大地真央主演!音楽劇『ふるあめりかに袖はぬらさじ』、待望の再演が実現!

2019.09.18

幕末、横浜の遊廓を舞台に、儚く散った花魁の悲恋と、たくましく生きるお人好しの芸者の姿をドラマティックに描く『ふるあめりかに袖はぬらさじ』。さまざまな役者、さまざまな演出家により何度も上演されてきた有吉佐和子の名作を、新たに音楽劇として上演したのが2017年のこと。当時の高い評判を受け、2年ぶりに待望の再演が決定! 初演に続き、芸者・お園を演じる大地真央に初演時のこと、作品への想いなどを語ってもらった。

2年前の初演を振り返ると、どの思い出が一番印象深いですか。

実は私、舞台で三味線を弾くことが初めてだったんです。それなのに三味線芸者の役ですから、誰よりもこなれていなければいけないわけで。ですから最初の入口として、まず三味線で大変苦労したことが思い出されますね。

では、事前にお稽古をされて。

そうですね。それから、このお園という人はおしゃべりで、もう、セリフがすごい量なんですよ。しかも嘘に嘘が重なりすごく大きくなっていく展開になり、まるで講談師のように調子よく語る場面まであって。そこも本当に大変でしたけれど、やっているうちにどんどん楽しくなっていきました。そんな気持ちが自然と伝わって、結果的にとてもお客様も楽しんでくださったのかなあと思いますね。

その作品を、2年後に再びできると聞いた時はどう思われましたか。

再演できるというお話が出た時は、とてもうれしかったです。今回は音楽劇という形になっていますので、作品としてもとても見やすくなっていると思いますね。音楽の持つ力というのはすごく大きいですからね。もちろん楽しい場面があるだけではなく、悲しみを歌で表現するところもありますし。お園の心情にピタッとフィットするような歌詞であり、曲であり。素晴らしい楽曲を含め、いい作品に仕上がったからだと思いました。

潤色・演出の原田諒さんとは、初めての顔合わせでしたが。印象に残っていることは。

稽古場で、本当にいろいろなことを話し合いながら一緒に作っていきました。原田先生はとても勉強家で、着物のこともメイクやカツラのことも、いろいろなことをよくご存知なんですよ。宝塚歌劇団という共通項があるおかげで、お互いに遠慮なくいろいろと意見を出し合ったりもでき、お稽古がすごく楽しかったです。

今回、再びお園という役と向き合うことになって、改めて思うことは。

さらにより深く、お園という人を掘り下げて演じたいと思っています。お園は明るくて飲んべえで、すぐ調子に乗るおっちょこちょいなところ、そしておしゃべりなところもあれば、ちょっと悲しく切ない部分もあって。花魁の亀遊(きゆう)さんに対しては、母性愛みたいな気持ちも抱いているんですよね。そして、とてもお人好しでね。

とっても、いい人ですよね。

そう、いい人なんです(笑)。嘘をついたのも、やれと言われてのことだし、ある意味サービス精神だったわけですから。

お園さんとしては、良かれと思って言っただけで。

そう、そうなんです(笑)。だけど、私としては今までやったことがない役どころでしたし、それこそ有名な大女優の方々に加え、坂東玉三郎さんも演じた役柄でしたから、最初はプレッシャーもありました。

お園を演じる時、大地さんが一番意識したことはどんなことでしたか。

遊廓・岩亀楼(がんきろう)に拾ってもらった三味線芸者の悲しさを背負いながらも、非常に明るい人でもあるので、決して一色(ひといろ)ではない年増芸者の雰囲気でしょうか。

人前で明るくしてはいても、過去には何かあったんだろうなと思わせるようなところもありますよね。

はい、だけど物語的にはそれほど、お園さんのことは詳しく描かれていないんです。花魁の亀遊さんのことは、いろいろ説明があるんですけれど。だからこそ、ミステリアスというか。私の中でのお園像は、それが正しいか正しくないかは別として、ひとりの人物としてどういう過去があったのかみたいなことは自分で想像し、組み立てて演じていました。

特に共感できるところはありましたか。

演じるとなると、まずは自分が一番の理解者になるんです。だから、すべてに共感していましたよ。

それはどんな役を演じる時も、そうなんですか。

そうですね、その感覚は毎回あります。

もともとは1970年ごろに書かれた作品なので、現代から見ると時代的にちょっと違うなという部分もありますが、それでも今にも通じる思いがたくさん込められた戯曲のようにも思います。大地さんから見て、この戯曲の魅力とは。

この物語で描かれているのは、まだ女性が差別を受けていた時代です。だからこそ亀遊さんみたいな人と、そこでもたくましく生きていくお園、という風に分かれているわけで。今だったら、あんなことされたら誰も黙っていないでしょうね(笑)。でも、そういう時代背景から生まれる切なさというものも、あると思うんです。そして瓦版から嘘が拡散していって、その嘘が真実のようになっていくという展開なんて、今の時代に似ているところもありますよね。

確かに、そうですね。

だから古くて、でも新しい。とはいえ、人間の本質的な部分は昔も今も変わらないですから、なんだか最後にはあったかい気持ちにもさせてくれる。さまざまな魅力が詰まった、不思議な戯曲だなって思います。手前味噌みたいですけれど(笑)、本当にとてもいい作品に仕上がっているんです。華やかで、ちょっと切なくて。きっと観終わったあと「明日からがんばろう!」という気持ちにもなれる作品でもあります。ぜひとも、劇場にお越しください!

(取材・文/田中里津子)