ものまね界のレジェンド・コロッケと、宝塚歌劇の元男役スターで俳優・声優として活躍中の七海ひろきが初共演を果たす「令和千本桜 義経と弁慶」。コロッケが弁慶、七海が義経に扮し、その出逢いから最後の瞬間を現代的な歌やダンスを取り入れた演出で‟令和版”の物語を紡いでいく。さらに第二部では、コロッケの40周年にふさわしいものまねステージや、ものまねとは別の演目で七海のスペシャルステージを展開。意外な共演となる2人に、意気込みなど話を聞いた。
――今回はまさに異色の共演という感じですが、お互いの印象はいかがですか?
コロッケ まだゆっくりしゃべったことが無いんです。撮影の時にすれ違ったな、くらいなので…。七海さんとご一緒させていただくことがわかってから、いろいろ拝見させていただきました。宝塚出身の方にもいろいろな方がいらっしゃいますが、その中でも七海さんは、すごくすっきりされている方。僕らがイメージしている男役の方よりも、さらに清潔感があるので、僕がやる弁慶とどういう形で絡んでいけるのかな、と思っています。七海さんは清潔感丸出しで、こちらはコテコテのオーラですから(笑)。どこまで食い込んでいいのか、どこまでやれることがあるか、ここから手探りですね。楽しみにしています。
七海 初めてお会いしたのが、このビジュアル撮影の時。でも、私は一方的にテレビで小さいときから拝見していましたし、いろんなものまねをされているのをワクワクしながら観ていました。友達と集まって、笑いあって観ていましたね。なので、お会いするのをすごい楽しみにしていました。…あの、レジェンドの方なので、いわゆるイメージとして‟ドン”みたいな雰囲気を想像していました。‟ものまね界の帝王だぜ!”みたいな。実際にお会いしたら、本当に気さくに、笑いかけて、話しかけてくださって…。
コロッケ そういう‟ドン”みたいな人もいるけどね(笑)。
七海 本当にあたたかくて、懐の大きさを感じました。お稽古も含め、公演までご一緒するのが楽しみだな、と率直に思いました。
――第一部のお芝居はコロッケさんが弁慶、七海さんが義経を演じる、「令和千本桜 義経と弁慶」ですが、それぞれ役どころについてどのように感じていらっしゃいますか?
コロッケ 弁慶が家来として、どういう形で義経に対しての気持ちを持っていけるか。周りに対していつも警戒心をもっているような部分があるんですね。弁慶自身が、自分が負けたということをハッキリ認めているので、それを踏まえて、どう忠誠心を出していくか…それは、義経に対してというよりも、周囲に対しての‟義経を守る”という部分での出し方ですね。まだ台本も書き直したりをしているんですけど、例えば、義経が何か気になることがあったら、そこは僕が先に気にならなきゃいけない。そういうところで、ちょっと二人の関係性が見えたところに、初めて義経と弁慶の物語が見えてくるんじゃないかな。でも、すごく忠実な気持ちを向けているのに、見てくれないことってあるじゃないですか。たまたま見る方向が同じで、相手のことを見ていなかった、みたいな。それが客席から見ると、笑いとして見えてくる。そういうお芝居の邪魔にならない、小芝居の中での組み合わせの面白さを作っていかないと、と思っています。僕がボケますんで、七海さんツッコんで、みたいなことではないですね。関係性の中で、ちょっとクスってなるような笑い。だから、大笑いって言うのではなくて、お芝居のベースを崩さない笑いをどこまでできるかな、と台本を読みながら進めて行ければいいな。
七海 義経と弁慶の物語は、本当に昔から何度も上演されていて、解釈にもいろんなパターンがあります。けれど、やっぱり義経には弁慶をはじめたくさんの家臣がいるわけで、弁慶が負けたにも関わらずついていこうと思えたか、という部分はすごく重要なんじゃないかと思っています。自分でハードルを上げてしまいますけど、ついて行きたくなるようなカリスマ性なのか…何なのかはまだ試行錯誤中ですけど、何かそういう部分があるはず。そこをコロッケさんをはじめ、みなさんと一緒にお稽古する中で‟この人のためだったらついて行きたくなる”何かが見つけられたら。みなさんとのハーモニーというか、協調性を深めていけたらと思っています。
コロッケ 多分、七海さんがやる義経って、庶民と言うか武家ではない人の気持ちを分かってくれる方なんじゃないか。身分の差があることよりも、人として見ているイメージですね。もう、スッと、凛としていただけるだけで、あとはほかのメンバーがそういう気持ちで動いて行けると思うんで。こちらがハハーッとひれ伏しているときに、温かい目で見ていただければ十分伝わりますよ。
――‟令和版”という新しさも注目ポイントだと思いますが、いかがでしょうか?
