安倍乙、立野沙紀 インタビュー|劇団4ドル50セントとろりえの『年末』

Photo:中田智章


秋元康プロデュースの「劇団4ドル50セント」と奥山雄太主宰の演劇ユニット「ろりえ」がタッグを組み、2020年を締めくくる公演を中目黒キンケロシアターにて敢行する。4人の女の子たちが過ごした、ある年の瀬の日々を描く本作は、その公演タイトルもズバリ「年末」。公演は、仲美海、岡田帆乃佳、荒井レイラ、梅舟惟永(ろりえ)による上演と、前田悠雅、安倍乙、立野沙紀、岩井七世による上演の2パターンの組み合わせによるキャストで行われ、作・演出はろりえの奥山雄太が務める。今回は安倍乙と立野沙紀の2人に、公演に向けた意気込みを聞いた。



――先ほど、初顔合わせと本読みをしたばかりと伺いました。今回はどのようなお話なんですか?

立野 「年末」っていうタイトルなんですけど、クリスマスから12月31日までの、とある女の子たちのお話です。私は、みほっていう女の子の役で、私たちのチームだと前田悠雅が演じる主人公・いのりの元カノ。いわゆる女の子同士のカップルです。そして、ろりえの岩井七世さんが演じる七子が、いのりの今カノ。で、(安倍)乙ちゃんが…

安倍 私は普通に、いのりと七子の友達で、恋愛対象も男の子のREICOを演じます。ロックバンドの彼が居て、自分自身もロックバンドみたいなこともやっています。

立野 (REICOは)けっこう、ぶっ飛んでる役だよね。彼氏が大好きで、彼氏にしか目がいかない女の子なんですけど、クリスマスに起きた事件をきっかけに、いのりと七子をグチャグチャにします(笑)。今日も本読みしていて、みんな笑ってました

安倍 ひとことで言ったら、変人です。情緒がめっちゃ不安定(笑)。愛がありすぎて、その先を行っちゃうみたいな感じですね

立野 私が演じるみほは、地元に帰ってきたいのりと偶然再会して、久々にあってちょっとイイ感じになるんです。でも、みほはもっと先を見ていて、後半にびっくりさせるようなシーンもあります。今まで劇団でやっていたような役とは違う感じなので、新鮮な気持ちで見てもらえるんじゃないかな、と思っています。


――同性愛がテーマのひとつにある印象ですが、作品に入っていく中で何か考えたりしましたか?

立野 そうですね…私自身は女性が好きとかそういう感じはないんです。男性が好きなことと、女性が好きなことに、何か違いはあるのかな?とかは考えたんですけど。私、以前から同性愛者の方が日々を漫画にしているSNSがあるんですけど、それを見るのがすごく好きなんですよ。女性同士のカップルの方なんですけど、本当にカップルに見えるし、でも友達同士にも見えるし。すごくホンワカしていて、好きなんです。それもあってか、男女のカップルとそこまで変わらないのかな、って思っています。


――安倍さんは、すごく激しい役になりそうですが、どのように役作りをしていこうと考えていますか?

安倍 そうですね…クエンティン・タランティーノ監督の「パルプ・フィクション」とかは、結構世界観が合っててぶっ飛んでいるから、そういう映画を観たりしていますね。あとはダニー・ボイル監督の「トレインスポッティング」とか。


――その2作が出てくるということは、本当にかなりぶっ飛んだ役なんですね(笑)

安倍 けっこう、パンク(笑)。パンクロッカーみたいな感じで、今までそういう役をやったことがなかったから、映画とかからヒントをもらいつつ、頑張ります。

立野 今回は2チームでやるので、またチームごとで役や物語の印象に違いが出てくるかもしれないですね。乙ちゃんの役は、もう一方のチームだと、劇団員の岡田帆乃佳が演じるので、本当に全然違う感じになると思うんですよ。岡田は岡田で面白いし、乙ちゃんは乙ちゃんで面白いし。どっちを観ても笑えるし、違う作品に見えてくるかもしれません。


――稽古はそれぞれのチームで別々になりそうですか?

立野 多分、そうなると思います。もう一方の初日も観られるかどうか…。だから、向こうのチームがどういうふうに作っていくかは全然わからないんです。だから、相手のチームと共有するって言う感じでもないと思います。


――となると、相手チームはライバルみたいな感じ?

