白鳥雄介インタビュー│Stokes/Park 2nd『フィルタリング』

前作、旗揚げ公演「BRIDGE × WORD」(ブリッジバイワード)では、600人を超える動員を達成。架空の病「ワードホリック」という脳内から言葉とその意味がどんどん抜け落ちていくという設定の父親と、その父親に自分が書いた小説を読ませたい娘の切なさと、言葉が失われていくことで生まれる笑いとある種の恐怖を描いた。今作でも、誰しもに訪れる人間の弱みをテーマとした笑いと怖さが同居する作品を作ろうと意気込む演出・白鳥雄介。

 

―旗揚げ公演から1年、Stokes/Parkとして2作目になりますが、前作から心境の変化はありましたか?

前作よりも、より「こだわり抜こう!」という気持ちが強くなりました。旗揚げ公演のときは、初めて一緒にお芝居をやる役者も多く、沢山のディスカッションを経て芝居が組み上がっていきました。僕はもともと自分の考えたことに、一緒に作り上げているキャストさんやスタッフさんの意見や目線を加えていった方が面白くなると思っています。その形自体は変えてませんが、今回は「この人と一緒に作りたい!」というキャストさんに声を掛けさせて頂き、一緒に脚本の中身も、演出も考えてもらいながら稽古をしています。お互い妥協せず、もらった意見と自分の考えを真っ向からぶつけることを怖がらずに作っています。
役者さんもこの時期になってくると、僕の頭の中を超えて「この役ならこんなことを考えて動くんじゃないか」とか「ここでこういう意外性も出せる」など、色々な提案をしてくれます。脚本の中に良い意味で「遊び」が出てくるので、その意見が稽古で出続けるように意識して関係を作っています。役者さんの気持ちが入った演技を提案してもらえると、脚本を書いた自分でも想像もつかないシーンが生まれます。

―稽古の様子はいかがでしょうか?

前作に出てくれていた太田知咲さん、田中達也くん、十河大地くん、内田めぐみさんら、僕のスタイル、質感を一度理解してくれている役者がいることで、初めて一緒にやる役者にもスムーズに稽古に入っていくことができて、前回よりも手応えを感じています。昨年末から稽古していますが、昨年内は脚本に関するディスカッションを全員で推し進め、改稿に改稿を重ねて、ようやく2020年元日の朝に最終稿へと辿り着きました。正月休み返上で、年またぎで書いた脚本ですので、報われていたいです(笑)
年明けからは、ガンガン立ち稽古してキャストさんと笑って笑って、和気藹々と稽古しています。今作の主演の大野泰広さんや、裏メイン的な位置である信江勇さんが生き生きと仕掛けてくるので、全員それに負けじとぶつかり合って、笑い合ってます。

―『フィルタリング』というタイトルに込めた意味を聞かせて下さい。

日本人はいつも何かを「選択」して生きていけていると思うんですよ。もっと言うと何かを「選択しないで」生きている。選べる道の数がすごく多いと思います。
一個を選ぶと言うよりも、何かを切り捨てているような感覚があるんです。
「フィルタリング」は、自分の欲求にそぐわない選択を排除して生きている僕らの豊かと言えばいいのか、贅沢と呼べばいいのか、良し悪しも判断がつかない人生の判断基準はどこにあるのかを投げかけるお芝居にしたいと思っています。

―ズバリ一番の見所は?

コメディと銘打っていますが、全くそうじゃないシーンが差し込まれています。
笑ってもらえるような明るいシーンの後に、ゾゾっとしてしまうような事実が次々にわかっていくようなスタイルの脚本を書きました。見る人によって、それがどんどん笑えていくものにも、狂気に満ちた世界にも見えていくよう、見る人によって感想が全く変わるんじゃないかと思っています。演劇ならではと言えば良いのか、小劇場だからこそ、臆することなく、一般的にはタブーとされるような一面もほんの少し入れ込んで、チャレンジにチャレンジを重ねたストーリーになっているんじゃないかと思います。
それでもラストはなぜかほっこりとするようなシーンになっており、劇場を出るときには清々しく出られるかと思いますので、是非、観に来てください!!

―クラス編成の思い出(クラス替えに関するエピソード)が何かあれば!

僕、クラス替えは結構ラッキーで、大体仲の良い友達と一緒のクラスでした。クラスの中では目立たなくて大人しい、それでいて当時は別の学校の高校生と漫才をしていたり、扱いにくいやつだったと思うんですけど、クラス替えしても必ず仲良い友達は誰かしらいて、極端な孤立はしたことがありません。僕は教育学部出身で周りの友人に教師の方も多く、今回の脚本を書くにあたって取材をしたら、当たり前と言えば当たり前ですが、成績がクラスによって偏らないようにというのはもちろん、友人関係なども大いに考慮して編成しているんですって。ラッキーじゃないんだって、大人が意図して作ってくれた環境なんだって、少しだけ寂しくなりましたけど、先生たちは僕らのこと沢山考えてくれていたんです。
今回の脚本に出てくる先生たちは一体、何を考えているのか・・・
劇場へ観に来てください!!

 

●Stokes/Parkとは

ストークスパーク。白鳥雄介主宰の舞台ユニット。2018年旗揚げ。
情熱を燃やす場所。心の火を大きくする場所。

 

●白鳥雄介プロフィール

脚本/演出/俳優
高校時代、M-1甲子園(全国高等学校お笑い選手権)にて2年連続決勝大会(なんばグランド花月)に進出。その後、北海道札幌市にてローカルタレントとして、役者、テレビレポーター、ラジオパーソナリティとして活動。2016年からは作家活動を本格化させ、翌2017年、上京。
コメディを中心軸に過去と未来、他者と内面など両極を描いて、「今」を描き出していく。また舞台本番でドッキリを仕掛けたり、完全アドリブシーンを加えるなど、舞台ならではドキュメント性を追求している。