ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 Produced by TBS <下弦の月>霧丸役 松岡広大 インタビュー

現在、東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京にて上演中の劇団☆新感線『髑髏城の七人』。2017年3月にオープンして以来、“花・鳥・風・月”、そして“極”と5つのシーズンでそれぞれに脚本、演出、出演者を変えながら上演してきた、ビッグプロジェクトだ。その第4弾にあたる“Season月”では劇団史上初の“ダブルチーム制”に挑戦、“上弦の月”と“下弦の月”という2チームが日替わりでステージを務めている。その“下弦の月”で<霧丸>に扮しているのは松岡広大だ。新感線にはこれが初めての参加となる松岡に、製作発表の段階で意気込みなどを語ってもらった。

 

――この『髑髏城の七人』の“Season月”への出演のお話を聞いた時は、どう思われましたか。

松岡「正直、夢のようだと思いました。前から憧れていたというか、役者だったら絶対にみんな出たいと思うだろう劇団☆新感線さんの作品にまさか自分が出られるなんて。僕、たまたま駅にいる時に連絡があったのですが、とにかくうれしくて、つい大声を出しちゃいましたからね、「やったー!!」って。周りの人が、ちょっとビックリしていました(笑)。」

 

――『髑髏城~』という作品についてはご存知でしたか。

松岡「はい、DVDやゲキ×シネで小栗さんが出られていた“ワカドクロ”(2011年版『髑髏城~』)を観ていたので。中島かずきさんの脚本にしても、いのうえひでのりさんの演出にしても、もう最高のタッグですよね。古田(新太)さんが捨之介を演じていた初演(1990年)から時が巡って、こうして2017年の冬に僕が出られるなんて本当にありがたいですし、この一座に加われることがものすごくうれしいです。」

 

――しかも演じられるのは、今回ならではの新たなキャラクターで。

松岡「そうなんです。これまで沙霧だった役柄が、霧丸という名の男性になるので、最初「え、沙霧が?男になるの?」ってビックリしました。ちょっとBLみたいになってしまうのかなって一瞬思い、僕、マモさんとどうにかなるのかな?って(笑)。でも台本を読んだら、今までの捨之介と沙霧の関係もそうですけど、今回の捨之介と霧丸の関係もとても心に響くものがありました。男同士になることで、今回はいい相棒感、舎弟と兄貴感が出せたらと。実年齢も宮野さんとは離れていますから、その関係性の中で、いいバディ、チームワークをふたりで見せていきたいです。」

 

――でも、沙霧が男になるっていうそれだけでもだいぶカラーが変わりそうですね。

松岡「そうですね、霧丸というキャラクターも、演じていてとても面白いなと思います。身体能力が高くてすばしっこくって、だけど力は弱いし戦いにはあまり慣れてない、みたいな。ちょっと口が悪い、ワルガキみたいなところもありますし。そんな山の民が、一幕、二幕の間に徐々に成長していくところも、ハッキリ差別化をして演じていきたいなと思っています。」

――稽古までに何か準備していることはありますか。

松岡「準備というか、言葉がちょっと難しいので、意味をちゃんと辞書でひいて書いておくようにしています。あと時代背景も、天正十八年とか織田信長とか豊臣秀吉とか、戦国時代のバックグラウンドを調べていて。当時の身分の差、階級制度はどうだったのかとか、僕が演じる霧丸はそのヒエラルキーのどのあたりにいるのかとか。そういうこともいろいろと勉強しているところです。」

 

――台本にメモしたりして?

松岡「はい。台本にも書きますし、あと今回もう一冊“髑髏ノート”を作りました(笑)。冒頭から天魔王が難しいセリフを言うシーンも、最初はよくわからなかったので、何を言っているのかなーと思って調べてみたら、なるほど、すごいな、それはつながるなと思いました。」

 

――そうですね、これまでの『髑髏城~』にはなかった場面のセリフですし。耳で聞くだけでは最初はわかりにくいかも。

松岡「ですよね。あの「六欲天をご存知か。天でありながら未だ欲が生きる世界だ……」って。」

 

――えっ、もしかして天魔王のセリフ、覚えているんですか(笑)。

松岡「だって、あのセリフ、すごくカッコイイじゃないですか(笑)。」

 

――すごいですね(笑)。そして、これまた新感線初の試みなんですが、今回はダブルチーム制です。

松岡「正直なところ、ダブルチームということはどうしても比べられるとは思うのですが、そこはいい意味で観比べていただきたいというか。つまり、“下弦”を観てください!と誇張するのではなく、両方を観ていただきたいということです。役者が変われば雰囲気が絶対に変わるので。絶対という言葉はあまり使いたくはないのですが、アプローチの仕方も違えば、それぞれの役者がどういう経験をしてきたかの違いもあって、その経験が芝居に活きてくると思うんです。僕と平間壮一さんの霧丸も違いますし、宮野真守さんと福士蒼汰さんでまったく違う捨之介になるだろうし。必ず、似て非なるものになると思うんです。ちなみに稽古場では一緒に作ってきましたが、本番中になったら交互に上演されるわけなので、僕らは顔を合わすことがなくなってしまうのですけが、でも、どこかで“上弦”の本番を観に行きたいという気持ちも……。」

 

――ありますか?

松岡「ちょっと、あります。影響されてしまわないかな?という心配もありますけど、でもとりあえず落ち着いてから、です(笑)。」

 

――“下弦”チームの座長は、宮野さんですが。

松岡「すごく、安心しています。一言、二言、話しただけで、あの人の深さとか広さ、優しさを感じましたし。何より立ち振る舞いが丁寧なんですよ、年下の僕に対しても。もし苦しいことがあっても、きっとあの笑顔に支えられると思います。引っ張っていくというより、自然とみんながついていきたくなるような座長になるのではないかな、と客観的に思いました。宮野さんのためだったらなんでもするぞっていう覚悟でいます、僕は。」

 

――稽古、本番に向けて一番の楽しみはなんですか。

松岡「自分の役に関して楽しみなことと言えば、やはりお客様は沙霧が霧丸に、男になることでどう進化し、どんな新しい発見があるかが気になっていると思うので、そこのところはちゃんと、どういう変化があるかを誇示していきたいという想いがあります。そしてこれまで“花・鳥・風”とやってきて、この後“極”もあるものの、一応この流れとしては最後となるのがこの“Season月”なのでこの際だから言いますけど、やっぱり“下弦の月”をぜひ観てほしい。さっき、両方観てほしいと言ったばかりですが、せっかく僕がこうしてお話しさせていただいているわけなので(笑)、ここはまず“下弦の月”を先に見上げていただいて。“下弦”ではこういうことがあった、じゃあ“上弦”ではその場面はどうなるんだろう?って、そんなちょっとした好奇心が生まれたら、両方観ていただく、と。そしてこの作品を通して舞台、演劇をより親しみやすいものに感じていただけたら、とてもうれしいです。」

インタビュー・文/田中里津子
Photo /村上宗一郎

 

【プロフィール】
松岡広大
■マツオカコウダイ 1997年8月9日生まれ。東京都出身。2010年よりラジオ、CM等で活躍。2012年に出演しいた『特命戦隊ゴーバスターズ』で注目を集め、2013年『FROGS』で舞台デビュー。2015年から上演されているライブ・スペクタクル『NARUTO―ナルト―』シリーズでは、主人公のうずまきナルト役を務めている。近年の主な出演作に、ドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』、『ファイブ』、映画『雪女』、『茅ケ崎物語~MY LITTLE HOMETOWN~』など。劇団☆新感線には本作が初参加となる。