衝撃作『アーリントン』〔ラブ・ストーリー〕、白井晃演出により日本初演!コメントも到着。

2021.01.20

撮影:岡千里


管理社会の恐怖と、そこに生まれた小さなラブ・ストーリー『バリーターク』(2018年)の作者エンダ・ウォルシュが放つ衝撃作『アーリントン』〔ラブ・ストーリー〕を、白井晃演出により日本初演

同時代の“鬼才”海外作家の作品を数多く演出してきたKAAT神奈川芸術劇場芸術監督・白井晃。2020年度は、2018年春に草彅剛主演で上演し、大きな話題を呼んだ『バリーターク』の作家エンダ・ウォルシュが、2016年7月に発表した『アーリントン』を日本初演。

当初2020年4月に上演を予定していた本作、新型コロナウィルス感染拡大の影響による政府の「緊急事態宣言」の発令に基づき公演を中止し、その後改めて2021年の1月に公演を延期、上演を行う。

アイルランド生まれの劇作家・脚本家エンダ・ウォルシュ。『Disco Pigs』をきっかけに注目され、現在は作品が20を越える言語に翻訳されるなど世界的に上演されている。近年では、映画「ONCE ダブリンの街角で」舞台版でのトニー賞ミュージカル脚本賞受賞や、デヴィッド・ボウイの遺作のミュージカル『LAZARUS』の脚本執筆などでもさらにその名を広めている。2018年3月には、イギリスの作家マックス・ポーターのデビュー作『Grief is the Thing with Feathers』の脚本と演出をてがけた同名の舞台を、コンプリシテの制作により、アイルランドのダブリンで初演。翌2019年3月にはイギリスのバービカン・センター、同年4~5月にはニューヨークのセント・アンズ・ウェアハウスで再演。また、オペラの脚本・演出家としても活躍している。

『アーリントン』の舞台は、時も所もわからない、ある待合室のなか。そこで自分の名前が呼ばれるのを待つ若い女アイーラと、隣の部屋でモニター越しにアイーラを見ている“若い男”。

主人公アイーラを演じるのは、KAATプロデュース『恐るべき子供たち』(2019年)に続き、白井作品2度目の出演となる南沢奈央。若い男には、長塚圭史演出・KAATプロデュース『常陸坊海尊』(2019年)での鮮烈な演技が記憶に新しい平埜生成。白井作品には初参加となる。また、ダンサー・振付家の入手杏奈が劇中の重要な役どころで出演。

世界が大きく揺らぐなかで、エンダ・ウォルシュがあえて描いた、不思議でいとおしいラブ・ストーリー。「人間の魂と、耐える力への頌歌(しょうか)」とウォルシュが語るこの衝撃作を、彼の作品の虜となったという白井晃がどう描くのか。コロナ禍で管理社会や抑圧のストレスに晒される今、本作の描く理不尽な社会と、それでも生まれる人間的な感情や忘れられない記憶の物語、人間の力を改めて知ることができる作品だ。

撮影:岡千里

ストーリー

高いビルのなかにある、待合室。
若い女“アイーラ”はそこでずっと、自分の番号が呼ばれるのを待っている。
隣の部屋では“若い男”がモニター越しにアイーラを見ている。
彼はきょうはじめてそこへ仕事にやって来た。
壁をへだてて、ふたりの心が静かにゆれる。
やがてアイーラは自分の運命を知る。
そして彼女の番号がきたとき、男はとほうもない決断をする。
それは…。

撮影:岡千里

白井晃 コメント

本作「アーリントン」(ラブストーリー)は、昨年4月、新型コロナ感染拡大防止の為に出された緊急事態宣言の元、初日間近にして中止になった作品です。関係者の皆さんの多大なる努力によって、こうして上演できることになったことを本当に嬉しく思っています。

エンダ・ウォルシュという、稀有な作家によって書かれたこの作品は、もしかしたらこのような世界情勢でこそ上演されるべき作品だったのではないかと思えるくらいです。それくらいに、私たちの置かれた状況を写し、離れてしかコンタクトができない人と人との関係を考えさせくれます。

この作品は、極度に管理され、人と人とを区分する世界の物語ですが(現実が追いついています)、同時に副題にあるようなラブストーリーでもあります。ほんの一瞬の心の繋がりが、私たちを救ってくれる。そんな小さな恋の物語です。それは切ないほどの痛ましさを伴って。今、私たちは奇しくも、再び昨年と同じような状況に陥りました。しかしながら、私たちは万全の対策をして、皆さんの安全を第一に考えてご来場をお待ちしています。是非この物語に触れてみてください。

撮影:岡千里