『本日も休診』制作発表記者会見、出演者の柄本明、花總まり、佐藤B作、笹野高史、演出を手掛けるラサール石井が登壇

2021.10.22

左からラサール石井、笹野高史、柄本明、花總まり、佐藤B作

11月に明治座で幕を開ける『本日も休診』の製作発表記者会見が21日東京都内で行われ、出演者の柄本明、花總まり、佐藤B作、笹野高史、演出を手掛けるラサール石井が登壇した。『本日も休診』は、実在した医師・見川鯛山(みかわたいざん)による人気エッセイ「田舎医者」シリーズを下敷きに書き下ろす新作喜劇で、昭和40年代の栃木県・那須を舞台に、個性豊かな登場人物たちの交流をユーモラスに描く。

 

ラサール石井「今回、柄本さんからご指名をいただきました。素晴らしい豪華キャストの皆様が揃いました。私が学生時代に通っていた劇団の憧れていた皆様が出演する舞台を演出するとは、学生時代の自分に言ってあげたい思いです。一人一人が主役級のなかで花總さんはまさに紅一点で、そのまわりでおじさん達が頑張っている…白雪姫と7人の小人のような感じもいたします(笑)。少し台本も触らせていただきましたが、自分の中ではあの頃の皆さんのままですので、全員がずっと出ていて、劇団みたいな芝居を書いてしまい体力を心配しております。でも皆さんお元気なので大丈夫だと思います。面白くなること間違いなしです。思いっきりくだらないことをやっていただこうと決意しています。」

 

柄本明「本日は有難うございます。見川鯛山さんの素敵なエッセイがたくさんあり、それらを舞台化いたします。古い戦友である笹野高史さん、佐藤B作さん、3人とも自由劇場の仲間で、僕がちょっと後輩ですが、同窓会のような雰囲気で楽しく稽古させていただいています。花總まりさんは初めてですが、マスクをつけてずっと会っていたので、今日初めて外した姿を拝見し、ああ、宝塚だなと。一生懸命頑張ります。よろしくお願い申し上げます。」

 

――見川鯛山先生の作品の魅力について

柄本明「文章が良いですね。那須のふもとに診療所をかかえていて、その村の人たちをモデルに様々なエピソードを、日本の民話を思わせるような、人間という存在を俯瞰した目線で、性善説で捉えている。ゆったりとした時間の流れるお話です。」

花總まり「本日はお忙しいなか有難うございます。大先輩のなかで緊張しており、毎日稽古場でも緊張しつつたくさんのことを勉強させていただきながら、テル子という役を作ってまいりたいと思います。頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。」

 

――日本の人の役をあまり拝見しないイメージがあります。

花總まり「そうなんです。お稽古場でも、日本のお話なので、お部屋のなかでは靴を脱いでの演技することに新鮮さを感じます。」

 

――柄本さんの奥様役ということでいかがですか。

花總まり「なんとか頑張りたいなと思いつつ、役柄的には鯛山さんを包み込むような存在なので、密かに見守るような心づもりで柄本さんを見つめていけたら良いなと思います。」

 

――(記者会見中)柄本さんは花總さんの方を見ようとされないですが…?

柄本明「すみません、(花總さんが)眩しくて。」

笹野高史「出演者の平均年齢をはかっていただきたいです。かつてない癒しと安心感のなか立てることがすごく嬉しい。50年も前に知り合った人たちで、長生きしてればいいこともあるんだなと。年寄ばっかりの芝居も面白そうだなと思ったのはブロードウェイの芝居を観たときに、演劇を演じる年齢層が幅広く、俺も年取って芝居ができたら素敵だと思っていたのですが。今回はこんなにたくさん集まって、夢のような気持ちです。20代、30代の演劇を志す方々に見ていただきたい。よろしくどうぞお願いいたします。」

佐藤B作「柄本さん、笹野は20代の食えないころから演劇をやっていた仲間で、浜町の大劇場に出られるのがすごいなと思っております。成功すればいいが大きな突風に吹きとばされなきゃいいなと。ラサールさんの力も大いにあり、稽古に入って楽しそうな舞台になる予感がしています。いかに良い稽古ができるか、自分たちにかかっている気がします。こんなチャンスは最初で最後だと思っておりますので、精一杯務めさせていただきたいと思います。」

 

――舞台で楽しみにしていることは?

