劇作家・演出家のタニノクロウ『虹む街』横浜・野毛をイメージした舞台、6月に上演

2021.04.08


KAATプロデュース公演初登場の劇作家・演出家のタニノクロウが、
横浜・野毛をイメージした飲食店街を舞台にした新作を書き下ろす。

KAAT 神奈川芸術劇場では、2021年4月1日より長塚圭史が新たに芸術監督に就任。長塚新芸術監督は就任にあたり、シーズン制を導入。春から夏をプレシーズン、秋からをメインシーズンと位置づけている。

長塚は就任後の第一弾として、新ロイヤル大衆舎×KAAT主催『王将』三部作を一挙上演する。劇場を「ひらいて」いきたいという長塚の思いにより、劇場1階のアトリウムに設営する特設劇場で上演し、誰でもふらりと遊びに来られるような空間作りを目指す。

そして、プレシーズン中の6月に上演されるのが、タニノクロウ作・演出による新作『虹む街』だ。2000年に庭劇団ペニノを旗揚げ以降、全作品の脚本と演出を手掛け、海外招聘公演も多く世界的な評価も高いタニノクロウが、神奈川県民と共に舞台を創ることを目指して動き出した企画だが、新型コロナウィルス感染症拡大に伴い、神奈川県民を対象にしたオーディションは断念せざるを得なくなった。

この状況下で何ができるのか、タニノと協議を重ねる中、オンラインで飲食店経営者・お寺の住職・葬儀屋・教職者の話を聞いたり、タニノが横浜の飲食店街に足を運んだり、コロナ禍でできる範囲内で、人々の暮らしを感じ取ってきた。

そうした体験を経て、タニノが今回の舞台に選んだのは、横浜・野毛を彷彿とさせる飲食店街。実在する街のようにリアルな舞台セットとともに、さまざまな国籍の人々が行き交う街の情景や、緻密に描かれた人間ドラマが立ち上がる。タニノが描く世界感を体現してくれるのは、個性豊かでタニノからの信頼も厚い実力派俳優たち。そして、神奈川県民を中心とした街の人びとを巻き込んで、クリエイションを行う。

タニノはこれまでも、公演を行う地に長期滞在し、その地域の人々と共に創作活動を行ってきた。タニノの出身地である富山県では、キャストオーディションや公募スタッフで構成する「オール富山」の座組で演劇を創作するプロジェクトを立ち上げ、オーバード・ホール(富山市芸術文化ホール)で2019年に『ダークマスター 2019 TOYAMA』、2020年に『笑顔の砦’20 帰郷』を上演した。また、2011年には約2ヶ月にわたって静岡県舞台芸術公園に滞在し、SPAC「ふじのくに⇄せかい演劇祭 2011」にて静岡県民劇団員と東京の俳優とのコラボレーションによる新作『エクスターズ』を上演した。今回、タニノは神奈川県においてどのような作品を生み出すのか。

長塚新芸術監督が掲げる、劇場を「ひらいて」いきたいという思いを、タニノクロウがどう受け止め、具現化するのか。意欲的な新作に期待したい。

 

『虹む街』あらすじ

舞台は様々な人種が行き交う古い飲食店街。スナックやバー、パブ、レストラン、マッサージ店、コインランドリーなどが軒を連ねる。貧しくも逞しく生きる多国籍な人々。その街で唯一のコインランドリーが閉店することになる。営業最終日、街の人々が別れを惜しむように訪れ、「洗濯」をしていく。梅雨のそぞろ雨が奏でる滑稽で哀切溢れる人間ドラマ。

 

タニノクロウコメント

横浜にある飲食店街の話です。でも、どこか遠くを旅している気分で脚本を書きました。距離だけでなく過去にも未来にも遠いどこかをあてもなくフラフラして。想像の中で出会った人たちは皆心優しく、眺めているだけで安らぎを覚えました。この困難な世界でも素直に生きられるようにと願いながら、街が、劇場がそんな場所であるようにと願いながら筆を進めました。

 

『虹む街』美術スケッチ 稲田美智子