コロッケ 弁慶っていうと基本、体が大きくて、強くて、荒くれ者。乱暴な方ですよね。でも、実際弁慶とお会いしたことはないですけど(笑)、本当はそんな人じゃなかったかもしれないじゃないですか。そこにひとつ落としどころがあると思っています。今のちょっとした思い付きだと…犬にすごく弱いとか。すごい堂々としているのに、ハエがすごく嫌いとか。そういうことを、当たり前のこととして認めてもらえるように。僕が弁慶をやらせていただくからには、コロッケらしいことを…それは誰もできないな、ということをやりたいです。物語がちゃんとしているので、逆にツッコミどころが満載なんですよね。あとは、色目的な部分もね。衣装とか、ブラックライトを使った演出とかもしたいですし、初っ端からそういうのがあった方がイイと思うんですよ。橋のたもとに2人が居る空間が、ちょっと違う空間に見えるような。蛍光色とか使いたいですね。言葉ひとつにしても、時代劇言葉がすべてではなく、片言が現代用語でもいいと思うんですよね。極端な話、ケータイが出てきてもいいんですよ。それに対して「時代が違うと思います…」って言われて、スッと引くとかね。でも、外しすぎちゃうとグダグダになるので、物語を崩さない程度に、いろいろ検討したいですね。七海さんにはやっぱり、普通に出てくるよりは飛んできていただきたいですし(笑)。
七海 飛びたいですね(笑)。
コロッケ 七海さんのファンの方たちにも、新しい七海さんが見れたと思ってほしいし、コロッケを見に来た人にも、今までこんなコロッケは無かったと思ってほしい。それができるのが、今の明治座さんです。アイデアはいっぱい出して、整理して作っていきたいです。
七海 ぜひ、そうしたいです。コロッケさんからは、「令和千本桜」ということなら、こういう演出をやってみよう、私がこういうことをやったら素敵にみえるんじゃないか、というアイデアを本当にたくさん提案してくださるんです。そう言っていただけるのは本当にうれしいですし、その素敵なものを一緒に作っていきたいという気持ち。そんな気持ちがあふれている作品になるんだろうな、と思っているので、衣装だったり、音楽だったり、踊りだったり、殺陣だったり、いろんなやり方を模索してやっていこうと思っています。時代物の音楽じゃなく、今っぽい音楽に乗せて殺陣をやったりとか。それで、見た方に「令和千本桜だね」と思っていただけるように、見て楽しんでいただけるものを目指していきたい。コロッケさんについていきながら、私も引っ張っていけるように。それを目標にしたいと思います。実現できるかはまだ分からないですが、私自身は、飛びたいと思っています(笑)。映像を使ったりとか、服装も日本物の衣装で今風の曲を歌ったり踊ったりとか、そういうので雰囲気が変わると思うので、できたら楽しいな、と思っています。
――ちなみに、役作りの過程はものまねとは違う感じなんですか?
