『蘭 ~緒方洪庵 浪華(なにわ)の事件帳~』 会見レポートが到着

2018.04.18

縁を感じるエピソード満載、初共演の藤山扇治郎と北翔海莉

『蘭 ~緒方洪庵 浪華(なにわ)の事件帳~』取材会レポート

 

江戸時代後期、大坂に適塾を開き、天然痘治療に貢献した近代医学の祖といわれる緒方洪庵。その青年時代の緒方章を松竹新喜劇の藤山扇治郎が演じ、大坂の守護神と呼ばれる「在天」の姫・東儀左近を元宝塚歌劇団星組トップスター・北翔海莉が演じる、新鮮な組み合わせの舞台『蘭 ~緒方洪庵 浪華の事件帳~』。稽古を開始して間もない藤山扇治郎と北翔海莉が、大阪市内での取材会に出席し、ふたりの絆を感じさせる興味深い話を次々と披露した。

 

今作は築山桂の小説が原作、NHK土曜時代劇「浪花の華 ~緒方洪庵事件帳~」(2009年)としてテレビドラマ化もされた話題作。商人の町・大坂で巻き起こる事件と、章と左近の淡い恋を軸にした物語を、錦織一清がエンターテイメント性豊かに演出する。

まずお互いの印象を訊かれ扇治郎は、「稽古が終わってからもいろいろと教えてくださるなど、今まで会ったことがないというぐらいの人格者。普段から、大坂の町を守る“在天さん”みたいな方です(笑)。女性の可愛らしさと男の人の凛とした格好良さ、両方を兼ね備えてらして、北翔さんが稽古場で笑っているだけで安心するし、『いいお芝居にしなければ』という活力がみなぎってきます」と告白、最大級の信頼を寄せる。

 

その言葉を照れながら聞いていた北翔。「製作発表でお会いしたときから、初めまして、という感じがしないくらいよくお話をしていますよね。稽古場でも扇治郎さんのお人柄やオーラから溢れる穏やかな空気のおかげで、今までになくリラックスし、心を解放した状態でいられます。緒方章さんの役にぴったりで、カンパニーの長にふさわしい方だと思います」と笑顔で返す。

 

扇治郎の祖父で昭和の喜劇王・藤山寛美の舞台映像を、芸の肥やしにと熱心に観ていた北翔にとって、今回の共演は「夢のようなお話で、お稽古をしていても私の好きなジャンルのお芝居をされる役者さんだなと感じます。目の輝きが、どこかで見たことのある目だなって…! 毎日楽しく勉強させていただいています」と話す。

 

一方、扇治郎も伯母である藤山直美と交流のある北翔に、親しみを抱いている様子。このたび発表された藤山直美の舞台復帰(1年以上の病気療養を経て、10月開幕の『おもろい女』に出演)も、「北翔さんと僕の共演を喜んで、元気になられたのもあるんじゃないか、と思うぐらい特別なものを感じます」と明るい表情を見せる。

また、北翔からこんな声をかけられたエピソードも語った。「扇治郎という名前の“治”は、『病気を治すという意味でもあるし、世の中を治めるという意味もある。緒方章という人は、人の心の傷まで治す役だから頑張ってくださいね』と言っていただき感動しました」と扇治郎。まさにこの公演は、素敵な縁で結ばれた必然の公演だったのだろう!

自身のキャラクターについても、それぞれ次のように語った。

 

北翔海莉「まんじゅう屋の娘で浪花の観光名所を案内する案内娘なのですが、男装の麗人・東儀左近というもうひとつの顔を持ち、『在天楽所(ざいてんがくそ)』の舞楽を担っています。昼は町の人間模様などを偵察する一方で、悪さをしている人をとっちめる、剣の達人でもあります。立ち廻りのシーンでは、今回初めて殺陣を本格的にやっていらっしゃる男性の方々とできるのが嬉しいです。刀は使えないけれど実直で正義感に溢れる緒方章さんに、心惹かれていく女性的な部分もうまく出していけたらと思います」

藤山扇治郎「緒方章は武士の生まれですが、8歳のときに天然痘にかかったことがきっかけで医学の道を志します。分け隔てなく人を助けたいと思う青年。真面目で優しくて、どこかへなちょこ、武道はできないけれど、心で人を助けられる人格の持ち主であり、演じがいがあります。ふたつの顔をもつ“在天さん”(北翔)に惹かれていく関係性がおもしろく、いいお芝居になると思います」

 

今作のテーマについて北翔は、「それぞれ世界は違えども、命を懸けても守るべきものがあるということ」だと明かす。扇治郎も、「“人の、世の中の役に立つ”ということを、在天さんと僕の役は職業が違えども目指している。“人のために何かをやる”というのは松竹新喜劇の登場人物にも通じていて勉強になりますし、ますます自分自身を磨かなければ、と思いました」と話す。

 

また、錦織一清の演出によって、オリジナル曲を随所に挟んだ一大エンターテインメントになるとのこと。北翔は、自らの役の正義や決意を込めた「東儀左近のテーマ曲」を歌うといい、扇治郎も録音収録になるが舞台で初めて歌声を披露するという。

 

「石倉三郎さんと久本雅美さん(夫婦役)のシーンは絶対おもしろく笑えるシーンになりそうですし、僕と同じ世代の2.5次元(ミュージカル)で活躍されている役者の方など、幅広い年齢、ジャンルの方が集まりました。みなさん、あてがきかと思うぐらいぴったりです」と、声を弾ませる扇治郎。「錦織さんはそれぞれが主役に見えるよう、見せ場をしっかり考えて演出されていて、さすがショーとお芝居の両方を学んでこられた方だなと思います」と、順調な稽古を語る北翔。賑やかで楽しく、松竹新喜劇のようにホロリとさせて、最後はスカッとする時代劇が誕生しそうだ。

 

『蘭 ~緒方洪庵 浪華の事件帳~』は、2018年5月6日(日)~13日(日)まで大阪松竹座にて、5月16日(水)~20日(日)まで新橋演舞場にて上演される。

 

取材・文:小野寺亜紀