佐藤B作「本番で皆さんがどんなアドリブをいれるかがほのかな楽しみですね。」

 

――柄本さんへ。どういった理由で演出をラサール石井さんにお願いしたか教えてください。

柄本明「古くから知っていますから。ラサールさんも俳優さんとして活動しており、言葉ではなく、阿吽の呼吸みたいなものがありやりやすいと感じております。」

 

――柄本さん、笹野さん、佐藤さんへ。戦友とおっしゃる方と一緒にお芝居をしていかがですか。また、お三方を花總さんはどう見てらっしゃいますか。

柄本明「本当に戦友。極端な話、舞台の初日なんかね、泣いちゃうかもしれませんね。」
※涙ぐみ言葉を詰まらせた。

笹野高史「一緒に稽古場に立っていられるのが有難い。生きている感じがするかな。いろんな方のおかげで俺がここにいてもいいのだろうかと思える幸せな安堵感と癒しを感じていて、こんな稽古場なかったなと。泣かずに頑張りたい。」
※冒頭、つられて涙ぐみ、10秒ほど顔を伏せ涙をこらえる様子を見せた。

佐藤B作「金がなかった時代、エチュードしたり、酒飲んだり、良い時代だったなあと、それが昨日のことのように思い出せます。演劇人として生きてこられたのがうれしいですね。芝居を作ることができる関係になったのが、嬉しすぎて怖い面もりますが大いに楽しんでやりたいと思います。」

花總まり「お互いがお互いをリスペクトし、語らずとも伝わってくる空気感を感じます。どこか羨ましいというか、長心から戦友と呼べる方たちと何十年経って同じ舞台を作り上げることができる素晴らしさを、ひしひしと感じております。」

 

――花總さんへ。ミュージカルへの出演が多い印象ですが、大先輩たちに囲まれてのストレート芝居はいかがですか。

花總まり「私は舞台に比べ映像の経験が少ないのですが、今回ご一緒させていただく方々は、幅広い世界で演劇をやってらっしゃる大先輩ばかりですので、どう作品を作り上げ役に向き合っていくか、お芝居の仕方を勉強したいと思っています。稽古場では食い入るように見させていただいています。」

 

――ラサール石井さんから見た各キャスト陣の魅力を教えてください。

ラサール石井「稽古に入るアプローチがそれぞれ違っていて、柄本さんは息を吐くように面白いですね。柄本さんは状況を捉えその時の言葉を大事にしている。笹野さんは、培ってきたものが滲み出ています。最初の本読みから血肉が宿っていて、その人間になっている。エネルギーと熱量がすごくて、見ているだけの切なさがあふれ出るところをリスペクトしています。B作さんは、セリフを一番最初に覚えていました。以前、「テンポをあげてください」とB作さんに言ったら、「みんな年寄だからのんびりした方が良いと思う」とおっしゃって、そこもちゃんと考えてくださっているのだなあと。3人とも芝居が上手いだとか、そういう次元を超えていますね。花總さんは初めてで、凛としていて、華が違います。ライトが当たっていないのに光っている。流石だなと。お芝居も器用で、素晴らしいです。」

 

――お稽古がはじまり、コロナで苦労している点があれば教えてください。

ラサール石井「演劇界は非常に厳しくなっております。苦労と言えば、劇団全員で楽しく、といった空気感が少なく、稽古終わりに皆さんと飲んで喋ったりができないのが寂しいですね。」

笹野高史「歌舞伎の若い人と話しているとき、俺たちの仕事って不要不急なんだね、と言われたとき、空気とか水とかご飯とか必ず必要な仕事じゃないんだなあと思って。でも、決して必要ないものではない。精神のとても大事なものを司る仕事だと信じて携わっております。油断せず、めげずに必死に頑張っています。」

花總まり「マスクをつけており、顔の表情が目だけでは分からないところがあるので。なかなか厳しいなあと思います。」

 

――最後に

ラサール石井「舞台中、花總さんは歌をちょっとだけ歌っていただき、三人には踊りを踊っていただきます。お楽しみいただければと思います。」

 

――柄本さんからメッセージ

柄本明「舞台は昭和40年代のお話でございます。高度成長期の時代で都会はガチャガチャしていた時代ですが、そこから離れたというか、那須ののんびりした村のお話でございます。浮世離れしたとこもありますが、日本が忙しいこの時代。のんびりした時間をお客様に感じていただけたらうれしいです。同窓会+宝塚の華やかさをぜひご堪能いただければと思います。」

舞台は、2021年11月12日(金)~28日(日)に東京・明治座で上演。

 

ストーリー

時は昭和、高度経済成長期の頃。那須高原のてっぺんにある診療所には今日も「本日休診」の札が下がっている。診療所の主は見川鯛山センセイ。時々コワいがとびきり美人な年下の奥さん・テル子に支えられ、医療に身を捧げ…てはいない。釣り好きで本業なんかそっちのけ、喧嘩友達の茶畠巡査たちにはヤブ医者と馬鹿にされている。一方、診療所に集まるのはお調子者のホテルの主人・楠田や変わり者の農家・蚕吉などベテラン看護婦の宮本さんも手を焼くおかしな連中ばかり。田植えの季節、若い柴田巡査が駐在所に赴任し、東京から来た香織も診療所の仲間に加わった。田舎の町にも新しい風が吹き、やがて夏へ、秋から冬へ。次々起こる騒動の中、センセイは那須の大自然のように人々に寄り添う…。