別冊「根本宗子」第7号『墓場、女子高生』根本宗子 インタビュー

自分が楽しいと思う戯曲をやりたくてこの作品を選んだ


根本宗子が主宰を務める劇団・月刊「根本宗子」の派生ユニット別冊「根本宗子」が、ベッド&メイキングス福原充則の戯曲『墓場、女子高生』(’10年初演)を上演する。演出・出演の根本宗子に話を聞いた。

根本「とても大好きな作品で、1度出演もさせていただいた作品ですし、出てない3回も全て観ています。俳優としてプレッシャーがものすごいくらい戯曲そのもののクオリティが高い。ずっと演出してみたいなと思っていました」


今回のように根本が戯曲を書かずに演出に専念するのは、劇団10周年にして初めての試み。

根本「だからこそ自分が好きで楽しいと思う戯曲をやりたくて、この作品を選びました。緊張もありますが、だからといって福原さんがつくったものに寄り添いすぎると演出家が変わる意味がない。しっかり戯曲の持つ力を信じてセリフを大事にしながら福原さんが描いた世界に私なりの解釈を入れて『別の人がやるとこういうことにもなるんだ』と面白がってもらいたいなと思います」


実はこの作品、根本自身が’15年上演のベッド&メイキングス公演に客演として出演している。

根本「当時は西川という役をやったのですが、今回は日野という役をやります。もちろんあのときの配役に不満があったとかではなくて、西川をやれてよかったですし、そのとき(清水)葉月ちゃんが演じた日野は素晴らしかった。でも私の中に『好きな戯曲のやりたい役たち』というリストがあって、その中に日野はずっと入っていたんです。やる人によっていろんなやり方があるなと思って」他の配役は、取材時はまだ確定していなかった。

根本「配役は本読みをしてから決めたくて、そういう決め方を許してくれる人たちに今回お願いしています。先日みんなで役をシャッフルしながら読んでみたのですが、誰がどの役をやっても面白くて。悩ましいですね」


そう話す通り、出演者は根本作品でおなじみの面々。根本は
「今回はみんなで話し合いながらつくりたい」と話す。

根本「もともと『ここはどうしようか?』という話もしやすい人たちですが、今回は特に自分の戯曲ではないので『ここは難しいよね』『ここはいいシーンだよね!』みたいな話をストレートにできるのがいいなと感じています。作品はみんなの手を借りないとできないものですが、自分の戯曲だと『手を貸して』と言いすぎると『大丈夫かな』と不安にさせたりしますから(笑)。群像劇ですし、そうやって話す中でそれぞれの役のこれ!というものを見つけていきたいです」


登場人物のほとんどが女子高生で、その中の一人が〝大人〟を憂う姿も印象に残る作品。大人である根本はそういう部分をどう演じるのか尋ねた。

根本「でも漠然と将来に不安があることは何歳になっても変わらないので。今の私が抱えている問題として演じればいいのかなと思っています。女子高生役というのもそうで、若いときみたいに演じよう、という気はあまりないです」


そんな今作で根本が
「死守したい!」と宣言したのは、合唱部による歌のシーンのクオリティ。

根本「役としての説得力もそうですが、そのハーモニーでグッとくる部分もあるので。だから今わたしがみんなにお願いしているのは、『glee/グリー』(合唱を描いた海外ドラマ)を見ておいてってこと。歌いたい気持ちを高めてもらっています(笑)」

 

インタビュー・文/中川實穂
Photo/山本倫子

 

※構成/月刊ローチケ編集部 8月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります

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【プロフィール】
根本宗子
■ネモト シュウコ ’89年、東京都出身。19歳のときに劇団、月刊『根本宗子』を旗揚げ。演出家、脚本家、女優として幅広く活躍する。