東京は豊洲、IHIステージアラウンド東京にてロングラン上演中の劇団☆新感線『髑髏城の七人』も、2017年11月末にいよいよ第4弾の“Season月”が開幕。2018年2月末まで劇団史上初の“ダブルチーム”制でフレッシュ感溢れるステージを繰り広げている。その“上弦の月”チームで<極楽太夫>を演じるのは、新感線の看板女優のひとり、高田聖子。過去の『髑髏城~』では1990年初演版で<沙霧>、1997年版と2004年版『アオドクロ』では<極楽太夫>、2011年版では<贋鉄斎>と、さまざまな役柄を演じてきた高田に、今回のヴィジュアル撮影を終了した時点で作品への想いを語ってもらった。
――“Season月”はダブルチーム制ということですが、劇団としてもこのスタイルは初めての挑戦になりますね。
高田「そう、初めてですね。最初に聞いた時は、何のメリットがあるんだろうと思いましたけど(笑)。だって、ダブルに大変になるわけじゃないですか。倍の時間、稽古ができるのならいいですけど、そういうわけでもないですし。ということは、どうなんだい……?と思って。いつも、1チームの時でも「稽古時間が足りへん!」って言っているのに。」
――それが、2チーム同時に稽古をすることになるので。
高田「ひっどい話でしょ、楽しみですね~なんて言葉は、今のところは出てこないですね。ホント、どうなるんだろう、勝算はあるんでしょうかね。(演出の)いのうえ(ひでのり)さんは「俺は無理だって言ったんだよー!」って言いそうですけど(笑)。私、いっそのこと“月”チームは一切、戦わないってことにしたらいいと思うんですよ。かっこいい殺陣はしないで、リアルな戦術のみにする。ま、(早乙女)太一くんだけはやっていただくとしても、他は砂を投げるとか、見苦しい戦い方でいいんじゃないかな。“百人斬り”も、個人的にはやめたらいいと思って。」
――名場面がなくなっちゃいますよ(笑)。
高田「何か、違う名場面を作ればいいんですよ。百人に向けて砂を投げる、全員を落とせるでっかい穴を掘るみたいな、何か別の胸をすくような方法で。そんなバカな!ってくらいにスカッとするようなやっつけ方、ないですかね(笑)。」
――<極楽太夫>も多少は戦うシーンがありそうですが。
高田「あいや、でも今回は私と羽野(晶紀)がやるということは、もう、“年増太夫”ってことでしょ(笑)。だから、今までの太夫とは絶対に違うわけですよ。同じようにやれってことになったら、ちょっとどうかしてますよ。設定を少し変えてもらわんとキビシーです。<兵庫>との関係にしても、それこそ親子くらいの年齢差がありますから。」
――これまでの人間関係ではなくなるかも。
高田「惚れるとか、普通では考えられないと思うんですけどね。まあ、どっちにしろ、これまでのような“いい女”設定はあり得ないです(笑)。だから、“いい女と勘違いしている”設定、もしくは“ど根性母ちゃん”設定とかでもいいと思うんですが。じゃないと、私と羽野さんがやる理由がよくわからないですからねえ。」
――『髑髏城~』を“花・鳥・風・月”、そして“極”と、趣向を変えて上演していくという今回の企画のことを聞いた時には、どう思われましたか。
高田「それもやっぱり、何の勝算があるんかなって思いました(笑)。決して安いチケット代じゃないし、よっぽどの作品のファンの方ならまだしも、コンプリートするのは大変な事じゃないですか。そう考えると、4番目の“月”は不利ですよね。だってこれまで、いろいろなパターンで上演されてきてますから。」
――でも“月”は、初参加のキャストも多いですし。新感線を観たことがないお客様もいっぱい来られるかもしれませんよ。
高田「そうか、私たちのこと知らないお客様がね。とはいえ、そのご新規のお客様を安易に喜ばせたくはないですね。その方々が知っている初参加キャストの良さとは全く違うものを観て楽しんでいただきたいです。彼らの未知の顔を観て驚いていただけたら、私たちも嬉しいし、初参加のみなさんに出ていただいた意味もあるんじゃないでしょうか。だから彼らにはいっぱい苦労してほしいです。勿論我々も負けないように頑張りますがね、美しい若者の苦しむ顔も滴る汗も美しい!苦しめば苦しむほど見応えのあるものになるんじゃないかなと思っているので。」
――その様子を、優しく見守る<極楽太夫>になるんでしょうか。
高田「そう、家政婦のようにどこかの隙間から「よし、苦しんでるな…」とね(笑)。」
インタビュー・文/田中里津子
Photo /村上宗一郎
【プロフィール】
高田聖子
■タカダショウコ 1967年7月28日生まれ。奈良県出身。大学在学中にスカウトされ1987年『阿修羅城の瞳』より劇団☆新感線に参加。現在に至るまで、看板女優としてヒロインから悪役まで幅広いキャラクターを演じてきた。また、自身が座長を務めるプロデュース集団『月影十番勝負』、『月影番外地』の公演では、劇団での姿とはまた別の魅力を発揮し好評を博している。劇団公演以外の主な出演は、映画『過激派オペラ』、舞台『いやおうなしに』『空中キャバレー2017』『俺節』など。