今泉佑唯 インタビュー|「修羅雪姫」

昨年10月に活動を休止し、今年母となった今泉佑唯。彼女の女優復帰作となる舞台「修羅雪姫」が11月19日より上演される。「週刊プレイボーイ」で連載され、梶芽衣子主演で映画化。「キル・ビル」のクエンティン・タランティーノ監督にも影響を与えているとも言われている。亡き母の復讐を継ぐ女のダイナミックなアクション活劇を、今泉はどのように演じていくのか。話を聞いた。

 

――まずは女優復帰、おめでとうございます。今はどんなご心境ですか。

こんな素敵なお話をいただけて、今でも信じられない気持ちです。こうやって取材の機会があって、少しずつ実感が湧いてきて…怖くもあります。動けるかな、とか。考えていると、ちょっと寝られなくなりました(笑)。その時間で、梶芽衣子さんの映画版を観たりして、いろいろ入れているところです。照らし合わせた方が、台本のセリフも入ってくるかな、と思って、何回も観ました。

 

――梶芽衣子さんの映画「修羅雪姫」をご覧になられてみて、いかがでしたか。

今の映画とかと全然違うんですよね。刺した時の音とか、海で死んでいく感じも本当にこれやっていたのかな、とか。そういう気持ちで観てて、楽しかったです。この血って、どうやったんだろう?とか、素人みたいな気持ちで観てました(笑)。雪が最初に傘を持って出てくるシーンとかを観て、自分がやったらどういう感じになるかな?とか、こういう場面を舞台でやるとしたらどうするんだろう?とか、イメージを膨らませながら観ました。空中で回ったりしていて、自分はここまでは行けない!って思ったり(笑)。楽しい1時間半でした。

 

――「修羅雪姫」は復讐に生きる女のハードな物語ですが、どのような印象ですか。

主人公の雪は、自分が生まれた瞬間に母親が亡くなってしまっていて、母親の怨念がすべて託されているんですね。でも、もし自分がそうだったら、本当にお母さんなのかどうかも分からないのに、そんな命がけのことができるかな?って思います。雪は、それを信じてひとりでたくましく生きて、いろんな人と戦っていて、すごく強い女性ですよね。所々、自分と重なる部分があって、台本を読んで涙がポロポロ出ました。

 

――どんなところが重なりました?

この1年、いろいろな言葉をたくさん投げかけられて…生きることすらも否定されているような気持になることも多かったんです。それに近いセリフがあって、グサッと来ましたね。心が痛くなりました。

 

――お子さんが生まれて、母になって初めての作品になります。仕事に取り組むにあたって、以前との心境の違いはありますか?

お仕事のことを考えていく中で、やっぱり舞台が好きだな、という気持ちにはなりました。この1年くらい、ずっと考えていましたね。「あずみ」がコロナ禍で途中で終わってしまったこともあって、今後も舞台をいろいろとやっていけたらいいなと思っています。

 

――「あずみ」の殺陣が素晴らしかったので、「修羅雪姫」も殺陣に期待してしまいますが、いかがですか?

産後1カ月からジムに通ってはいるんですけど、なかなか体力が追い付かない部分もあります。1年半くらいちゃんと運動をしていないですし、産後で体力もかなり落ちているんですね。でも、母親からは「ちゃんと動けるってことを見せてきなさいね」って言われていて。動いていないから、体力が無いからなんて妥協しないで、やるんだったら前回を超えるくらいの気持ちでちゃんと行ってきなさい、そして周りの人に感謝してね、ってすごく言われました。やっぱり、復帰できるって家族も思っていなかったので…いろんな方の協力があって復帰できることになったので、絶対に甘えない。そういう話は家族とすごくしました。たくさんの方が協力してくださったことを当たり前と思わず、しっかりとお稽古出来たらと思います。何としても、やり遂げたいですね。

 

――稽古で楽しみにしていることは?

そういう場に出るのが本当に久しぶりなので、楽しみたいです。いろいろな人とお話をするのも久しぶりで、緊張はするけど楽しんでやりたいですね。殺陣にもワクワクしています。気持ちいいんですよ!日常生活に無いことじゃないですか。日常に無いことをできるって、すごく気持ちがいいんです。あの快感をまた得られるんだと思ったら、なんだか動悸が止まりません(笑)。

 

――岡村俊一さんの演出については、どういう印象ですか?

私の性格などを、本当によく理解してくださっています。私が、ちょっと…?って考えてしまっていると、それに気付いてわざわざ説明してくださるんです。たとえ話をしてくださって「そうなんだ!」って思ったり。それが嬉しいし、申し訳なくもあるんですが…。わずかな時間の中で、私を理解してくれていて、本当にすごく嬉しいです。それは、脚本の久保田創さんもそうで、いつも言葉で言ってくださるんです。本当に私は、周りの方に助けていただいて、支えられていると思います。それは「熱海殺人事件」とかの頃から、ずっと感じていますね。

 

――今回で舞台が3作目になりますが、役の作りこみ方など最初とは変わってきましたか?