安倍 全然ライバルみたいな感じはないかな(笑)

立野 自分のオリジナリティや工夫はしたいな、と思いますけどライバルとはちょっと違うかも。あんまりライバル同士になるような劇団でもないんですよ。これまでもダブルキャストとか同じ役を別の人も演じていることはあったんですけど、自分のオリジナリティを役にしていく感じで、平和です(笑)


――お芝居について、劇団員同士でお話したりはする?

立野 たまにありますね。岡田とか福島雪菜とは、前回のオンライン公演で一緒にやったんですけど、その時にいろんな話をしました。今後の劇団をどうしていこう、とか。お互いにどんな仕事しているかとか、悩みとかも。劇団も4年目ですけど、そういう話もできるようになりましたね。


――以前よりそういう話をしやすくなった?

立野 前は、なんでウチらこんなこと語ってんだ?みたいな感じがあったんですけど(笑)、そういうのが無くなりました。年齢も重ねて、私は当時は23歳だったのでお姉さん側でしたけど、他の劇団員も10代だった子が20代になったりして。話してもいいんだ、みたいな感じになりましたね。

安倍 実は私、2019年11月の公演から、今回まで舞台に立ってないんですよ。だからあんまり話す機会が無かったんですけど…。この前、岡田帆乃佳ちゃんと映画を観に行っていろいろ話せました。私は映像のお仕事に興味があって、最近は少し挑戦させてもらっているんですけど、映像と舞台の違いとかの話をしましたね。帆乃佳ちゃんは結構、舞台に立ってるからアドバイスももらいました。

立野 岡田は本当に、話しやすいです。相談しやすい。グイグイと話してくれますし、ちゃんと聞いてくれる。押し付けるんじゃなくて、こう思うな~みたいな感じでアドバイスをくれるんです。


――劇団として、こうしたい!っていうビジョンは?

安倍 私はバラエティ番組に出演する機会が増えてきたので、そこで爪痕を残して…私から劇団を知ってもらって、いろいろな人が「舞台って面白いんだ!」って思ってもらえたらいいな、と思います。

立野 今、本公演って本当にできていなくて、それぞれ個人のお仕事をやらせていただいている状態。劇団員によって、ラジオのお仕事だったり、モデルのお仕事だったり、映像を中心にやっていたり…そういうことって、他の劇団にはあんまりないこと。今、みんながいろんな方面で頑張っている分、集まった時に、それ以上のパワーを出せる気がするんです。パワーなんて、ざっくりした言葉ですけど(笑)、そう思っています。みんなが集まった時、さらにすごいものをお見せできるようになっていたらいい、なっててほしいな。


――「年末」という作品ですが、今年を振り返ってどんな1年でしたか?

安倍 振り返ってみると、結構あわただしかったですね。1月にバラエティのオーディションがあって、出演してたくさんのみなさんに知っていただくことができました。SNSのフォロワーもすごく増えて、お仕事がバーッと増えたので忙しかったです。でも、コロナ禍があって…めちゃくちゃ病みました(笑)。このままでいいのかな?とか…。ずっと家でじっとしていると、私自身がネガティブな方だから、どんどんそっちに考えちゃう。周りの友達と比べて、やっぱり大学に行った方が良かったのかな、とか。どうしよう、ってなっていたんですけど、状況が少し落ち着いてきて、またお仕事を頂けるようになって、やっぱりこのお仕事が好きだ!って思えて。病んでた気持ちがポジティブになれました。

立野 私は今年の初めにグラビアに初めて挑戦させていただきました。そこからいろいろなお仕事に挑戦させていただいていて、4月には舞台出演が決まっていたんですけど、中止になってしまいました。小屋入りもしていたんですけどね。自粛期間中も何もできなくて。でも、何もできないから、何かしなくちゃと思って、TikTokを始めました。毎日投稿を始めて、さっきフォロワーを見たら5万人を超えることができました。コロナ禍で何もできない状況ではあったんですけど、何かしらエンターテインメントをやることはできる。可能性は無限なんだな、とも思いましたね。コロナ禍を経て、改めて感じました。10月にはお客さんを入れた状況での公演もやったんですけど、やっぱりお客さんが居て作品が仕上がるもの。こんなに当たり前のことが大切で、楽しいことなんだと改めて実感しました。


