舞台『フラガール − dance for smile –』稽古場合同取材レポート

2021.03.18

2006年に公開され、大ヒットとなった映画「フラガール」を原作にした舞台『フラガール − dance for smile –』が4月3日(土)~ 4月12日(月)に東京・Bunkamura シアターコクーンにて再演されます(初演は’19年)。その稽古場にて、稽古シーン公開と合同取材が行われました。

昭和40年、エネルギーの石油化の波に飲まれ需要の下がる石炭を堀り続ける福島県いわき市の炭鉱町を舞台にした本作。住民の反対を受けながらも建設される常磐ハワイアンセンターで踊る“フラガール”に生まれ変わっていく少女たちを軸に、時代の変わり目に力強く生きていく人間の姿を描いた作品です。

冒頭で、構成演出を務める岡村俊一が「普段はみんなマスクをつけて稽古しているのですが、今日初めて、皆さんの前でマスクを取って踊りを披露します」と挨拶。作品について「滅びゆく日本の経済や政治、傾いた日本の中で、エンターテインメントなんぞというものがどんな意味を持っているのかというのを考えさせられる、ひょっとしたらひとつのヒントになるのではないかという作品になると信じて、作品づくりに励んでおります」と話し、「もう、明日公開でもいいくらいできあがっています」と自信をのぞかせました。

この日、フラを踊ったのは、フラガールのリーダー谷川紀美子を演じる樋口日奈(乃木坂46)、かつて都会のダンサーだったにもかかわらず炭鉱の娘達にフラを指導することになる平山まどかを初演に続き演じる矢島舞美、紀美子の親友でフラガールを目指す木村早苗を演じる山内瑞葵(AKB48)、新キャラクター和美を演じる安田愛里(ラストアイドル)、父親に無理に連れてこられるふくよかな小百合を演じる隅田杏花(劇団4ドル50セント)、そして朝倉ふゆな、吉田美佳子。

1曲目は先生役・矢島の「さあ!みんな行くよ!」という掛け声に、フラガールを演じるメンバーが「ゴー!フラガール!」と応え、アップテンポなダンスを披露。笑顔が眩しく、見ているだけで元気になるようなダンスでした。

2曲目は樋口、山内、安田、朝倉、吉田によるスローテンポなダンス。フラならではのなめらかな動きがセクシーで魅力的。ゆっくりとした振付は見ている以上に大変なはずですが、その振りが5人しっかり揃っていて、稽古の成果を感じます。

 

ダンスの後は合同取材に。出席した樋口、矢島、山内、安田、隅田から、まず本作への意気込みが述べられました。

 

樋口「私は今回初めての主演で、すごく不安とかどうしたらいいんだろうという気持ちもあったのですが、でも、物語に出てくる“一山一家”の気持ちを大切に、キャストの皆さんと団結して、物語に込められた想いや、人の心を動かすほどの少女たちの熱い気持ちや力強さを、皆さんの心にぶつけられるよう、一生懸命がんばりたいです」

矢島「この作品は2019年の再演です。前回も『すごく感動した』『たくさん泣いた』という感想をもらって、すごく嬉しかったです。また今回ならではの『フラガール』ができるんじゃないかと思い、日々稽古に励んでいます。今はコロナ禍や、震災から10年ということで、福島県いわき市が舞台になった作品を今やることにもすごく意味があるなと思っています。ぜひぜひたくさんの方に観ていただきたいです」

山内「私は約4年半ぶりの個人としての舞台なので、とてもとても緊張しています。でも、毎日周りのキャストさんがフレンドリーに話しかけてくださって、すごく楽しく稽古が進んでいます。本番も精一杯がんばって、感動をたくさん皆さんにお届けしたいです」

安田「私もお芝居はかなり久しぶりで、こんな大きな舞台でプロの皆さんに囲まれるのは初めてなので、皆さんからいいものを吸収して、レベルアップできるように日々がんばっています。ぜひ楽しみにしていてください」

隅田「こんな大きな舞台で素敵な役をやらせていただけることがすごくうれしいです。最初は不安やプレッシャーもありましたが、今は自信を持ってがんばっていきたいと思っています。小百合はぽっちゃりしている役柄ですが、私自身コロナ禍で健康のことを考えたり、かわいくなりたい思いもあったりしてダイエットをしていたので、もう5kg増やせたらなと思っています(笑)」

 

以下は記者質問。

 

