小沢道成が主宰するEPOCH MAN『夢ぞろぞろ』が2月19日に下北沢・シアター711にて開幕した。
今作は2019年8月に上演し好評を得た、小沢道成と田中穂先による2人芝居の再演である。小沢演じる駅の売店で働く60歳の女性・夢子と、田中演じる電車に乗ることができなくなってしまった青年・夏目が織り成す物語。夢子が夏目に語り聞かせる記憶は、ささやかだけれども温かみに溢れ、見ている人々にとって明日を前向きに生きていく原動力となるだろう。過去と現在が行き来するシーン展開に合わせ、ぐるりと回転する舞台美術も小沢自身が手掛ける力作だ。
さらに2021年8月13日より下北沢・駅前劇場にて新作公演『オーレリアンの兄妹』の上演も決定。出演・音楽に、ミュージシャンでありながら女優としても映画や舞台で活躍中の中村 中を迎え、現代を生きる“ヘンゼルとグレーテル”をテーマに物語を展開する。
小沢道成 コメント
昨年6月、本多劇場グループPRESENTS『DISTANCE』で上演した『夢のあと』は、この『夢ぞろぞろ』に登場する60歳の女性の〝その後〟を描いた一人芝居でした。今の世界と同じ〝大切な場所を無くした〟女性という設定です。その女性にとって長年働いてきた駅の売店は、中学校時代からの大切な思い出がたくさんある場所でした。それが無くなったのです。
2021年の今、僕の目の前には、美術である駅の売店があります。人生では、思い出の時間に戻ることは出来ないですが、お芝居では何度でも戻ることが出来るのかもしれないと稽古をしながら感じていました。昨年に感じた寂しさも苦しさも、今は、今だけは感じないのです。演劇においての〝再演〟の意味がやっと分かった気がします。
駅の売店で働く60歳の女性と、ある日突然電車に乗れなくなった青年による、現在と過去を行ったり来たりする2人芝居。夢をもたない2人の物語に『夢ぞろぞろ』と名付けました。心がヒリヒリとする物語ですが、過去の大切な出来事を思い出した時のように、不思議と元気がでてきます。
そして、この状況下で上演する新しい再演もまた、誰かにとって、いつかの、大切な思い出になることを願っています。