左:梅津瑞樹 右:前山剛久
東映が仕掛ける、映画と舞台の完全連動企画【東映ムビ×ステ】。注目の第一弾企画として展開されているのが、主君の前で武芸者たちが腕を競い合う‟御前試合”をめぐるドラマを描いた時代劇だ。7月に上映された映画『GOZEN -純恋の剣-』に続き、9月12日からは舞台『GOZEN -狂乱の剣-』がスタート。舞台では前府月藩主の嫡男・望月八弥斗を演じる矢崎広、正体不明の剣士・流狂四郎を演じる元木聖也らバラエティに富んだキャストが、壮大なスケールで戦いを繰り広げる。今年6~8月にかけての『舞台『刀剣乱舞』慈伝 日日の葉よ散るらむ』(以下、刀ステ)で共演し、本作では謎多き隠密・結城蔵人に扮する前山剛久、ひとクセもふたクセもありそうな陰陽師・土御門月暗に扮する梅津瑞樹に、舞台の作品世界について聞いた。
――まだ稽古が始まって間もないそうですが(取材は8月)、稽古場の雰囲気はいかがですか?
前山「僕は(脚本・演出の)毛利(亘宏)さんとは初めてご一緒するんですが、本読みのあとにみんなでワークショップをやったり、ゲーム感覚で打ち解けられる時間を作ってくださったり。なので稽古場も和気あいあいとしていますね」
梅津「毛利さんの優しい雰囲気もあいまって。ただ、それぞれお芝居のボリュームはけっこうあるので、ドキドキ感もあります」
――お二人は“刀ステ”に続く共演になりますね。役者としてのお互いをどう見ていらっしゃいますか?
梅津「前山さんはいろんな意味ですごく‟与えてくれる”役者さんだなと思っています。刀ステでは戦いのあとに悔しさを募らせる山姥切長義(梅津)を、鶯丸(前山)が諭すようなシーンがあったんですが、毎回その流れや空気感が違って、それがすごく楽しかったんですよ」
前山「(照笑)。僕は演技をあまり決め込みすぎずに、その場で生まれたものを大事にしたいタイプなんです。僕がそのときに感じたものを演技に込めて‟渡す”と、梅ちゃんは純粋な人だからちゃんと感じたものを返してくれる。その柔軟さは、ある意味、役者にとって一番大事なものなんじゃないかと。刀ステで絡むシーンは毎回打ち合わせもせずに、僕は感じた気持ちを伝えて、それに対する梅ちゃん(梅津)の返しも毎回違ったので楽しかったし、役者として信頼できるなと感じました」
――そんなお二人の、今回の役柄の関係性は?
前山「今回は梅ちゃんが矢崎広さん演じる八弥斗の父の代から望月家に仕える陰陽師、僕が波岡一喜さん演じる八弥斗の叔父・望月甲斐正に仕える隠密という関係なので、ライバルみたいなバチバチ感ではないですが、この2人が対決するシーンもあるんですよ。今回、アクション監督も刀ステと同じ栗田政明さんで、すごくかっこいい殺陣を付けてくださるので、この作品ではどうなるのか楽しみなんです」
梅津「お互いに武器も刀ステとはまったく違うので、どういう絡み方、戦い方になるのかというのは注目していただきたいです」
――ご自身が演じるキャラクターについてはどういう風に捉えていますか? 蔵人は映画に引き続き登場、月暗は舞台から登場する新キャラという違いはありますが。
梅津「僕の演じる月暗は謎に包まれている部分が大きいんです。まだ稽古序盤ということもあるかもしれませんが、毛利さんは「必ずこういう風に」みたいな演出の仕方はされないので、すごくのびのびとやれています。なので稽古の中でこの『GOZEN』の世界に生きる人物像を徐々に固めていっているところですね」
前山「自由にさせてもらえるからこそ、役者側も演じるキャラについて突き詰めて考えて表現しなければ、と稽古の中で試行錯誤しています。蔵人については主君である甲斐正への忠実さという点には重きを置いていて。そうした基本線がありつつも、映画で描かれていた人物像をどう膨らませていくかについて、いまは考えていますね。映画とリンクしている部分もありつつ「舞台ならではの描き方を」と毛利さんもおっしゃっていたので」――なるほど。この作品に登場する武芸者たちはそれぞれ秘技が持っていて使う武器も違うそうですが、お二人はどういう武器を使いますか?