今、稽古の中で感じている楽しさ・大変さについて教えてください。

樋口「まずフラダンスです。タヒチアンダンスってかなり動きが激しいのですが、それを、みんなで汗をいっぱい流して練習するのが部活のようで。みんなの一生懸命さがぶつかり合っている感じがこの作品の魅力だと思いますし、そういう魅力を、いつも稽古や踊りの練習で肌で感じています。みんなが団結していく感じがすごくあるので、舞台に立つのが楽しみです」

矢島「(前作から続けて出演しているので)同じセリフでも、前回とキャストが変わったことで違うことが刺さってきたりする、そういう楽しさを感じています。また、前回と同じキャストも、よりいいものにしたいという気持ちで稽古の度にいろんなことを変えているので、個人的にも日々勉強になっています。平山まどかとしては、最後のショーのシーンはグッとくるので、そのシーンを見るのがいつも楽しみです」

山内「個人的には学生を卒業してから初めての舞台なのですが、学生の頃は子役だったので、今はまた違った雰囲気を感じています。周りの皆さんに刺激を受けながら、ちょっとずつ吸収できるようにという思いで稽古に臨んでいるので、本番ではもっともっと成長した自分を見ていただきたいです」

安田「普段はラストアイドルというグループで活動しているので、一人でのお仕事は少ないですし、人見知りなので、皆さんと一言も喋れずに終わってしまったらどうしようという不安がずっとありました。でも皆さんフレンドリーで、常に輪に入れてくださって、精神的にもすごく支えられながら稽古に取り組めています」

隅田「タヒチアンダンスは激しいので、(体重を)増やしているのに稽古をすると減っちゃうという矛盾があります。すごくたくさん、幅広く食べてるのにお腹いっぱいにならないし、増えないし、もうどうしたらいいんですかね!? それが今の悩みです(笑)」

 

演じるキャラクターの個性や魅力は?

樋口「紀美子のいる時代は、女の子や子供がなかなか自分のやりたいことや意見を声に出せなかったと思うのですが、それでも彼女は自分が信じたことにまっすぐ突き進むことができる強い子だなと思います。毎回演じながら、こんな力強さがあるんだとか、信念に従ってまっすぐに生きていくと何かを壊した先には明るい未来が待っているんだっていうことを教わっています」

矢島「平山まどかは親にコンプレックスを持っているのですが、自分でこの状況を変えたいと人一倍努力してきた人で、その分プライドが高かったりもします。だから周りでウジウジしている人を見るとすぐカッとなったりするんですけど(笑)。当時は今以上に女性が男性より下に見られていて、そういうことにも納得できず、『私一人でも生きていける』という強さを持っていたりもしますし、そこには今の時代にも響くメッセージがあると思うので、感じていただけたらと思います」

山内「木村早苗ちゃんは、すごく純粋でまっすぐで一生懸命で、弟たちのお世話もしているからか、周りを見られるやさしい子だと感じています。自分が苦しい状況でも明るく振る舞っていたり、自分よりもお父さんを優先したり、仲間を思う気持ちもすごく強い子で、そこを演じられるようにがんばりたいです」

安田「私が演じる和美ちゃんは、どちらかというと強いタイプの女の子で、口調も最初はかなり悪かったりして、気が強いのかなという一面もあるのですが、でも、好きな人と一緒に決めた人生を一生懸命生きようとしたり、喜美ちゃんの味方になったり、人思いで温かい一面もあるので、そういうところをしっかり見せたいなと思っています」

隅田「小百合はいじめられて引きこもっているところを、お父さんに(フラガールの稽古場に)連れてきてもらうような子ですが、ダンスをやると決めるのは喜美子の一言だったりして、周りの熱い思いで気持ちを動かされることも多い。演じていて感じるのは、言えないけど内に秘めた熱い思いがたくさんあるんじゃないかなってことで、よく泣いちゃうんですけど、気持ちがあるからこその感情的な涙脆さなのかなと思います。やさしいし熱いし一生懸命な女の子です」

 

ここで取材時間は終了。最後に主演の樋口が「大変な状況の中で、劇場に足を運んでくださる方は本当にありがとうございます。今のこの状況だからこそ、皆さんの心に刺さったり、響くメッセージがこの物語にはいっぱい散りばめられていて、演じている私たちも作品に毎日力をもらっています。これからを生き抜く力強さを、きっと皆さんに伝えてくれるんじゃないかと思っています。ぜひ楽しみにしていてください。そして、お気を付けてご来場ください」と挨拶し、締めくくられました。

期待の高まる公演は4月3日(土)~ 4月12日(月)に東京・Bunkamura シアターコクーンにて!

 

文/中川實穗