怪獣やヒーローが登場する鴻上尚史の新作に中山優馬が挑む

正義、真実、愛、そしてエゴとは何かを問う、KOKAMI@networkの最新作『地球防衛軍 苦情処理係』。今回の舞台は“怪獣”や“ヒーロー”が存在する近未来。鴻上作品としては新鮮な切り口のファンタジーでありつつ、現実世界にも通じる出来事が次々と起き、観客を大いに笑わせ、ハラハラさせ、考えさせる問題作だ。昨年の『ローリング・ソング』で鴻上と初顔合わせを果たした中山優馬が引き続き登場し、主演を務める。

鴻上「前回出ていただいた時、求めた水準にしっかり応えてくれて、芝居に対する態度もとてもまじめだったものですから。一回だけではもったいないと思い、また出ていただくことにしました」

中山「まさかこんなに早く、再び鴻上さんの作品に出させていただけるなんて、本当にうれしいです。それにしても今回も鴻上さんの目のつけどころはすごいと思います。『地球防衛軍』というだけでも面白いのに、苦情処理係ですから（笑）。一体どんな物語になるんですか」

鴻上「さまざまな怪獣が出てきますし、ハイパーマンというヒーローも出てきます。地球防衛軍の航空隊がミサイルを怪獣に対して撃っている分にはそんなに町も壊れなかったのに、そのハイパーマンが怪獣と戦うとなると、放り投げるわ、いろいろ倒すわで被害が倍増するんですよ。それで苦情がさらに増えてしまうというわけ。今って、なんだかみんな正義の使者になりたがって、ＳＮＳで呟くことで自分を主張する時代になっていますよね。しかもクレームを言うことが正義だと思っている節がある。今回は、それを苦情処理として受け入れる人間たちの話なんです」

怪獣もヒーローも、今作のためのオリジナルデザインのものが登場するという。舞台上で、どんな演出を考えているのかも気になるところだ。

鴻上「そこは僕も気になります（笑）。なにしろ今は僕、台本執筆中の作家の時期なので、好き勝手に書いているんです、『怪獣が爆発する！』とかね（笑）。実際にそれを舞台上でどう表現するかは書き上げた後に、演出家として改めて考えます。でも僕も長く演出家をやっていますから、演劇にできないものなんてないと思っているんですよ。映像を駆使したり、地球防衛軍のミニ戦闘機が飛ぶ場面も黒衣が手に持ってブーン！って言いながら走れば、それはそれでなんとかなるので。そういう意味では、とても演劇的な楽しさに満ちた舞台になることは間違いありません！」

しかし苦情処理係の役ということは、中山自身には戦うシーンはないのだろうか。

鴻上「いわゆる生身の人間としてはないかもしれないですけど……２時間ずーっと苦情処理するだけだったら、ふざけるな！ ってクレームが出るでしょ（笑）。そこでハイパーマンと絡めながら、何かが起きるわけですよ。優馬のファンは彼のカッコイイところを見たいだろうから、その点に関しては裏切りません、と保証しておきます」

中山「もはや、ひとつの顔を見せるだけでは鴻上さんは許してくださらないでしょうから。今回はいろいろな顔、いろいろな感情をしっかりと出していきたいとも思っています」

鴻上「笑いあり、ダンスもあり、もちろんファイティングもあり。怪獣だけではなく、おそらく優馬もファイティングをします。とにかく、いろいろなお芝居の楽しさをギュッと集めて、間違いなく面白いものにするので、ぜひ劇場にお越しください」

インタビュー・文／田中里津子

※構成／月刊ローチケ編集部　10月15日号より転載

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【プロフィール】
鴻上尚史
■コウカミ　ショウジ　劇作家・演出家。「KOKAMI@network」と、‘08年に旗揚げした「虚構の劇団」での作・演出を中心に幅広く活動している。

中山優馬
■ナカヤマ　ユウマ　元NYCのメンバー。俳優としてはドラマ「バッテリー」（’08年）で初出演にして初主演、舞台「ドリアン・グレイの肖像」（’15年）で初単独主演。