ナイロン100℃は、2020年冬に公演予定であった、第47回本公演の中止を発表した。
2020年年初にケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)は、「2020年は4本の演出作品を上演する」とし、春は『桜の園』、夏はKERA×古田企画、秋は新ユニット結成企画、冬はKERAの主宰劇団であるナイロン100℃の第47回本公演と、4企画の上演を予告していた。
しかし新型コロナウイルスの影響から、春の『桜の園』、夏の『欲望のみ』が中止となり、現在、新ユニット・ケムリ研究室 no.1『ベイジルタウンの女神』は各地公演を巡演中である。
KERAにとっては、ようやく今年初の公演が上演実現した最中ではあるが、冬の劇団約2年半ぶりの新作公演の中止、という苦渋の決断をすることになった。
主たる理由としては、「ソーシャルディスタンスの確保の困難さ」である。
KERAは「松永玲子・村岡希美の二人を中心に据え、意外な劇場で行う」という構想を語っていたが、公演のキャスト&スタッフ数や公演内容を踏まえ、予定劇場施設の客席、楽屋、作業動線等を検証した結果、今回の上演企画の場合、現状の形では、ソーシャルディスタンスの保持が困難である、と判断した。
ナイロン100℃ファンには残念な知らせとなったが、公演が、改めて上演される機会を待ちたい。
劇団主宰のケラリーノ・サンドロヴィッチより、メッセージが届いた。
「またもや中止。今年3公演めの中止が決まってしまった。楽しみにしてくださっていた方々にはまったく申し訳ない。めっきり本数減ってしまったけれど、劇団での公演は自分にとって様々な意味で特別な公演である。もしも今後限られた公演形態しか残せないとしたら、迷わず劇団公演を選ぶ。劇団で芝居を始め、劇団員と共に演劇の何もかもを学んだ私だ。劇団の活動が全ての礎なのである。
規模としては今年中止になった3つの中で最も小さな公演だったが、その「規模の小ささ」が仇(あだ)になってしまったようだ。狭い楽屋での長期公演。ならば楽屋が密にならぬようにと、公演日数を大幅に短縮した出演者4人のみによる代替公演案(別役実氏の追悼公演としての新作書き下ろし)も提出させてもらったが、こちらも「客席を削減することにより、入場料を跳ね上げないと黒字どころかトントンも見込めず、積極的にはなれない」とのことで、制作サイドによる完全中止のジャッジに従う形となった。これはもう、興行である以上致し方ないのだ。
松永玲子と村岡希美の2人を中心に据え、意外な4名の客演をお迎えした、フェリーニの『8 1/2』のような、イメージの連鎖で紡いでゆく実験作にしたいと考えていた。劇団公演としては1997年夏以来のザ・スズナリ。小空間ならではの微細な表現に満ちた作品になったに違いない。いつかきっと、スズナリで思いを果たしたい。代替案で出した公演も形にしたい。どちらも、かなり具体的に構想が固まっていただけに、残念でならない。出演を予定していた劇団員及び客演の皆さん、スタッフの皆さん、ザ・スズナリの方々、そしてお客さん。どうか待っていてください。」
主宰
ケラリーノ ・サンドロヴィッチ