鳥越裕貴 インタビュー|鳥越裕貴オンラインLIVEイベント

舞台「弱虫ペダル」やミュージカル「刀剣乱舞」など、俳優として確かな活躍を続けている鳥越裕貴が、写真展を開催する。「鳥越裕貴×池谷友秀 写真展ーTSUKUYOMI ー」(tokyoarts galleryにて10/31~11/8まで、入場無料)は、国内外で活躍する写真家・池谷友秀が撮影し、鳥越が被写体となって、これまで舞台上などでは見せてこなかった表現に挑戦している。そして、11月6日には、会場からオンラインにてトークイベントをライブ配信することが決定した。自身初となる写真展を前に、鳥越は何を思うのか。


――今回の写真展はどのような経緯で開催されることになったんでしょうか。

お声がけ頂きまして、そこから写真家の池谷さんの作品を拝見したんですけど、僕の知り合いの北村諒が以前、tokyoarts galleryで写真展をやっていたんです。それで、話を聞いてみたら「めちゃくちゃ楽しかったよ!」って言っていたんですね。僕自身、写真が好きなので、一度こういうことをやってみたいな、と思いつつ、実際にやるとなると、表現力を磨かないと伝わりづらいんじゃないか…と、ずっと考えていたんです。最近になってようやく、少しは表現の引き出しも増えてきたと思えるようになってきて、やりたい気持ちが湧き上がっていたところに、ちょうどお話を頂けたので、ぜひチャレンジしてみたいと思いました。でも、やるなら、いわゆるグラビアやポートレート的なものじゃなく、ザ・写真展っていう感じの作り込んだものにしたかったんですね。そういう意味では、池谷さんの作品はちょっと怖いけど、まさに本職の方の仕事じゃないですか。だから、ちょっと行ってみよか!と、言う気持ちでやることにしました。


――ちょっと怖いけど、というお言葉が出て来ましたが、どういうタイプの怖さでしょうか。

池谷さんの作品集を見ていただいたら、「よくココに飛び込もうと思ったな」って分かっていただけると思います(笑)。それくらいの作り込み度、生半可じゃない質のもので、すごく刺激を受けたんです。メッセージ性がすごくあったんですよ。自分がどれだけ感じられるか、という部分で刺激があったので、自分がもし写真展をやるなら…という方向性にも合致していたんですよね。


――鳥越さんもお写真がお好きとのことですが、自分で撮影するときはどういうお写真がお好きなんですか?

風景写真が好きで、5~6年前までは一眼レフやミラーレスカメラを使って、とにかくきれいな写真を撮っていたんですが、最近はカメラの質がすごくよくなってますよね。良くなりすぎて、ケータイのカメラでも充分!ってなってきてからは、フィルムカメラを始めました。ものすごく簡単な、まだやさしい感じの取り扱いしやすいもので撮る感じになってきました。写真って、その人なりの「画」があるじゃないですか。この人には、これがこう見えてるんだな、とか、すごく刺激し合えるものだと思うんですよね。自分にはない視点だなと思ったり、逆に他の人が自分の写真にそう思ったり。影響はされるけれど、自分のスタイルというか、自分に見える世界観を伝えられたら、と思って写真を撮り始めた感じです。すごく面白いんですよね。人の写真を見ることも含めて。


――写真に人となりが出ているっていうことですね。今回の撮影現場はどのような感じでしたか?

最初はもう、ド緊張でしたよ(笑)。1歩踏み込んだ先がすごかった。クリエイターの方たちも、今まで自分が関わってきていないタイプの方ばかりで、それぞれがその業界のトップを走る人たち。もう、見えるそばからクリエイティブと言いますか…。自分も必死になりますよね。もしかしたらスタッフの方たちは撮影される側の子はスッとやってきて撮られるだけ、みたいな感じかと思っていたかも知れないんですけど、僕はその作り込みの中に入りこんでいきたくて。そしたら、『こういうのはどう?』「それです!」『こういうのもあるよ?』みたいなやりとりをさせてもらって、衣装とかメークとかで入り込ませてもらいました。そこから、撮影の段階に入ったらもうしっかり出来上がっていて…あとは自分だけや、って思いましたね。


――鳥越さんからもアイデアを出して作り込んでいったんですね。撮影に入ってからの池谷さんはどんな感じでしたか?

撮影が始まってから「このカットもうちょっと撮りたい」みたいな欲が見えてきたときに、あっ大丈夫なんだな、って思いました。お互いにやりとりしているような感じが、すごく楽しかったです。池谷さんって本当にすごいクリエイターで、周りの方からも「すごく時間がかかるから…」って言われていたんです。そこはもう、覚悟してきています!って感じだったんですけど、すごくテンポよく撮影が進んでいって。物腰もすごく柔らかくて、自分がハードルを上げすぎていました(笑)。あまりにテンポよく進むので、もしかしてコレ、アカンのかも…と思って、そっと聞いてみたら「全然、問題ないよ。すごく良いのが撮れてる」って聞いて、すごくホッとしました。


――撮影された写真を見た感想は?