前山「蔵人は“兜割”という武器を使うんですが、これは斬るのではなく十手のように打撃系の武器なんですよ。でもいざ振ってみると、刀ステのあとだからどうしても刀の動きになっちゃう(笑)。戦う相手との距離感も含めてまったく違うので、そこはまだ苦戦中です」
梅津「僕はビジュアル撮影では扇子や仕込み刀(※杖の中に刀が仕込まれている)を使いましたが、本番では陰陽師ならではの戦い方をしますね。月暗の持つ力については、作品の中のお楽しみ、みたいな部分もあります」
前山「殺陣をつけていただいている最中なんですが、みんな武器や戦い方が個性的で面白いんですよ。とくに井俣(太良)さんの鎖鎌!」
梅津「あれはインパクトあるよね!」
前山「昔、僕も『忍たま』で似たような武器を使ったことがあるんですが、絡まったりして使いこなすのが大変なんです。普通の時代劇の殺陣と勝手が違ったりして難しいぶん、完成すればどの作品でも観たことがないような斬新な殺陣になると思います」
――鮮やかな殺陣、期待してます! そして作品ビジュアルでのお二人は、今回のキャストの中でもすごくミステリアスというか、ビジュアル系っぽさがありますね。
前山「僕がマスクをしたりネオビジュアル系っぽくて、梅ちゃんの月暗は元祖ビジュアル系っぽい正統派感がありますね。2人ともバンド系の音楽が好きで、僕はよくいろんなところで話してますけど、HYDEさんが大好きで」
梅津「僕はthe GazettEとかが好きでよく聴いてました。今でもときどきカラオケで歌いますし」
前山「お仕事でも派手なメイクのキャラクターを演じるときは、けっこうテンションが上がるんですよ。あまりメイクをしない役が好きな役者さんもいらっしゃいますけど」
梅津「僕はわりとどっちも好きですけど(笑)」
前山「そうなんだ? 僕はメイクで役に入っていく部分もありますね」
――話がそれましたが舞台は主人公の八弥斗が、父の弟の甲斐正に父を殺されて復讐を決意するものの、甲斐正は御前試合を開催して八弥斗を幕府や他藩の隠密たちもろとも公開処刑にしようとする……という『GOZEN』ならではのストーリー。シェイクスピアの『ハムレット』をモチーフにしているそうですね。
前山「『ハムレット』といえば悲劇のイメージがありますが、この作品の前半はコメディ要素もあります。登場人物それぞれに笑いどころがあったりするので、強烈にエンタメ色を強めた『ハムレット』になるんじゃないかという印象を受けました」
梅津「『ハムレット』に着想を得た流れになっているんですが、それだけじゃなく、この『GOZEN』ならではの部分がどうなるのか?というところを楽しみにしていただきたいです」
前山「前置きしておくと、観ていてめまいがするほど怒涛の展開かもしれないです。そこも舞台ならではの魅力だと思います」――梅津さん演じる月暗のほかに八弥斗の恋人・小松原奈奈役の若月佑美さん(元乃木坂46)など、舞台から登場する新キャラが5人。「戦いの数だけ、秘められた物語がある」というキャッチフレーズの作品ですが、描かれるスケールも広がりますね。
前山「さっき怒涛の展開と言いましたけど、ビックリするくらい壮大な展開が待ち受けています」
梅津「僕らも台本読みながら「そんなこと考えてたんだ?」「そんな関係性があったんだ!」とか、発見が多くて」
前山「台本のページをめくりながら「戦ってる、戦ってる、また戦ってる……あれ、あのキャラが…」みたいな壮絶さもありつつ」
――キャストのみなさんから見ても予想がつかない展開というのは興味深いです。それを、コミックやアニメ作品に例えると……?
