「ハッチアウトシアター2021」およそ100件の公募から選出された 【子どものための短編リーディング戯曲】【演出+ワークショップファシリテーター】 がついに決定!

2021.06.15

 

2021年度 世田谷パブリックシアターの新たな取り組み

世田谷パブリックシアターは、現代演劇と舞踊を中心とし、時代を反映するオリジナリティあふれる舞台作品の創造・発信をする公演事業と、地域社会と演劇のつながりを模索しながら、文化芸術の新たな社会的価値を創出する学芸事業(演劇ワークショップ・レクチャー等)の2つを軸に、「みんなの広場」である劇場として地域と関わってきた。
2021年度、この2つの土壌をもつ劇場として、「これからの演劇のカタチを考えて“今”やるべきこととは?」という問いに答えるため、新たな若手演劇人育成プログラム『Hatch Out Theatre ハッチアウトシアター』を立ち上げた。

 

Hatch Out Theatre ハッチアウトシアター2021について

『Hatch Out Theatre ハッチアウトシアター』は、Hatch out(孵化する)という言葉が示す通り、これからの演劇をつくっていく若手演劇人に、演劇を作る側・観る側の境界線を取りはらい、新たな演劇の楽しみ方を観客とともに見つけられる、従来の公演形態にとらわれない演劇との“出会い”を提供するプロジェクト。

今回は「子どもに伝えたいこと/子どもと考えたいこと」をテーマに、子どもから大人まで楽しめる“リーディング”と“ワークショップ”が一体化した観客参加型の公演を12月のシアタートラムで上演予定。
そこで、観客とより近い関係性の中で演劇を実践し、演劇を通して地域社会とより密接な関係を築きたいと考えている40歳以下の若手演劇人を対象に、[子どものための短編リーディング戯曲]と[演出+ワークショップファシリテーター]の公募を今年の1月から3月にかけて実施した。

3か月にわたる公募期間で、全国から【子どものための短編リーディング戯曲】43作品、【演出+ワークショップファシリテーター】50名の応募があった。
その中から、世田谷パブリックシアターとともに、これからの演劇のカタチを考え、一緒に作品をつくりあげてくれる2名が決定した。

今後、この2人が中心となって、選出された戯曲をリーディング公演に立ち上げ、更に作品世界をより深く理解するための演劇ワークショップをつくり上げていくことになる。
また、2022年度には、世田谷区内の小中学校や施設での巡回公演の企画も予定している。
世田谷パブリックシアターの新たな挑戦に注目!

 

【子どものための短編リーディング戯曲】【演出+ワークショップファシリテーター】が決定

【子どものためのリーディング戯曲】選出作品:『ホーム』 作:神野誠人

【演出+ワークショップファシリテーター】選出者:橋本昭博

※作品の詳細については、後日改めて発表

リーディング+ワークショップ公演『ホーム』は、2021年12月にシアタートラムで上演!
他者との出会いを大切にし、映像・演劇の現場で協働制作を行ってきた神野誠人の描く、淡い色彩で描かれたリーディング戯曲『ホーム』を、演劇を通じて地域との繋がりを模索し、活動する注目の演出家橋本昭博が演出!

『ホーム』は、ススキに囲まれた川沿いの<ホーム>を舞台に、様々な事情を抱え訪れる動物たちと、彼らを温かく歓迎する住人 アメとキリの物語。
目に見えるもの、見えないもの。草や水、魚や動物たち。生きるものすべての営みとそこに息づく景色を通して、自分にとっての<ホーム>とは何か、大切なものとは何かを問いかける、心温まる物語。

 

《神野誠人 コメント》

戯曲『ホーム』は、ぎゅうっと縮こまって暗く沈んだ心に、ぽっと灯る一筋の光のような作品になればいいなと思い書きました。この作品が、橋本さんという演出家に出会い、演劇+ワークショップに立ち上がることで、子どもたちにとって他者との出会いの場に繋がったらと思っています。
“他者と出会う”ということは、“自己変容を伴うような衝撃”のことなのかもしれません。それゆえ、ただ漠然と他者と向かい合うだけでは、そのものの“魂”に出会うことはできません。“出会う”ということはとても難しいことです。その難しさも、この小さな物語とワークショップを通して、共に楽しんでいけたらいいなと思っております。今回の試みが、劇場に訪れた人たちの心に語りかけ、この世界を生き抜く上で少しでも支えになるものになれば嬉しいです。それでは、劇場でお会いできることを楽しみにしております。よろしくお願いします。

 

《橋本昭博 コメント》

12歳で演劇に出会い、初舞台を踏みました。モノクロだった景色に色が付いたように世界が変わって「あー、これを職業にしたいなー!」と思ったことをよく覚えています。
まさに、演劇が人生を変えてくれました。
人生を変えるまでではなくても、もっとみんなに気軽に演劇に触れて欲しい、と思っています。
1+1の答えが、2にもマイナスにも無限にも可能性が広がる演劇の世界。あの時12歳だった僕もびっくりするようなワクワクするこの企画に、挑戦する機会を頂けてとても嬉しいです。戯曲を書いてくださった神野さんをはじめ、キャスト、スタッフ、そして、お客様と一緒に、大人が答えを教えるだけではなく、子どもたちと共に考えられる場を創っていきたいです。そして、自分自身、みんなに出会い成長していきたい所存です。選んでいただいた最初の卵として、しっかりと孵化(ハッチアウト)し、また新たな卵に繋げられればと思います。どうぞ、宜しくお願い致します!

 

審査員による選出者評価

《関根信一 コメント》
戯曲の応募作を読み、演出+ワークショップファシリテーターの応募資料を検討し、作家と演出家の出会いということを考えた。自分のことではない、誰かと誰かの出会いを考えるのはとても楽しい作業だった。新しい出会いの場では、どんな化学変化が起こるだろう。マリアージュという言葉がうかんだ。淡い色彩で描かれた印象の神野誠人さんの『ホーム』。対する橋本昭博さんのカラフルな饒舌さは、どんな演出でこの戯曲を立ち上げていってくれるだろう。どうなるかわからないという無謀な冒険ではなく、行き先に光があることが信じられる旅のはじまりをかんじている。静かさと饒舌さがどう出会うか。また、子どもたちにどう届くのか。出会ったことで生まれる新しい世界に期待したい。

 

《瀬戸山美咲 コメント》
神野誠人さんの『ホーム』は動物たちが互いを受け入れる姿を通して、人間がどう生きるかを問いかけてくる戯曲です。明確に語られていない部分も多く、観た子どもたちが自由に想像できるよさがあります。この「余白」を面白く演出してくれそうな演出家・ファシリテーターとして橋本昭博さんを推しました。彼の演出は立体的で、ファシリテーションには遊び心があります。さまざまな考え方や生き方を認め合う場をつくれる人だと思います。神野さんと橋本さんがつくる『ホーム』が子どもたちと出会ったとき、どんな素敵なことが起きるのか。今からとても楽しみです。