theatre PEOPLE PURPLE 2019夏公演「STRANGE CLAN」~ストレンジ クラン~稽古場レポート

2019.08.29

ストレートプレイを中心に、史劇、喜劇、ミュージカルなど多彩な演目を上演するtheatre PEOPLE PURPLE。その最新作「STRANGE CLAN」が8月29日より池袋・あうるすぽっとにて上演される。初日を間近に控え、通し稽古にも熱が入る稽古場にお邪魔してきたので、その様子をレポートする。作・演出は代表の宇田学。舞台のみならず、ドラマ「99.9-刑事専門弁護士-」や「探偵が早すぎる」、「ドクターX~外科医・大門未知子~(第4シリーズ)」、「おしい刑事」など、緻密で繊細な描写をさまざまなシーンで手掛けている宇田が、本作では第二次世界大戦後のロンドンを舞台に、ある秘密を抱えた人々と少女の交流を通して人間の悲哀や感情の本質を描いていく。ロンドン郊外、夜更けに青年ルーク(山咲和也)はやっと見つけた屋敷のドアを叩く。道に迷い、一晩泊めてほしいと屋敷から出てきたバーバラ(森下ひさえ)に頼み、渋い顔をされながらもなんとか部屋に通してもらった。時間を持て余したルークは、ふと古い書き物を手に取る。そこに記されていたのは、こんな物語だった――。戦火が続いている第二次世界大戦中のロンドン郊外。戦争で両親とはぐれ、幼い妹を亡くした少女オリヴィア(尾尻愛)は、街で張り紙をしている青年に出会う。青年の名はノア(小坂涼太郎)。“友達が欲しい”と願う少年ブランドン(山本悠央)とともに、自分たちが住むアトウッド家に人々を招待して仲良くなりたいと張り紙をしていたのだが、街の人々の反応は冷たく、追い返されてしまっていた。2人のことが気になったオリヴィアは、張り紙を頼りに森の奥にひっそりとたたずむ屋敷へと向かうのだが・・・戦時中の誰もの心がささくれた時代。人が人との交流を求めて、何を大切にし、何が満たされるのか。戦争によってあぶり出される醜い部分や、肥大した欲望によって生まれたものなどが物語を彩るが、本質は人の持つ純粋な感情の行く先。戦争や貧しさ、恐怖など彼らを取り巻く出来事や心情は雑音のように心に揺さぶりをかける。だが、それをそぎ落としていけば、きっとどんな時代でも行きつく想いは同じなのではないだろうか、と思わされた。通し稽古の後は、宇田からセリフのタイミングや動きについて細かな指示や確認が飛ぶ。それに対してキャストも質問などが飛び交い、時には笑い声も上がるなど、風通しの良さが感じられた。その雰囲気の良さも、完成への手ごたえあってこそのものだろう。8月31日(土)には、17:00の終演後にアフタートークの実施も決定。稽古の裏話なども飛び出すかもしれない。インタビュー・文/宮崎新之