一回、被写体が自分っていうことを取っ払って見てみたら、もうメチャクチャ良くて。なんかおこがましいんですけど、本当にメチャクチャ良いんですよ! えっ、コレ俺?って。きっとお客さんも『え、コレって…鳥越やん!』ってなると思います。2度見するくらいの感じ。自分が思っていた雰囲気、孤独な感じ、裏側のような感じが、作品によってそれぞれに出ていて…。某コミックのりんご好きな死神か!って感じです(笑)。これを観た人がどう感じてもらえるのか、もう楽しみです。ここから池谷さんの手がさらに加わると、3倍くらい凄味が増すんですよね。仕掛けもありますし。自分としては、いろいろ表現できたんじゃないかな、と満足しています。30歳を目前にして、新しい鳥越をお見せ出来たんじゃないかな。


――撮影していて難しいシーンもあった?

やっぱり水を使う場面は、水面を揺らさないようにスタッフさんもジッとしていたりして大変でしたね。でも嫌なピリピリじゃなくて、単純に集中していて、うまく取れたら「ウェイ!」みたいな感じ(笑)。良い現場でしたね。


――俳優として演じるお仕事と、今回のように写真の被写体となるお仕事で、何か違いは感じた?

意外とあんまり変わらずにやれた気がします。その場に生きる、じゃないですけど。それが静止画である写真で、どう伝わるかっていうのが、不思議だったし、まだわからないし、面白みがありました。最初は固かったと思うんですけど、徐々に慣れていく中で落ち着いてきて、その場の波ができていって、面白い現場でしたね。――気に入っている写真は?

今回の作品の中で象徴的な木があるんですけど、それと絡んでいる写真は、僕自身がやりたかった写真展の雰囲気があるというか。池谷さんが得意とされている水との調和の写真も、今までにやったことのない感じでしたね。もうほんと、いろいろありすぎます(笑)。陽の部分、闇の部分でコントラストがすごく出たんじゃないかな。


――写真展として、何かひとつのストーリーがあるような感じでしょうか

そうですね。そのストーリーを感じていただけたらと思います。あなたが思ったその世界観が正解で、別にそれを否定したりはしないので。感じてくださったことを、友達同士とかで「これってこういうことかな?」とかを話したりして、楽しんでもらえたら。それが写真展の面白さというか、正解を見せていくというよりも、あなたが感じた世界を大事にしてくれたら嬉しいですね。


――写真展に合わせてオンラインでのイベントを開催されるそうですね。

イベントでは、完成した写真に囲まれていると思うので、それを見た時の生の感動もお伝えしたい。そこは新鮮な、作らない気持ちなので。僕自身、すごく楽しみにしているし、1点モノの作品に、どの写真が選ばれたんだろう?とか、池谷さんがどんな感じで手を加えたんだろう、とか。写真展の面白さを、みなさんにお伝えできたらと思います。オンラインの配信チケットには、特典で非売品のパンフレットが付いてきますし、特典パンフレットの写真は、パンフレットだけの限定写真で、オフショットなんかも、写真展での販売パンフレットにはない特典なので、写真展と合わせて楽しんでもらいたいです。


――オンラインだけの貴重なショットも盛りだくさんの特典なんですね! オンラインイベントでは、池谷さんとのトークなどもありますが、どんなことをお話したいですか?

もう、「僕、どうでしたか?」って聞きたいです(笑)。良かったよ、って言ってほしい気持ちもありますが、アドバイスというか、もっとこうしたら…みたいな言葉も今後の参考になると思うので、聞きたいですね。


――写真展に展示する写真に、鳥越さんもこれから手を加えられるそうですが…?

土台に写真があって、その上に和紙のような紙があって、それを破いていたりするんです。その和紙も写真で、2重になっていることで、見え方がものすごく面白くなるんです。加工パターンもいくつもあるので、どんなふうになるのか仕上がりが楽しみです。


――今回の写真展を経験して、自分の中に変化はあった?

自分自身がどう見られているか、っていうのを考えがちですけど、1回余計な部分をなくす、っていうことですかね。今回の撮影で、いわゆる目線ありでこの角度とか、目線なしでもこれくらい顔が見えてる感じでとか、そういうのを一度リセットして、全体としてどうなのか、みたいな感覚で撮影していったんです。そんなにすぐにできるようになるものでもないですけど、演劇への入り方とかにそれができるようになっていったらいいな。


――役者として、こうなりたい、というビジョンはありますか?

地道にマイペースで頑張る、っていうことですね。おじさんになった頃に「この人、絶対いるよな」みたいな存在になっていたい。具体的には…30代後半には朝ドラに出たい。それで「この人、最近なんかよく見るなぁ」ってなる感じ。それが目標です。舞台で浅野和之さんを観た時に衝撃を受けて…自分に役をちゃんと落とし込みつつ、自分自身もちゃんと出せていて、役とのバランスがとても素敵だったんです。とてもオールマイティなバランス調整で、この人みたいになりたいな、って思ったんですよね。きっと目指していても、自分のオリジナルになっていくと思うので、年月をかけて作り上げていけたら面白いかな、って。それまで、鳥越裕貴っていう役者をしっかりと作っていかなきゃな、と思います。これから何十年か経ったときに、イケオジになっているであろう僕を被写体に、池谷さんに渋いのを撮っていただきたいですね。とにかく、どんな役が来てもチャレンジしていこうと思います。


――最後に、写真展を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。

難しい状況下ではありますが、ぜひ写真展に足を運んでいただきたいです。観覧は無料ですし、写真展の面白さというものを感じていただきたい。1点モノ好きの鳥越としては、ぜひあなたにもこの1点モノを!という気持ちです。こういう機会じゃないと手に入れられないものですし、しっかりと装丁して一生モノになるような、それくらい力をかけた作品になっているので、ぜひご覧いただければと思います。

 

インタビュー・文/宮崎新之