気持ちを伝えるというもの。会場前には長蛇の列ができ、中にはキャリーを引いて会場に現れる人など、遠方からも参加していると思しきファンも。

 

安西が握手をしてファンに感謝を伝えると、ファンも「本番を楽しみにしています!」と公演が待ちきれない様子。また、会場にはファンからの質問も飛び交い、中には「それめっちゃいい質問!」「真剣に答えたいから…ちょっと待って!」と、思わず唸ってしまうようなファンならではの声も届けられた。

 

芝居のことについてファンから質問された安西は「お芝居そのものだけじゃなくて、コンディション管理も大事。日々のルーティンの中で毎日同じコンディションにもっていかなければならないから」と答え、毎公演を同じクオリティにするためのプロ意識の高さをのぞかせた。

 

イベントを終えて、安西は「こうやって直接皆さんの声を聞く機会や、僕の言葉を伝える機会はそんなに多くないので、とても楽しかったし、嬉しかったです。一層、みなさんに感謝の気持ちがこみ上げてきました」と感想を語った。たくさん届けられたファンの言葉を胸に刻み、主演として舞台上でその感謝を形にしていくのではないだろうか。

 

取材・文/宮崎新之