梅津「個人的な印象ですけど、『仮面ライダー龍騎』(※2002~2003年放送。13人の仮面ライダーによる戦わなければ生き残れないドラマを描いた仮面ライダー)っぽいんですよ」
前山「あーーー、わかる! 登場人物がそれぞれ戦い続ける流れとか、まさにそうですね」
――この『GOZEN』は映画含め、仮面ライダー、スーパー戦隊出身の役者さんが多いことでも注目を集めていますが。
前山「よくこれだけヒーロー経験者がそろったなと。それに加えて普段は映像で活躍されている波岡さん(波岡さんも「仮面ライダー鎧武」出演)や、元乃木坂46の若月さんといった、このめったにない組み合わせを舞台で観られるお祭り感もあると思います。このカンパニーを信頼できる座長である矢崎さんが率いるというのも、また面白くて。異種格闘技戦的でもあって」
――各キャストのファンの方々にとってはもちろん、ヒーロー好きにとってもたまらない世界観ですね。最後に改めて、この作品の魅力を教えてください。
前山「もちろんドラマを見せる部分が中心にありますが、殺陣だけではなくダンスもありますし、舞台ならではのショー的な要素もしっかり楽しんでいただけると思います。せっかく映画と舞台を連動させた『ムビ×ステ』だからこそ、普段あまり舞台を観ない方にも体験していただきたい作品ですね。描かれている世界観がすごく熱くて、誤解を恐れずにいうと中二病な要素が強いんですが、観ていてどんな方でも“滾る”部分が必ずあると思うので」
梅津「個人的な印象ですが、格ゲー(格闘ゲーム)を好きな人にとくに気に入ってもらえる作品なんじゃないかと。たくさんキャラクターがいて“ストーリーモード”でそのキャラのストーリーが選べたりするんですが、自分がプレイするときにはついいろんなキャラのストーリーを見ちゃうんですよ。その一人一人に「なぜ戦うのか?」みたいな理由が必ずあって、意味なく戦う登場人物は一人もいない。そこがすごく興味深いのかなと思うんです。この作品でも描かれる比重は登場人物によって違いますが、物語を追っていけば、それぞれがこういう想いで戦っているんだと理解できる部分があると思います。先に映画を観ている方にもさらにスケールの広がった『GOZEN』の世界を観ていただけると思うので、楽しみにしていただけたら」
取材・文/古知屋ジュン
◎プロフィール
前山剛久
■マエヤマ タカヒサ 1991年、大阪府出身。若手男性俳優集団・D-BOYSのメンバー。2011年に『ミュージカル 忍たま乱太郎』中在家長次役で役者デビューし、ドラマ&映画『仮面ライダーウィザード』(2013年)で演じたソラ/グレムリン役などで注目を集める。以降、梅津とも共演した『舞台「刀剣乱舞」』シリーズの鶯丸役など、幅広い作品で活躍中。2019年10月25日~11月10日には『舞台『PSYCHO-PASS Chapter1 -犯罪係数-』』(槙島聖護役)、11月29日~12月10日には『イノサンmusicale』(アンドレ・ルグリ役)にも出演。
梅津瑞樹
■ウメツ ミズキ 1992年、千葉県出身。鴻上尚史主宰の「虚構の劇団」所属。『虚構の劇団 第14回公演「ピルグリム2019」』など劇団公演で活躍するかたわら、外部作品にも精力的に出演。『舞台「刀剣乱舞」慈伝日日の葉よ散るらむ』(2019年6~8月)で、山姥切長義役を演じ話題に。2019年11月8日~11月17日には『ミラクル☆ステ―ジ『サンリオ男子』 ~ハーモニーの魔法~』(梅崎慎矢役)、12月7日~15日には『本格文學朗読演劇 極上文學 第14弾 『桜の森の満開の下』~孤独~』(鼓毒丸役)にも出演が決定している。