PARCO劇場オープニング・シリーズ第1弾『ピサロ』渡辺謙&ウィル・タケット(演出)インタビュー

新生PARCO劇場オープニング・シリーズ 第一弾に渡辺謙主演『ピサロ』

 

2020年にグランドオープンするPARCO劇場オープニング作品第一弾として、伝説の舞台『ピサロ』の上演が決定。本作は、同劇場で1985年に山崎努がピサロ役で主演を、相対するインカ王アタワルパを渡辺謙が演じて大成功を収めた。振付家であり、『良い子はみんなご褒美がもらえる』など日本での活躍も目覚ましいウィル・タケットが演出する。

渡辺「35年前、僕が俳優として世に出るエポックになった『ピサロ』を、当時の役とは変えて、ピサロで演じないかと話があったとき、ロジカルではなく、純粋に面白いと思いました。改めて台本を読むと、年齢を重ねたからこそストーリーやピサロに共鳴する部分も多い。一周してもう一回、自分の原点に戻る作品になりそうです」


PARCO劇場の舞台に立つこと自体が、なぜか俳優人生のエポックになるという渡辺。俳優としての覚悟が必要だと語る。

渡辺「劇場って、ある種の生き物だと思うんです。これから新しい歴史を刻んでいく、まったくの一ページを僕らが書き込まなければならない。息吹を吹き込むような、そんな覚悟を持ってPARCO劇場と相対さねばと思っています」ウィルと渡辺のタッグは今回が初めてだが、すでに同志の気配をまとう。今後の稽古やディスカッションにウィルは期待を抱いていた。

ウィル「彼(渡辺)の真横で言うのもなんですが、崇拝(admiration)の気持ちなので、ご一緒でき興奮しています。先ほども二人で話しましたが、ピサロは実に複雑な人物像。彼の心理的な旅が非常に興味深いね、と。稽古は大変でしょうが、渡辺さんは〝骨にしっかり肉がついている役者〟です。新たな役で再挑戦されることも、楽しみにしています」


崇拝は言い過ぎで、せめて尊敬だと苦笑いの渡辺。しかしウィルは言葉を続けた。

ウィル「渡辺さんは自分の軸(still center)を持っている。まるで嵐(台風)の目のよう」

渡辺「台風の目は本来すごく静かだけど、俺はぜんぜん静かじゃないからね」

ウィル「そうだとしても、あちこち行かず、パワフルですよね。周りのキャストを惹きつけ、舞台に立てばお客様の目をグッと惹きつける」

脚本は、『アマデウス』『ブラック・コメディ』など日本でも有名な英国劇作家ピーター・シェーファー。脚本の面白さを渡辺はこう語る。

渡辺「彼の脚本には、誰かの語りで始まる、という特色があります。こういうことがありましたと語られる中で僕らは演じる、つまり、そこに一つフレームが入ってくるわけです。語り手の視点だから、真実かもしれないけれど、事実をそのまま伝えているかどうかはわからない。そこが面白いと僕は考えるんです。稽古次第でものすごい飛躍もできるし、消し去ることもできる、非常に創造的です」


さらに、スペインとインカ帝国という異文化が衝突する展開には、渡辺自身のこれまでの活動経験が活きるとも言う。

渡辺「僕が外国で仕事をするようになってから、どんな場面でも、異文化を自分の中にどう取り入れるか、というプロセスが必ずあります。『ピサロ』も、自分とは違う人間を、どう受け入れ、反発し合うかを描いている物語。パーソナルな〝人対人〟を、21世紀のいまのお客様にどうお届けするか。僕自身にとっても有意義な時間になるはずです」


来年3月に幕が開いても、物語同様、人生で本当に見つけたいものを〝毎日探していく〟意気込みでいる二人。濃厚で熱量の高い舞台が見られそうだ。

 

インタビュー・文/丸古玲子
撮影/篠塚ようこ

 

※構成/月刊ローチケ編集部 11月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります

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【プロフィール】
渡辺謙
■ワタナベ ケン ’59年、新潟県出身。世界各国の映画を中心にドラマ、舞台、CMなど幅広く活躍する日本を代表する俳優。


ウィル・タケット

■ウィル・タケット 英国ロイヤル・バレエ出身。英国のみならず世界で活躍する演出家、振付家。