杉原邦生のギリシャ悲劇シリーズ最終章。KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『オレステスとピュラデス』合同取材会レポート

2020.11.27

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『オレステスとピュラデス』が、いよいよ11月28日(土)にKAAT神奈川芸術劇場 ホールで開幕する。それに先駆け、11月26日(木)、合同取材会とフォトコールが実施された。

フォトコールに登壇したのは、演出の杉原邦生と、ギリシャ軍の総大将アガメムノンの息子・オレステスを演じる鈴木仁、オレステスの従兄弟で幼なじみ・ピュラデスを演じる濱田達臣の3名。
本作は、2018年よりKAAT神奈川芸術劇場にて杉原邦生による演出で上演されてきた『オイディプスREXXX(2018年)』『グリークス(2019年)』のギリシャ悲劇シリーズの最終章として上演される。

 

今回、劇作家の瀬戸山美咲が書き下ろす、“新作ギリシャ悲劇”の演出という新たな試みに挑む杉原は、「今回の『オレステスとピュラデス』という作品は、2018年から三年間連続でKAATで上演してきた悲劇シリーズの最終章。ギリシャ悲劇に出てくる二人のキャラクターをメインに据えて、ギリシャ悲劇を“新作”として上演しようという、野心にあふれた企画です。KAATのホールの空間をダイナミックに使ってみんなで暴れまわり、この悲劇をお届けしたい」と力強く意気込みを表す。

本作が舞台初出演となる鈴木は、「自分はこういう(舞台に立つ)経験が初めて。新鮮に思いながらも、正面からぶつかっていきたいです。オレステスという役を通して、友情や愛情、信頼など、いろいろな感情を感じながら、この世界に飛び込んでいきたい」と話した。

今回が2度目の舞台出演となる濱田は、「このような状況下でも舞台に立てるという幸せを感じながら、日々稽古を重ねています。毎日の積み重ねが形になっていることを身体全体で感じているので、本番に向けて一生懸命頑張っていきたい」と、舞台に立てる喜びを語った。

質疑応答では、そんな二人に対する印象と問われると、「頼れるなあと思ったのが、まず第一印象」と杉原。「パッと見では、仁くんの方がクールで、たっちゃん(濱田)の方がホワッとしているように見えましたが、実は真逆(笑)。そんなところもオレステスとピュラデスという役にぴったりだと思います。素直に言葉を聞いて返してくれるし、まっすぐにぶつかりあってくれるところも、この作品にぴったり。舞台からも、そのエネルギーがお客さんにも伝わるのでは」と本番への期待感を込めた。

また、映像作品ではすでに共演経験のある鈴木と濱田だが、互いの印象について問われると、鈴木は「実年齢は(濱田が)一個下ですが、役と同じようにしっかりしているなあと思います。(コンビとして)バランスが良いですし、とても頼りにできる存在です」と笑顔で語り、対する濱田は、「気を許せるような“優しいお兄ちゃん”という感じ」と互いに信頼感を見せる。そんな二人ならではの息の合った芝居も、本作の見どころとなりそうだ。

その後行われたフォトコールでは、オレステス(鈴木仁)とピュラデス(濱田達臣)が、タウリケを目指して旅立つシーンがお披露目された。今回のステージは、「最大級にKAATのホールを広く使っているのでは」と杉原が言うように、普段はセットに覆われているような空間まで、すべてが露わとなった舞台。セットの無いだだ広い空間を、10人のコロスたちのダイナミックなラップに乗せて、二人はタウリケへ向け、ゆっくりと歩を進めていく。ゆっくりと、しかし確実に前に進んでいく旅立ちの様子は、二人の青年のこれからのスリリングで壮大な旅路を思わせるものとなっていた。

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『オレステスとピュラデス』は、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場ホールにて、11月28日(土)から12月13日(日)まで。“誰も観たことのない新しいギリシャ悲劇”を、お見逃しなく。