コロッケ ものまねは、見たことがある方が主体となるんですけど、見たことがない方だと入れどころが満載。歴史上の人物だと特にそうなんですけど、弁慶で言えば、例えば出てきてワンステップ、スキップをするだけで十分におかしいと思うんですよ。それをスキップし続けちゃうとイヤらしくなっちゃうんですけどね。僕がお芝居ですごく気を付けているのは、コケ方でもお芝居とコントでは違う。それは後輩たちにも教えているんですけど、コントのようなコケ方を芝居の中でやってしまうと、取っ散らかっちゃって、ただウケたいだけで出てきたね、っていう理不尽な芸人になりがちなんですよ。なので、役柄としての弁慶を保ったうえでできることをやる。ものまねは二部のほうでやらせていただくので、そちらでたっぷり見ていただければと思っています。
今まで、そんなことをやらなかった、っていうのがほんのちょっとあるだけでも、みなさんには十分大満足していただける。あれやこれやとやりすぎないで、できるといいですね。
七海 今、お話を聞くだけでも、こういうことをお稽古で一緒に作っていくんだな、とすごく想像が広がっています。そして、お客様が入っても、また空気感が変わってくるんですね。お芝居の‟間”ってすごく大事で、同じことをしても、ちょっと間が違うだけで、面白かったりすごく真面目になったりする。そこはコロッケさんがいろいろ考えてくださっていますし、私もいろいろ考えていきたいですね。この場面は面白くするのか、クスっと笑えるくらいにするのか、すごく真面目にするのか…コロッケさんは、一瞬にして雰囲気を変えられる方だと思っているので、私もそれを見習ってついていけるように頑張りたいと思いました。
コロッケ 先ほども言いましたけど、凛としていただければもう大丈夫ですから。
七海 いやいや…意外と抜けているところがあるんですよ。舞台上でも「ああっ」ということがたまにあるので…
コロッケ ファンからすれば、そういうお茶目な部分が見えても、たまらないと思うんですよね。敢えてやります!っていう感じじゃなく、イイ感じで作っていければいいね。
――第二部の「コロッケものまねオンステージ2021」も楽しみです。今回は~40周年鉄板ネタ大放出!~となっていますが、どのようなステージになりそうでしょうか?
コロッケ そうですね…みなさんが舞台で観た時にどう見えるのか、どう見てもらえばいいのか、というのは考えていますね。今回は、BTSをやろうかと思っているんですけど、BTSの誰か、というよりも、誰かかな?と思わせた方が得策なんですよ。メンバーの誰々、となってしまうと「じゃないから!」っていう声が出てしまうので。僕、韓流の方のしゃべり方、かなり得意なんですよ。だから、特定の誰か、って言わなければイケるな、と(笑)。その他にも、令和で話題になった方とかをいろいろ入れていけばいいのかな、とちょっと考えています。絶対に、新しいネタをやります!だから、BTSとLiSAはやらないとダメですよね。
七海 もう、それだけで楽しみすぎますね。
コロッケ 僕のものまねは、似てる似てないじゃないから(笑)。僕が解釈した、その人だからね。あとは、令和といえば「鬼滅の刃」ですよね。以前、鬼滅ファンの方から「やる必要があるんでしょうか?」とお言葉をいただいたこともあったんですが、やる必要のないことをずっとやってきていますからね(笑)。やっぱり、見ていただくからには、おなじみのものと、そうじゃないものをちゃんとお見せできるようにしたいですね。
――七海さんもスペシャルステージをご披露いただきますが、コロッケさんとのコラボもあったりするんでしょうか?
七海 今のところ、なにも固まっていないんですが、せっかくなのでコロッケさんと一緒にできる場面を作っていただいて…自分自身も、新しい自分と出会いたいな、と思っています。
――もしかして、ものまねにも挑戦されたり?
七海 (笑)。私、ものまねって本当に何も無いんですよ。
コロッケ やる必要がないところにいらっしゃる方ですからね(笑)。
七海 何かできればよかったんですけど、まったくしたことがなかったので…。ものまねは、完全に見て楽しむ側だったので、完全に未知の領域です。
――そんな七海さんでもチャレンジできそうなものまねって、ありそうでしょうか?