「熱海殺人事件」も「あずみ」も、参考として過去の舞台があったんですけど、今回は無いんですね。映画だけなので、舞台は自分が最初から作っていかなければならない。そういうのは初めてなので、楽しみでもありつつ、どう作ればいいのか、という気持ちもあります。これからの稽古の中で、見つけていきたいですね。

 

――舞台の魅力ってどんなところだと感じていますか。

やっぱり、同じ舞台は2度と無いというところですね。ちょっとしたセリフの言い回しとかが変わったり、生だからこそのリアル感があるんです。映像のように、何回も何回も撮り直しができない、そこが魅力的ですよね。私、「熱海殺人事件」の千秋楽で、セリフをど忘れしてしまったんですよ。それでノンスタイルの石田明さんと、ずっと同じ掛け合いをしてたんです。そういうのも含めて、舞台だからこその良さというか。ど忘れはダメなんですけど、そこもすごく楽しくて、素敵だなって思ったんです。石田さんが何とか思い出させようとしてくれている熱さとか、今でも汗が出ちゃうくらい思い出せます(笑)。

 

――復帰の際に、石田さんをはじめ舞台で共演した方々からSNSなどでやりとりされていました。やはり舞台の共演者ってちょっと特別な仲間のような感じですか?

そうですね。やっぱり、一緒に頑張った人たちって、ちょっと特別な感じがします。今でも連絡をくださったりして、きっとこうやってどんどん関係性が繋がって、出来上がっていくんだな、と思いました。

 

――お休みされていた間も、お仕事のために続けていたことはありますか?

妊娠中に唯一やっていたのは、スクワットくらい。もしかしたら復帰するかも知れないから、ちょっとだけやっておこうと…でも、本当にそれくらいでした。何か作品を観たりとかもしていなかったです。妊娠中はとにかく何も考えずに生きていたというか、とにかく無事に生まれてほしいということだけでしたし、ずっと不安で泣いていましたから。その時は、この後どうしていくのか、まだちゃんと決まっていなかったので、その中で作品を観たりする余裕が無かったんです。作品とかは、出産してからの方が観るようになりましたね。

 

――今後は、子育てと仕事を両立させていくことになりますね。

ちょっとミルクが苦手な子なので、私がいない時間帯をどう頑張ってもらうかを最近はいつも考えています。子どもも、やっぱりそれぞれで違うんだな、って思いますね。全員が全員、ミルクを好んで飲んでくれるわけじゃないんだ、って。本当に、家族の助けがあって乗り切れています。子どもはすっごくかわいいんですよ!でも、だんだん起きている時間が長くなってきて、寝てくれている間しか台本を覚えたりができないので、だんだん切羽詰まってきました(笑)。子どものことは心から愛しているんですけど、余裕が無いんです。
最近は自分で寝返りができるようになって、それだけをやりたいみたいで。自分の思い通りにいかないと、すぐに泣いちゃうので、その戦いを毎朝毎晩、繰り返しています(笑)

 

――日々奮闘されている中で、お仕事への活力になるものは?

子どもの存在もすごく大きいんですけど、お休みしている期間もずっとSNSなどでコメントをしてくださった方々がいたんです。そういうファンのみなさんの笑顔が見たいから、頑張ろうという気持ちは強いですね。ファンの方々がいたから、復帰も決意できました。

 

――女優として、今後挑戦していきたいことは?

本当に、とにかく私は殺陣が好きなんだなと思いました(笑)。得意とかじゃないんですけど、前回の「あずみ」で、私は舞台が好きで殺陣が好きというのを発見できたんです。今後も舞台のお仕事をやっていきたいですね。あとは母になったので、そういう役もいつかできたらいいな。今は、母に見えなさそうなんで…。体型もまだ戻りきらなかったんですけど、出産して女性らしくなった体の自分も受け入れたいなって思います。そうやって、めちゃめちゃポジティブに考えました。

 

――最後に、復帰公演への意気込みをお聞かせください。

みなさんの貴重なお時間をいただいているので、やっぱり後悔させたくない。来てよかった、と思ってもらえるような舞台を作りたいとずっと思っています。そして、私の生き様を見せたい。この人はちゃんと生きているんだ、ちゃんと仕事ができるところまで体力的にも気持ち的にも追いついたんだな、というところを見せれたら…。修羅雪姫のように、本当に強くたくましく生きていきたいので、そういう姿を舞台上でも皆さんにお見せしたいです。そして、子どもにとって自慢できるような存在でありたいので、ここから、また1からやっていきたいと思います!

 

ライター:宮崎新之