――来年、2021年にやりたいこともお聞かせください。

安倍 来年は21歳になります。私は世間的に、おっとりとか、ちょっと抜けてるとか、そういう感じに言われやすいので、そういうイメージとは全然違う役もやってみたいですね。バラエティでは素を出してきたんですけど、この子ってこんな人格も表現できるんだ、演技でこんなに変わるんだ、さすが劇団員!って思われたいです。

立野 2020年が劇団に入って3年目にして一番忙しい年でした。グラビアとかバラエティも経験できた分、2021年はその経験で得たものを、違う場所でも出せるよう、いろいろなお仕事をいただけるように頑張っていきたいですね。そして…できるかどうか全然わからないですけど、第3回本公演はやりたいですね。そして秋元さんが作ってくださった楽曲を披露できるような機会が欲しいです。本当に素的な楽曲なので。

安倍 本公演はやりたいね。今年は個人活動がめちゃくちゃ多くて、デビューした時の方がみんなで活動してたな、って。みんなで活動できる機会が増やせたらいいな。

立野 なんか旗揚げ公演の動画とかを今見ると、泣けてきちゃうんですよ。その当時の気持ちとか、みんなで何かをしてる、っていう映像だけで…。今は、それぞれが力をつける年、っていうのはあるんです。でも、旗揚げ公演の映像に、懐かしさもあり、ちょっと寂しさもあり…。

安倍 確かに…寂しい気持ちはある。

立野 年齢もあるのかな、20代も後半に入ってきたので(笑)。涙もろさもあるんです。劇団っていいな、って私自身はすごく思っているので。

安倍 私も、前の公演を見返すこともあります。辞めちゃった子とかもいて、悲しいというか、寂しいというか。みんなで頑張ろう、って思っていたから。

立野 岡田とか福島とかと話した時に、「今残っている劇団員って、意地だよね」って言ってたんです。いい意味でも、悪い意味でも。劇団に残るからこそこの先に見つかるものもあるはずだし、いつか劇団が上に行って辞めなくてよかったねって言えるように。今は下積み時代じゃないですけど、意地でも頑張ろう、っていう話をこの前にしました(笑)

安倍 寂しい気持ちもあるけど、やってやるぞ!っていう気持ちも湧いてきます!


――最後に、公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

安倍 今回の役は、のんびりとか泣き虫とかの私の世間的なイメージとは全く違う、パンクな女。180度違う私を見ていただけたらと思います!

立野 私は今まで、劇団では強めな女の子を演じてきたんですけど、今回の役は本当に女の子。演出家さん曰く、本当にかわいらしい女の子の役です。沙紀ちゃん、こんなカワイイ一面もあるんだ、と思っていただけるように頑張ります。

 

インタビュー・文/宮崎新之


###東京・お台場「ティフォニウム」で恐怖体験!

新感覚VRテーマパーク「ティフォニウム」に、安倍乙と立野沙紀が挑戦! 大ヒットホラー映画『IT/イット THE END』とのコラボVRアトラクション『IT/イット カーニバル』を体験した。

VRゴーグルなどを装着し、ひとたび足を踏み出せばもうそこは「IT」の世界。行方不明になった子どもを探して、暗い遊園地を2人で探索していくが、2人は「キャーッ!」「これもう絶対死ぬやつ!」と絶叫しまくっていた。

原作映画のファンでホラー好きを公言する立野は「映画では勢いよく扉に入っていったりしてたけど…絶対に無理!」と、映画と同じようにはいかないと力説。安倍は「お化け屋敷は得意な方ですけど、リアルすぎて怖い」と、最新アトラクションのリアルさに息をのんでいた。

だが、「ほかのホラーアトラクションもあるそうなので、そっちもやってみたい(立野)」、「タロット占いができるみたいなので、プライベートで来ちゃうかも?(安倍)」と、ティフォニウムを気に入った様子。もしかしたら稽古の息抜きに、お台場に来ているかも?

<ティフォニウムお台場>
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お二人が体験した「IT/イット カーニバル」の他、「コリドール」「フラクタス」「かいじゅうのすみか VRアドベンチャー」「タロットVR:ボヤージュ・オブ・レヴリ ~幻想の旅~」の4つのアトラクションを楽しむことができます。

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