コロッケ やっぱり、気になるとか…歌が好き、声が好き、仕草が好き、まずはそこから入っていくんですね。僕はそこから入って、好きがゆえにおかしな部分が見えてしまう方向に行っちゃうんですけど。好きだからこそ、この歌い方、この仕草、この振りを覚えていく。でも、最近のものまねの子は、好きだから、じゃなく、歌いたいから歌う、みたいなところがあるよね。これだったら歌える、みたいなそういう感覚からやっている人が多い。だから七海さんも、踊りが好き、しゃべりが好き、っていうところから入っていって…そしたら、声を似せなくてもいいのに、口の中がその人に近い状態の空間を作るようになるんですよ。分かりにくいかも知れないけど。
七海 おお…すごいですね。
コロッケ あの、僕は武田鉄矢さんがすごい好きなんですけど、何が好きかって言うと、ちゃんとしてるのに胡散臭い感じが好きなんですよ(笑)。金八先生ではちゃんとしている感じだったのが、金八先生が終わったとたんにすごく胡散臭い感じになったので、あれが武田さんの本質だったんだ、と。だから声のトーンも歴史によって変えるんです。昔の金八先生は上からしゃべってたけど、後期になってくると下からしゃべるようになる。そういうところは、好きだからこそ見えてくる。だから、七海さんもそういう、好きで気になる人に焦点を合わせて追いかけていたら、ものまねというところに行くかも知れないですね。やっぱり、好きじゃないと、無理やりやるのって嫌じゃないですか。
七海 なるほど…そうやって出来上がっていたんですね。私、今まで好きになった人を真似しようと思ったことが無かったかもしれないです。好きな存在は、尊敬の存在だから、自分がそれになりたいっていうのがあんまりないのかも。
コロッケ 好きな歌とか、歌手はいる?カラオケで誰を歌うのかとか、逆に僕が興味がある(笑)。
七海 カラオケはめちゃくちゃ好きです。主にアニソンの歌とか、西川貴教さんは好きでよく歌いますね。でも、真似して歌うっていうのじゃなくて、自分なりに歌ってましたね。そう考えると、私本当にものまねって何にもなかったな…ダメだこりゃ(笑)。でも、宝塚の時は上級生の方の雰囲気や仕草、踊り方なんかは見ていましたね。やっぱり、見て学んでいく世界だったので。
コロッケ まぁ、自分をしっかり作っていかなきゃいけないところに居たんだもんね。僕は勝手にこう、やってればいい場所にいたから(笑)。でも声真似とかじゃなくても、立ち方ひとつ、頷き方ひとつでも、それぞれにあるんですよ。アニメがお好きだったら、アニメのキャラクターの立ち方なんかもいいかも知れないですね。
――もしかしたら、今回が七海さんのものまね初挑戦になるかも知れませんね。最後に、公演を楽しみにされている方にメッセージをお願いします!
コロッケ 私の見どころは、第一部はコロッケじゃない、第二部はコロッケです。やっぱり、一部二部と分かれているのに、同じものを見せるのは失礼だと思うので、違うものを見せるのが筋。だから、一部は弁慶で、二部はコロッケとして令和の新ネタをやることが必要だと思います。いろいろ、頑張ります!
七海 そうですね、第一部は七海ひろきじゃなく、第二部は七海ひろきで(笑)。一部は、義経と弁慶をいかに令和らしく仕上げるか。いろいろな不幸があって、最期を遂げるわけですが、そこまでの物語、いろいろな心情をみなさんと一緒に作り上げて行けたらと思います。二部のほうは、私自身もまだどうなるかドキドキしていますが、みなさんに楽しんでいただけるように。お芝居とショーをめいっぱい楽しんで帰っていただけるように、精一杯頑張ります!
コロッケ 付け加えるなら、第一部のお芝居は初っ端から見どころにします!開いた瞬間から、おお~!というものにしたいですね。
七海 幕開けからクライマックスの物語ですね。
コロッケ 理想ばっかり言ってますけど(笑)、いきなりグワーッと盛り上がって、もちろん中にも、最後にもしっかり見どころを入れていきますよ!
ライター:宮崎新之