『27- 7ORDER -』開幕レポート

2020.02.10

2019年に上演され、話題を呼んだ7ORDER project(安井謙太郎、真田佑馬、諸星翔希、森田美勇人、萩谷慧悟、阿部顕嵐、長妻怜央)による舞台「7ORDER」。そのスピンオフ作品となる、真田佑馬(以下、真田)の主演舞台「27 -7ORDER-」が、2月9~16日に東京・天王洲 銀河劇場、2月21日~3月1日に兵庫・AiiA 2.5 Theater Kobeで上演される。脚本を劇団鹿殺しの丸尾丸一郎と河西裕介、演出を丸尾が手がけ、真田のほか定本楓馬(以下、定本)、財木琢磨(以下、財木)、梅津瑞樹(以下、梅津)、北川尚弥(以下、北川)、中島健(以下、中島)、松田昇大(以下、松田)、高橋祐理(以下、高橋)、前田瑞貴、白石康介(以下、白石)、瓦林拓弥(以下、瓦林)、石井美絵子(以下、石井)らがキャスティングされている同作。真田や「7ORDER」の世界観と、ミュージカル『テニスの王子様』をはじめ、舞台『刀剣乱舞』や『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』といった大人気作品で活躍する面々がどのような化学反応を見せてくれるのだろうか。ここでは会見とゲネプロの模様をお伝えする。会見には真田、定本、財木、梅津、北川、中島、松田、石井が登壇。ストーリー中で、27歳である主人公のユウマと、その父でやはり27歳で夭折した伝説のギタリスト・カズマの二役を演じる真田は「二役がすごく大変ですが、全力で演じたい。ステージをはけてまた出てくるのではなく、その場で着替えることで父親になったり息子に戻ったりする。着替えて役を切り替えている瞬間はまた別の役みたいな部分もあるので、そこを含めて注目していただければ。ユウマとカズマが同じ27歳までの人生をどう歩んでいったのかを見てもらいたい」と意気込みを語った。

その中身については「ダンスと歌が盛りだくさんの作品。その要素をいかに舞台に落としこむかがカギになると思う」(梅津)とヒントが。そして作品テーマについては「誰もが人生で一度は“音楽に救われた”“音楽に勇気をもらった”経験があると思う。この作品がそういう存在になれたらいいなと」と紅一点の石井が語った。

同作の脚本と演出を担当する丸尾が「最初は“愛と暴力とセックス”みたいなトガった作品にしてやろう! という話から始まりましたが、結果的に“親と夢と仲間”みたいなあったかい舞台になった」と見どころを語ると、真田が「僕の人柄ですかね~?」と茶々を入れる。「作品のモチーフになっている27クラブ(注:ニルヴァーナのカート・コバーンなど、27歳で夭折したアーティストや俳優たちのリストのこと)みたいに、ショットガンで頭を撃ち抜くみたいな死に方ができない凡人たちが、「27クラブみたいな伝説になりたい」とあがく姿を描いた等身大のロックな音楽劇。だからこそお客さんにも響くと確信している」(丸尾)と自信のほどをのぞかせた。

稽古については「(バンドシーンは)実際に貸スタジオに入って汗だくで練習した」(定本)、「演奏を指導していただいた方から「バンドっていいなあ」という言葉をいただいたのが印象的で。全力でひたむきに何かに取り組むのはすてきなことなんだと、この舞台を通じて伝えていきたい」(真田)と振り返った。また音楽作品ということもあり、「みんなの個性を知るためにそれぞれ好きなバンドを聞いてみて、特に僕と同じ27歳チームが聴いていたのはだいたい一緒だった」(真田)、「RADWIMPSさんとか」(定本)とのことで、和気あいあいとしたムードをのぞかせていた。

 

さて、同作の舞台は、多国籍民の流入によって荒廃した、いつかの時代のどこかの国。国民を統制するために、個人をAからZまでランク付けする“AZ法”(優性遺伝保存法)という法律が施行され、下位ランクの人間は音楽を聴くことやバンド活動も禁止されていた。国からダウンクラスのZに分類されたユウマは、この法律に抵抗するため仲間たちと“7ORDER”というグループを結成。しかし、「バンドをやろう!」と盛り上がるメンバーをよそに、一人浮かない表情をしていた。

実はユウマの父・カズマは、伝説のロックバンド「memento mori」のギタリストだった。しかし、ユウマを産んだのちにすぐ亡くなったという母の後を追うように父もこの世を去り、ユウマは両親について知らずに育った。唯一の手がかりは、父が残した一冊の日記帳。自分を捨てた父への怒りと悲しみから「親父みたいにはなりたくない」と思っていたユウマはその日記帳を開くこともなく、バンドを組むことにも抵抗を感じていたのだった。

物語はユウマとカズマがたびたび入れ替わる形で進んでいく。複雑な家庭に育ち、そのトラウマから女性を愛せなかったカズマは、同じバンドのボーカル・ショー(定本)と深い関係にあった。27クラブのミュージシャンたちに憧れるものの、ドラマーのヒビキ(白石)、ベーシストのゴロウ(瓦林)とはバンドに向ける熱量が違い、「こんなんじゃ伝説になれない!」とカズマはいら立ちを隠さない。このパンクやグランジなどの攻撃的なニュアンスのサウンドを叩きつけるような、memento moriでの演奏シーンの熱量の高さはかなりのものだ。

27年後、息子のユウマはZ地区の高校の同級生・ゲンキ(中島)とつるんだりしているが、ある日、AZ法の施行以来、なかなか会うことのできなくなった検閲庁勤めの幼馴染・ヤマト(財木)から「“悪魔のCD”と呼ばれるmemento moriのCDを探してほしい」と頼まれる。自らのルーツを探すためにその依頼を引き受け、闇CD屋の「LOVE MUSIC」という店に行ったユウマは、27クラブに憧れCDやレコードなど音楽の保護活動に勤しむスコアクラブのメンバー・カート(梅津)、ブライアン(北川)、シド(高橋)、ジミヘン(松田)と出会う。ギターを弾き語るユウマに合わせ、スコアクラブの面々がいつしか踊り始め、意気投合していく両者。このシーンを含めダンスシーンも多いのだが、スコアクラブの息の合ったキレキレのダンスにも注目したい。NML(音楽活動規制法)が施行され、父・カズマのライブに警察が踏み込んだある日、memento moriのファンであるジャニス(石井)がメンバーの逃亡を手伝う。それをきっかけに女性嫌いだったカズマに変化が訪れ、ジャニスと愛し合うようになるのだが……。カズマとジャニスが掛け合いで歌うシーンでの、ミュージカルでも活躍している石井の凛々しい歌声にもはっとさせられる。

父の日記には記されていないmemento moriのラストライブの日に、いったい何があったのか。ユウマはそれを意外な人物から聞かされることになる。歌、ダンス、バンド演奏とこれまでに培ってきた経験を存分に反映させ、エンディング曲も真田が手掛けたという同作。“音楽”や“表現”について込められたメッセージが実にストレートで、森田美勇人主演の「RADICAL PARTY-7ORDER-」ともテーマ的なリンクを強く感じさせる。客入れ時のBGMがまさに27クラブの名曲満載だったり、バンドマン&バンギャ的なロックファッションに身を固めたキャストたちのハマり具合も含め、さまざまな角度から楽しめる作品だ。

 

文/古知屋ジュン

©️ 7ORDER project